やはり王者バイエルンが強い 2人の若きサムライも台頭したブンデス前半戦[水沼貴史]

水沼貴史の欧蹴爛漫062

水沼貴史の欧蹴爛漫062

前半戦終了時点で首位を独走するバイエルン photo/Getty Images

監督交代チームの明暗が分かれる

水沼貴史です。早いもので、欧州各国リーグの2021-22シーズンも折り返し地点を迎えています。今季もここまで熱き戦いが繰り広げられていますね。そこで、今回はブンデスリーガの前半戦を振り返りたいと思います。

まずここまでのブンデスリーガは、やはりバイエルンの1強かなという印象があります。17試合消化して、14勝1分2敗の勝ち点「43」。すでに2位には9ポイント差をつけており、首位を独走していますからね。

指揮官がユリアン・ナーゲルスマンになって、今まで以上に戦術的な幅が広がり、ゲームの中での選手たちのポジションやプレイエリアも柔軟になってきています。DFダビド・アラバが抜けたことで、ややセンターバックへの不安もありましたが、それをほとんど感じさせていません。DFダヨ・ウパメカノを獲得し、DFリュカ・エルナンデスと並べることで、DFニクラス・ズーレでさえもコンディションによってはピッチに立てない状況となっています。やはり選手層が厚いですね。
また、個人的にはFWレロイ・サネが新チームにフィットするのかなという心配がありましたが、杞憂に終わりましたね。しっかりと調子を上げ、本職としてきたウイングだけでなく、インサイドでも素晴らしい動きを見せています。見ていて、非常に面白いです。

今季からドルトムントを率いるマルコ・ローゼ photo/Getty Images

一方で、今夏に監督交代が行われたチームが多くあった中で、うまくいっているチームとうまくいっていないチームの明暗がはっきり分かれてしまったなという印象もります。特に、ライプツィヒは今季、苦戦を強いられています。ナーゲルスマンとウパメカノに加えて、主将であったマルセル・ザビツァーまでもがバイエルンに引き抜かれ、今季好調な彼らの割を食ったといってもいいかもしれません。

あれだけのチームを作ったナーゲルスマンの退任は大きな痛手で、後ろの方も欠けてしまいました。さらに、12月の頭には早くも指揮官の交代にも踏み切りましたし、フィットするには時間がかかるかなと思います。このウィンターブレイク中に、戦術的なところなどをどれだけ整理できるか。私としてはある意味、楽しみなところでもあります。現在10位(勝ち点「22」)と低迷してはいますが、3位につけているフライブルクとは7ポイント差しかなく、まだまだ上の順位は狙えますからね。ちょっとしたことがキッカケで、浮上することは十分にあり得ると思います。

そして、ブンデスリーガを語る上で、やはりドルトムントも欠かせないでしょう。11勝1分5敗と、勝ち点「34」の2位です。新チームを最初に見たとき、指揮官が代わるだけでこれほどチームは変わるのかと感じました。監督がマルコ・ローゼとなり、より高い位置からより早くなり、コンパクトな中から素早く縦にという形がより顕著に出ていたと思います。ただ、FWアーリング・ハーランドとFWマルコ・ロイスが前線で奮闘する中で、もうひとり欲しい。ここにきてユリアン・ブラントが調子を上げてきていますけどね。さらに、MFジュード・ベリンガムも含めて、将来が楽しみな若い選手は多いですけど、安定感という部分ではまだ少々不安があり、バイエルンとの差かもしれません。

他にも、フランクフルトはスタートこそ苦しみましたが、指揮官のオリバー・グラスナーが求めるハードワークが徐々にチーム内に浸透し、それが具現化できるようになり復調。徐々に順位を上げ、現在は6位につけています。また、私は8位につけているケルンに注目しています。監督(シュテッフェン・バウムガルト)のキャラも立っていますし、絶対的エースであるFWアントニー・モデストの復活(11ゴールで現在得点ランク4位)、徹底されたサイド攻撃など、今季はすごく面白いチームですよ。

今季存在感を発揮している奥川 photo/Getty Images

結果を残した日本人選手も大勢

今季のブンデスリーガは、日本人選手たちも素晴らしい活躍を見せていますね。特に、最近はビーレフェルトに所属するMF奥川雅也とシュツットガルトに所属するDF伊藤洋輝が目覚ましい成長を見せてくれています。伊藤は前回のコラムで取り上げさせていただきましたが、奥川も今季、ブンデスで台頭した選手です。奥川は強さというものはそれほどかもしれませんが、柔らかさが出てきて、点も奪えるようになってきました。現在2試合連続ゴール中で、ライプツィヒ戦でもゴールを決め流などしっかり結果を残していますし、日本代表での活躍も含めて、今後が楽しみな選手です。

今季からウニオン・ベルリンでプレイするMF原口元気も、30歳という年齢になりましたが、新天地で新たな挑戦を行い、奮闘しています。今季はこれまで任されてきたウイングやトップ下ではなく、インサイドハーフが主戦場に。元々ハードワークをする選手で、献身的なプレイも見せていたので、このポジションは元気に合っていると思います。インサイドに入ることで、攻撃においても、守備においても、両方のスイッチを入れられる選手になっていますね。特に、守備面では身体を張ったプレイも見せていますし、そのプレイで周りを鼓舞することもできていると思います。もちろん、前に行くこともできますし、そのユーティリティ性で“新たな原口元気”を見せることができています。

あと、フランクフルトで活躍する鎌田大地も、後半戦の活躍が楽しみです。監督交代により、序盤戦はやや苦戦を強いられたかもしれません。しかし、しっかり調子を上げてきていますし、ここ最近は間違いなく良くなってきていると思います。監督の求めることをきちんと理解してきていますし、周りの選手を理解できるようにもなったのではないかと感じています。第16節ボルシアMG戦では待望の今季リーグ戦初ゴールも決まりました。鎌田の復調に呼応するようにチームも調子を上げていますし、彼がチームのキーといっていいかもしれません。長谷部誠も、なかなかチャンスがもらえない時もありますが、ピッチに立った時の存在感は抜群。長谷部がいるといないとでは、チームの安定感やどっしり感が違うなと感じています。年齢的にもフィジカル面での厳しさはあるかもしれませんが、周りの活かし方やカバーリングはやはりピカイチです。監督からしても、チームにいてくれてありがたい選手なのではないでしょうか。

日本人選手以外ですと、レヴァークーゼンのMFフロリアン・ヴィルツにも注目しています。まだ18歳と若いですが、彼の好不調がチームの結果に直結するといっても過言ではありません。ここまで5ゴール8アシストと、自ら点を取れ、周りに点を取らせることもできる。29試合に出場(5ゴール6アシスト)した昨季もすごかったですが、今季はさらにすごいなぁと思いました。

1月7日から再開される後半戦では、やはりどのクラブがバイエルンに喰らいついていくかが見どころでしょう。バイエルンは簡単に負けるチームではないので、じわりじわり離されていくと、早めの段階で優勝決定となってしまうかもしれません。ドルトムントを筆頭に、何とか喰らいついていき、後半戦もブンデスをさらに盛り上げて欲しいです。また、先に挙げた選手以外にも、ドイツにはまだまだプレイしている日本人選手たちがいます。後半戦の活躍に期待したいです。

それでは、みなさま良いお年を!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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