[名良橋晃]物足りなかった日本代表 原理原則にとらわれずピッチでは柔軟な判断を!

名良橋晃のサッカー定点観測 #087 プレイモデルを封じられたときは選手主導で柔軟に判断していい

名良橋晃のサッカー定点観測 #087 プレイモデルを封じられたときは選手主導で柔軟に判断していい

1勝1敗というスタートを切った日本代表。アジア最終予選はやはり簡単ではない photo/Getty Images

 オマーン(0-1)、中国(1-0)との2試合は、選手も含めて誰もがそう感じたと思いますが、物足りなさが残りました。前回のロシアW杯アジア最終予選も黒星スタートだったので、2大会連続で同じことをやってしまいました。アジア最終予選が厳しい戦いになるのはわかっていましたし、各選手のコンディションも明らかに悪かったです。だからといって、経験ある選手がいるなかまたもこの結果になったことに言い訳はできません。

 いつかは得点できるだろう。どこかで得点できるだろう。オマーン戦に関しては、そうした思いで戦い続けてしまったのではないでしょうか。私たちもそうした思いでみていなかったでしょうか。この気持ちがスキを生み、終了間際に失点しました。

 中国戦では攻撃のテンポが明確にあがり、バイタルエリアでタテパスを入れることができていました。仕掛ける姿勢はみられました。しかし、フリーランする選手、強引に仕掛けるプレイが少なく、徹底的に日本対策を取ってきた中国の守備組織をなかなか崩すことができませんでした。

 森保一監督が率いる日本代表には、自分たちが志向するプレイモデルがあります。ショートパスをテンポよくつなぎ、人数をかけて各選手が連動して崩す。さらに、プレイ強度を高くというのが理想かもしれませんが、対戦相手はこのスタイルを消すことに全力を尽くしてきます。対戦相手のレベルがあがればあがるほど、自分たちのスタイルで戦えなくなってきます。

 オマーン戦は多くの選手のコンディションが悪く、立ち上がりから流れが悪かったです。連携がうまくいかないシーンも多く、プレイモデルをピッチで表現できていませんでした。できないときに、ではどうするか? ホームでの初戦だということを考えると最低でも勝点1が必要で、絶対に負けてはいけない一戦でした。ところが、そういうイメージもみえず、失点シーンでは対応が緩く、スキを与えることとなりました。

 チーム状態がうまくいっていないと感じたなら、個々の選手が状況に応じてもっとムリをしてもいいと思います。中国戦の先制点は、右サイドで伊東純也が勝負を仕掛け、ゴール前にクロスを入れたところに大迫勇也が飛び込んで生まれました。シンプルに自分のよさを出したプレイでした。

 試合ごとに相手を分析し、攻守両面でやらなければいけないことを森保一監督が落とし込んでいると思います。もちろん、それも大事ですが、ピッチで実際に戦うのは選手です。得点するための判断、勝つための判断は選手主導でやってもなんら問題はなく、むしろ監督というのはそれを求めています。

 プレイモデルを実行できないとき、原理原則を守っていては勝利できないときに、いかに異なる戦い方をするか。アジアの各国は日本との戦いでは十分な対策を取ってきます。それを越えるオプションを作っていかないと、厳しさを増していく最終予選を突破することはできないでしょう。

嫌われてもいいという姿勢でもっと声を出してほしい

嫌われてもいいという姿勢でもっと声を出してほしい

中国戦での伊東は、シンプルなプレイで得点をもたらした photo/Getty Images

 多くの方が危機感を抱いているからこそ、試合後にいろいろな意見が出てきたのだと思います。気を付けなくてはいけないのは、本質をとらえていない意見に耳を傾けてしまうことです。もう、一試合一試合の結果に一喜一憂するのはやめたほうがいいです。勝ったらただ称賛し、負けたらとことん叩く。「監督を変えるべき」ばかりでは、日本サッカーが成長しません。

 私が戦った1998年フランスW杯アジア最終予選でも監督交代がありましたし、その後も何度かW杯を目指す過程で監督が変わったことがあります。たしかによい結果につながったこともありますが、監督交代を繰り返していては継続した強化が望めません。

 ただ、厳しい声が聞けるのは、それだけみなさんに応援していただいているということです。日本のなかにしっかりとサッカーが浸透し、生活の一部になっているということです。絶対にW杯に出てほしい。だけど、このままだとどうなんだ……という不安をみなさんが感じているのだと思います。

 先述しましたが、今後の日本代表がやらなくてはいけないのは、自分たちのプレイモデルを実行できないときの戦い方を身につけることです。相手は日本を徹底的に分析し、よい部分を消すべく対策してきます。そうしたときは、たとえ準備していたことでもピッチで柔軟に変えていくことが必要で、それができる雰囲気を作ってほしいです。

 どんな状況でも淡々とプレイするのではなく、どんどん声を出して、チームを変えるようなパワーを出す選手がいてもいいです。むしろ、そういう選手がいないといけない。秋田豊さん、ゴンさん(中山雅史)、トゥーリオさん(田中マルクス闘莉王)はそれができる選手でした。前キャプテンの長谷部誠も力強くチームを引っ張っていました。

 いまは経験豊富な吉田麻也が懸命に鼓舞する姿がみられます。よい経験を積んでいる柴崎岳や遠藤航にも期待しています。プレイでみせる。態度で示すというのもわかりますが、「嫌われてもいい」という姿勢で、どんどん声を出して引っ張ってほしいです。私の時代は、そういう選手ばかりでした。時代が違うので難しい部分もあると思いますが、そこに物足りなさを感じるのかもしれません。もっと、ゲームをコントロールする声があってもいいはずです。

 いずれにせよ、アジア最終予選は来年3月までヒリヒリした戦いが続きます。現状を打破するためには、ラッキーボーイの出現が必要かもしれません。過去の最終予選でも、途中から加わった選手が活躍しています。とくに、大迫勇也に負担がかかっているフィニッシャーの役割ができる選手の出現を期待しています。相手が嫌がるのは、献身的な守備に加えて、仕留める力を持っているフィニッシャーです。そういった意味で、上田綺世のJリーグでのパフォーマンスはいつも気にしています。

文・構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD261号、9月15日配信の記事より転載

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