[名良橋晃]帝京大可児に魅了され、山梨学院の堅守に感嘆した高校サッカー

名良橋晃のサッカー定点観測079 魅力的だった帝京大可児 スタイルを貫いていた

名良橋晃のサッカー定点観測079 魅力的だった帝京大可児 スタイルを貫いていた
 年末年始に高校サッカーを取材したのですが、大きな違和感がありました。コロナ禍で関係者の来場しか許されず、少年サッカーチームの団体や親子連れの姿がなく、いつもの雰囲気とは違いました。選手権は応援する側にとっても特別な大会です。多くの方が複雑な気持ちで大会を見守ったことと思います。

 そうしたなか、私は駒沢競技場に通って数試合をチェックしましたが、帝京大可児が印象に残りました。自陣からしっかりとボールをつなぐスタイルを全国大会でも貫き、強いインパクトを残しました。3回戦では青森山田と対戦し、序盤に先制点を奪っています。青森山田が先制点を奪われたのは、今シーズンはじめてだったそうです。結果的に逆転負けを喫しましたが、各選手が連動してボールを運ぶことで青森山田を間違いなく追い込んでいました。

 個々の選手が持ち味を発揮するなか、ダブルボランチの鈴木淳之介、小宅空大が効いていました。鈴木淳之介は2年生ですが、前方への推進力があり、卒業後に湘南ベルマーレへ加入することがすでに決まっている逸材です。キャプテンの小宅空大はチームの心臓であり、クレバーで気が利くタイプで、うまくバランスを取っていました。両名ともボールを奪う力があり、正確なパスも出せます。

 さらに、前線には4得点したストライカーの大森涼がいて、自然体で飄々とプレイしていました。彼らだけでなく、帝京大可児は各選手が臆することなく戦っていました。チーム全体で立ち位置をキープし、平然と淡々と戦ってみせました。中高一貫で指導しており、新入生がチームにフィットしやすい環境なので、来年もまた同じようにパスサッカーをみせてくれるでしょう。とはいえ、県予選を勝ち抜くのが難しいのが高校サッカーなので、どうなるかは誰にもわかりません。

 実際に観戦したなかでは、堀越の古澤希竜も印象に残りました。右サイドのワイドなポジションでプレイする選手で、スピードがあり、積極的なアップダウンが目立ちました。堀越は攻撃時3バック、守備時4バックの可変システムでしたが、古澤希竜は攻撃のときに右サイドで幅を取り、単独で仕掛けて突破していました。まだ2年生ですが、お客さんを沸かせられる実力の持ち主で、今後の成長が期待される選手です。

堅かった山梨学院の守り 楽しみな来年の青森山田

堅かった山梨学院の守り 楽しみな来年の青森山田

正確なパスが魅力の藤原だが、決勝ではマークされた photo/Getty Images

 ベスト4に進出した学校は、いずれも真ん中のラインがしっかりしていました。優勝した山梨学院なら、GK熊倉匠、CB一瀬大寿を中心に固い守備網を作り上げていました。また、青森山田との決勝では久保壮輝が相手のボールの出所だったCB藤原優大を抑え、野田武瑠がアンカーの宇野禅斗を厳しくマークするとともに、攻撃では高いポジションを取っている両サイドバックの背後をそつなく狙っていました。

 このように、勝ち上がったチームはどこも自分たちのスタイルを持ちながら、さらに確固たる狙いを持って戦っていました。青森山田をみても、積み上げられた原理原則のあるプレイモデルが存在していました。ボールを持ちながらサイドの選手が幅を取り、相手の動きをみながら空いたスペースをうまく使う。フリーの選手がハーフスペースに入り込むことで、相手の守備陣を混乱に陥れていました。

 すべては、日ごろの積み重ねだと思います。青森山田からは、自分たちに対する厳しさが伝わってきました。練習から決して妥協することなく、一瞬のスキも見逃さない。黒田剛監督はもちろん、選手同士もそうした声を掛け合っていました。常日頃から甘えを許さない雰囲気で取り組んでいるからこそ、あの強さがあるのだと思います。

 2年連続準優勝に終わったことで、来年はさらにチームとしてパワーアップしてくるでしょう。松木玖生、宇野禅斗、名須川真光などが3年生になり、どんなチームに仕上がってくるか。今大会が終わったばかりなのに、早くも来年が楽しみです。

 青森山田では右SB内田陽介の賢いプレイも印象に残っています。ロングスローというストロングポイントを持つとともに、攻守のバランスを考えた判断ができる選手です。安斎颯馬はスーパープリンスリーグ東北に続き、今大会でも得点王となりました。早稲田大学に進学しますが、4年後とは言わず、もっと早くプロの世界でプレイする姿をみたいです。

 山梨学院では石川隼大、谷口航大の2年生コンビが中盤で黒子となってボールを刈り、攻守をつないでいました。山梨学院は引いて守るのではなく、人に対して強くアタックしていましたが、この両名の存在が効いていました。

 帝京長岡の廣井蘭人は足元のうまさがあり、独特な雰囲気がある1年生でした。昌平の荒井悠汰も1年生でありながらオリジナルのテンポを持っていて、目を奪われました。いかにもFC LAVIDA(昌平の下部組織)の出身だなという印象を受けました。昌平の右SB本間温土も気になりました。スピードがあってどんどん前にいける選手で、まだ2年生です。これらの選手が今後にどんな成長を遂げていくか、追い続けたいと思っています。

 私は千葉県出身なので、市立船橋にも注目していました。昨年は初戦で負けていたので、ベスト8まで勝ち上がれてうれしかったです。左利きの松本海槻が持つ感覚は独特で、帝京長岡を苦しめました。また、大会前から木内拓海を推していたのですが、期待どおりに3得点の活躍をみせてくれました。

 不思議なもので、私にはいまだに高校サッカーへの憧れがあります。今大会もうらやましいなと思いながらみていました。ただ、やっぱり大観衆のなかでプレイさせてあげたかったですね。一日でも早く、日常に戻ってほしい。高校サッカーをみながら、高校生っていいなと思いながら、そう強く感じました。高校サッカーの指導者として選手権に出場するのが、これからの自分の目標でもあります。

取材・構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD253号、1月15日配信の記事より転載

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