[Season Review 2019/20]監督交代で覚醒のバイエルンが8連覇 怒涛の13連勝でシーズンアウト

出遅れも関係なし 監督交代で本調子へ

出遅れも関係なし 監督交代で本調子へ

ライバルたちが徐々に勝点を取りこぼすなか、バイエルンは安定感を増していった photo/Getty Images

シーズン当初はライプツィヒやドルトムントが順調に勝点を積み重ね、逆にバイエルンが苦戦していたことで、ついに連覇が止まる、絶対王者が陥落するという風潮があった。しかし、こうした声は優勝争いを盛り上げるための“煽り”のようなもので、結局はバイエルンだろうと考えていた人が多かったのではないだろうか。

実際、終わってみればバイエルンは昨シーズンを上回る勝点82、得点100を記録し、2位ドルトムントに勝点13差をつけて8連覇を達成している。DFB杯も制し、2年連続で国内2冠である。先行逃げきりもできるし、たとえ出遅れても追い上げて捲る鋭い末脚も持っているのである。そもそも、過去の7連覇もすべてが順調に進んだわけではなく、ドルトムントとの激しい優勝争いを制したシーズンがあれば、成績不振により監督が代わったこともあった。修正、改善を繰り返して積み上げてきた連覇で、いったいどうやったらこの牙城が崩れるのか、ここ数年はなかなか想像ができない。

今シーズンのバイエルンは第10節フランクフルト戦に1-5で大敗した翌日にニコ・コバチ前監督が退任し、アシスタントコーチだったハンス・ディーター・フリックが暫定監督に就任した。フリックは過去、ドイツ代表のアシスタントコーチとしてヨアヒム・レーヴ監督を支えていた人物で、2014年ブラジルW杯を制したときの優勝スタッフである。代表選手たちとの付き合いが長いこのフリックのもと、バイエルンは復調していった。CBに起用されたダビド・アラバ、左SBのアルフォンソ・デイビスといった身体能力の高い選手たちが最終ラインで躍動し、守備組織が強固に。中盤ではジョシュア・キミッヒが攻守をつなぎ、攻撃ではコバチ前監督のもとでは途中出場が多かったトーマス・ミュラーがポジションを得て、フリック監督になって以降、8得点の活躍をみせた。

よりわかりやすい数字として、フリック監督になってからのバイエルンは21勝1分け2敗である。ライプツィヒやドルトムントといった“ライバル”が連戦による疲労もあってシーズン終盤になって勝点を失っていくなか、もともとリーグ屈指の選手層の厚さを誇るバイエルンが抜け出したのは必然で、最後は第22節ケルン戦から怒濤の13連勝でシーズンを締めくくっている。

引分けが響いたライプツィヒ ライバルたちは力不足だった

引分けが響いたライプツィヒ ライバルたちは力不足だった

突破力&決定力があるヴェルナーは、ライプツィヒに欠かせない存在だった photo/Getty Images

本調子のバイエルンは勝点を取りこぼさないため、この王者との優勝争いを制するためには直接対決で互角の戦いをし、なおかつ下位との対戦で引き分けることも許されない。そういった意味で、ライプツィヒは勝ちきれない試合が多すぎた。負け数はバイルエンと同じ4試合だったものの、引き分けがバイエルンのちょうど3倍となる12試合もあった。ユリアン・ナーゲルスマン監督の指向するゲーゲンプレスからのショートカウンターが各チームからスカウティングされ、試合を重ねるに連れて良いカタチでボールを奪えなくなっていったのである。

ブンデスリーガ、CLとの掛け持ちも決して選手層が厚いとはいえないライプツィヒにとって負担となっていった。相手に対策されるなか、各選手が疲労を抱えて戦わなければならない。厳しい試合が続く後半戦になって勝点を伸ばせず、3位でシーズンを終えている。

バイエルンとの優勝争いに打ち勝つためには、より戦力を充実させなければならない。しかし、来シーズンを考えると、ティモ・ヴェルナー(28得点)がチェルシーへ、パトリック・シック(10得点)もローマへレンタルバックとなることが濃厚だ。こうした放出を上回る獲得がなければ、ライプツィヒがいま以上の成績を収めることは難しい。

ドルトムントも有能な若手は出てくるが、活躍するとビッグクラブへ引き抜かれる流れになっていて、少なくとも今シーズンはバイエルンにストップをかけるほどのチーム力はなかった。戻ってきたベテランたちに、往年の輝きもなく……。それでもポジティブなところをみつけるとすれば、勢い、伸びしろではむしろバイエルンより上かもしれない。

ジェイドン・サンチョ、アーリング・ハーランドに関しては、詳細な説明はいらないだろう。ともに20歳の両名は、サッカー界の次代を担う若手として、さらなるステップアップが期待されている。ハーランドはドルトムントに加入したばかりだが、サンチョにはマンチェスター・ユナイテッドへの移籍話がかねてからある。しかし、どうやらドルトムントへの残留が決定している。

彼らを中心に、ドルトムントにはポテンシャルの高い若手が多い。経験豊富なルシアン・ファブレ監督のもと、怖いもの知らずの彼らが強固なグループとなり、ブンデスリーガやCLを含む長いシーズンを勢いのままに戦い抜くことができたなら、あるいはなにかが起こるかもしれない。サンチョの残留決定には、それだけのインパクトがある。

優秀な監督が出てくる背景に現場を経験できる土壌がある

優秀な監督が出てくる背景に現場を経験できる土壌がある

ケルンからマインツへ。バイヤーロルツァーは2週間で2チームを指揮したphoto/Getty Images

ここ数年、ブンデスリーガは優秀な指揮官を生んできたが、その背景に多くの指導者が現場で経験を積めるという状況がある。逆にいえば、回転率が早く、長く同じポジションにいられる人物は少ないという事実がある。

今シーズンもバイエルンを含む7チームで監督交代があった。もっとも長く現職を務めているのはクリスティアン・シュトライヒ(フライブルク/9年)で、シュテファン・バウムガル(パーダーボルン/4年)、フロリアン・コーフェルト(ブレーメン/3年)と続き、他の監督はいずれも1年~2年となっている。

特徴的なのは、抜擢や挑戦と考えられる起用が多いことだ。ライプツィヒを率いるナーゲルスマン監督は33歳という若さで自身の信念を貫き、まわりも信頼してしっかりとサポートしている。ホッフェンハイムは決して成績不振というわけではなかったが、残り4節というところでU-19を指導していたマルセル・ラップを暫定監督に据えた。これは、将来を見据えての判断だとクラブはコメントしている。

その他、アヒム・バイヤーロルツァーはシーズン当初はケルンを率いていたが、第11節終了後に退任。すると、第12節から今度はマインツの監督となり、すぐに新しい職場で仕事をはじめた。ブンデスリーガではこうした人事は珍しくなく、数年前にもあったと記憶している。クラブと監督のマッチングによっては、ドライな決断が下されるのである。

選手はもちろん、監督も積極的に動き、現場でスキルアップを図っている。バイエルンの連覇を止めるチームが出てこない一方で、優秀な指揮官が次々に出てくる背景には、こうした土壌があるのかもしれない。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)248号、8月15日配信の記事より転載

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