[特集/CLクライマックス1999-2019 02]同国ファイナルが熱い理由

同国の3クラブが4強入り

同国の3クラブが4強入り

CL史上初の同国ファイナルを3-0で制したレアル・マドリード photo/Getty Images

各国のリーグチャンピオンのみが参加していたチャンピオンズカップ時代に同国ファイナルはなかった。前年王者は出場していたので可能性としてはあったのだが、現実に同国クラブが決勝で顔を合わせたことはない。

同国対決は互いに手の内を知り尽くしている。それでいて、どちらのホームでもない中立地での開催であり、欧州王者を決める試合という緊張感もリーグ戦とは違うものがある。国内リーグでよく知った相手との、少し勝手の違う対戦という微妙なズレが面白いところでありポイントだ。そのせいだろう。場馴れしているほうが有利という結果がはっきりと出ている。

最初の同国ファイナルは1999-2000シーズンのレアル・マドリード対バレンシアだ。すでにUEFAチャンピオンズリーグとなっていて1つのリーグから複数のクラブが参加している。このシーズンはバレンシア対バルセロナの同国セミファイナルもあり、スペインの3クラブがベスト4進出という“スペインの年”だった。ここから3年連続でスペイン勢が決勝に出ている。コンパクトな守備ブロックが浸透していた時期、テクニカルなスペインサッカーはそれを打ち破れるところにアドバンテージがあった。

ピルロ(右)とダーヴィッツ(左)が中盤で激しいやり合いを見せた photo/Getty Images

02-03はACミラン対ユヴェントスのセリエA対決。0-0の末のPK戦決着というのがイタリア同士らしい。このときもミラン対インテルの同国セミファイナルがあった。ミランはピルロを中盤の底に配した新機軸を打ち出し、対するユヴェントスは鉄壁の守備とデル・ピエロを軸としたカウンターで対抗している。ミランは04-05、06-07のファイナルにも進出。どちらも相手はリヴァプールで06-07のほうは優勝している。ミランはこの時期のヨーロッパのベストチームの1つだった。一方、ユヴェントスは国内では強いがCLではミランに後れをとっている。優勝はミラン7回に対してユヴェントスは2回にすぎず、決勝で敗れたのは7回の最多準優勝クラブである。

07-08はマンチェスター・ユナイテッド対チェルシーのプレミア対決だった。この時期のサッカー界の資本はイタリアからイングランドにシフトしている。リヴァプールもベスト4入りしていて、同国ファイナルがあるときには、だいたいベスト4の3チームが同国という傾向どおりである。ユナイテッドの先発のうちイングランドの選手は6人、クリスティアーノ・ロナウドなど5人は外国籍だった。チェルシーはイングランド4人、外国籍7人。プレミアリーグの隆盛は外国籍選手に支えられていて、その裏付けになっていたのが潤沢な補強資金である。チェルシーは念願のCL優勝に惜しくも届かず、初優勝は11-12(対バイエルン・ミュンヘン)までお預けになった。オーナーのアブラモビッチはロシア人。外国籍選手、監督に続いて外国資本流入の象徴だった。

経験値がものをいうCL 初優勝は困難を極める

経験値がものをいうCL 初優勝は困難を極める

同国ファイナルというだけでも白熱するが、13-14は欧州最高峰の舞台で因縁のマドリード・ダービーが実現 photo/Getty Images

12-13のバイエルン・ミュンヘン対ボルシア・ドルトムントは史上初のドイツクラブ同士のファイナルだ。バイエルンはバルセロナ、ドルトムントはレアル・マドリードを、それぞれ準決勝で破っての決勝進出。ブンデスリーガからはシャルケも参戦していたがラウンド16でガラタサライに敗れている。バイエルンは4シーズンで3度目の決勝、ようやくCL王者をつかんだ。リベリ、ロッベンの両翼が強力、インテンシティの高いプレイをみせ、準決勝では合計7-0とバルセロナを粉砕している。強度という点は敗れたドルトムントも同じで、ドイツ勢の台頭でスピードと走力を生かしたスタイルが注目された。

13-14は2度目のスペイン対決。レアル・マドリードが延長の末に4-1でアトレティコ・マドリードを下している。同国ファイナルであるとともに、同じ街のファイナルだった。この大会で最多13回優勝のレアルはファイナルで負けたのは3回だけ。決勝の勝率81%という勝負強さだ。このアトレティコ戦でも堅守のアトレティコにボールを持たせる策を講じてペースを握らせなかった。

15-16もレアルはアトレティコとの決勝をPK戦で制していて、そこからジダン監督はCL3連覇の偉業を成し遂げる。チャンピオンズカップの5連覇もそうだったが、レアルには不利な状況でも何とかものにするしぶとさがある。ライバルのバルセロナはレアルより理詰めのスタイルで勝つべき試合を勝つが、そのかわりレアルのように負けそうな試合にも何故か勝ってしまうパワーには乏しい。

2年連続で決勝を戦ったリヴァプールがついに栄冠を手にした photo/Getty Images

18-19は久々のプレミア対決。決勝9回と常連のリヴァプールがトッテナムを2-0と押し切った。クロップ監督はドルトムント時代を含め3回目の挑戦で初戴冠。リヴァプールの強度の高いスタイルは一発勝負のCL向きといえるかもしれない。ホームスタジアム、アンフィールドの熱狂的な雰囲気も決勝を除いてホーム&アウェイで行われる大会では強みだろう。トッテナムは初の決勝進出だった。チャンピオンズカップ時代には初の決勝で優勝というケースは珍しくなかったが、CL時代になると経験値がものをいうようになり、大会常連のビッグクラブ以外が優勝するチャンスは少なくなっている。

CLでは毎回サプライズチームがいる。このシーズンなら準決勝でトッテナムが下したアヤックスがそうだった。16-17はASモナコがベスト4に食い込んでいる。それ以前でもビジャレアル、デポルティーボ・ラ・コルーニャ、シャフタール・ドネツクなど新風を入れるクラブはあるのだが、決勝まで進んだのはトッテナムぐらい。例外として03-04のFCポルト対ASモナコのダークホース同士の決勝があるが、FCポルトはチャンピオンズカップ時代に1度優勝している。1、2シーズンで急に強くなるのは現在のヨーロッパではレアケースなのだ。19-20のベスト8に入ったアタランタとライプツィヒは、その点で流れが変わりつつある兆候なのかもしれない。

文/西部 謙司

※電子マガジンtheWORLD244号、4月15日配信の記事より転載

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