本来、これからシーズン終盤に向けてプレッシャーがかかる痺れる試合が続き、そのなかで南野も良い経験ができるはずだったが、FAカップでチェルシーに敗れたのに続き、CLではA・マドリードに敗れ、プレミアリーグに集中できる状況になってしまった。日程的には楽になったが、南野に与えられるはずだった出場機会の絶対数が減ってしまった。
ただ、すでにプレミアリーグの優勝はほぼ手中にしており、残り9試合を使ってクロップ監督は来シーズンを見据えた選手起用をしてくるはず。2022年まで契約を延長したが、ジェームズ・ミルナーはもう34歳。少し若い31歳のアダム・ララーナはMSLや中国への移籍が報じられていて、今シーズンでチームを去ることが濃厚だ。
ふくらはぎを痛めているジェルダン・シャキリも復帰予定が定まっていない。さらに、ジョーダン・ヘンダーソンも太ももを痛めて3試合続けて欠場している。こうしたチーム事情を考えると、南野には引き続きチャンスがありそうだ。フィルミーノ、サラー、マネ、オリギ、ワイナルドゥム、オックスレイド・チェンバレンといった主力は適度に起用し、南野を筆頭に、カーティス・ジョーンズ(19歳)、ハーヴェイ・エリオット(16歳)、ペドロ・チリベジャ(22歳)といったFAカップで経験を積んだ選手たちに出番がまわってきそうだ。
ただ、これが南野にとってどう働くかわからない。クロップ監督が志向するゲーゲンプレスからの素早い攻撃でゴールを目指すことに変わりはないが、選手が変わればやはり質も変わってくる。南野は狭いスペースでもうまくプレイできるが、その能力はまわりを使い、使われてこそ生きる。「個」の力を問われる状況になると、苦戦する期間が少し長引くかもしれない。
直近の第29節ボーンマス戦(○2-1/3月7日)では出番がなかった。リヴァプールの選手たちが話す英語には強い訛りがあり、理解するのに苦しんでいるとの現地報道もあるが、監督も含めてチームメイトの数名とはドイツ語でのコミュニケーションが可能だ。
「クロップはタクミを大事に育てている。欧州屈指の激しさを誇るプレミアリーグに対して、ゆっくり時間をかけて適応させている」
ボーンマス戦の翌日、地元WEBメディアはそう伝えている。すでに約2か月半が経過したが、まだ公式戦7試合に出場しただけである。しかも、その多くは交代出場だった。クロップ監督の戦術を理解し、まわりとの連携がより良くなってくれば、もとから持っている力がいよいよ発揮されてくるはずである。負けん気の強さ、ゴールへの意欲が人一倍あり、迷いのない思い切りの良いフィニッシュをみせる。あまり心配はいらない。いずれ、間違いなくアンフィールドに歓喜をもたらす日が必ず来る。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD243号、3月15日配信の記事より転載
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