[特集/リヴァプール解剖論 03]苦闘する南野の現在地

パスを出してくれれば…… まわりとの連携を構築中

パスを出してくれれば…… まわりとの連携を構築中

試合後にヘンダーソンから指示を受ける。プレミアに慣れるにはもう少し時間が必要か photo/Getty Images

 リヴァプールの選手層が厚いのは十分にわかっていた。とくに、前線はスタメンからサブまで揃っていて、それぞれ役割もはっきりしている。それでも、プレミアリーグ、FAカップ、CLを戦うリヴァプールである。過密日程、試合数の多さを考えれば、意外と多くの試合に出場できるのではないかと考えられていた。さらには、どの試合でも主導権を握り、攻撃陣に多くのゴールチャンスが生まれるチームでもある。早々にゴールも奪うのではないかと大きな期待が寄せられていた。

 しかし、加入して約2か月半が経ったいま、ことはそう簡単ではなかったという結果が導き出されている。昨季の欧州王者にして、プレミアリーグ連覇に向けて首位を独走するリヴァプールから高い評価を得て加わった南野拓実だったが、結果=ゴールという面でみれば、新天地で苦戦を強いられている。

 プレミアリーグ3試合、FAカップ3試合、CL1試合。これまで公式戦7試合に出場し、ゴール、アシストともになく、まだゴールに絡めていない。3試合に先発し、フル出場となったのは1試合だけ。残り4試合はいずれも交代出場で、結果を残すのが難しい状況に陥っている。たとえ短時間でも自らの存在を示さなければならないという意見もあるが、なかなか決定的なチャンスを迎えられていないのが現実である。

「 タクミは本当によいプレイをしたよ。われわれは試合のなかでもっと彼を使うことができたはずだ。まわりの選手がペナルティエリア内でフリーだった彼にパスを送っていれば、また違った結果になっていただろう」

 これは、FAカップのチェルシー戦(●0-2/3月3日)を終えてのユルゲン・クロップ監督の言葉である。この試合での南野は最前線のポジションで先発し、フル出場している。3トップの相棒は右にサディオ・マネ、左にディボック・オリギ。そして、クロップ監督が語るように、ラストパスが出ていれば……というシーンがあったのはたしかである。しかし、実際には効果的なパスを受けることなく、完封負けを喫している。この辺り、つまりはチームメイトとの連携をより深めることが、いまは求められている。

 最前線と左サイド。現状、この2つのポジションでプレイしており、クロップ監督のなかではロベルト・フィルミーノ、マネの負担を軽減する存在として考えられている。今後、モハメド・サラーが務める右サイドで出場する機会もあるだろう。

 各ポジションを務めたときに、横の距離間だけではなく、左サイドならDFアンドリュー・ロバートソンやMFジョルジニオ・ワイナルドゥム、右サイドならDFトレント・アレクサンダー・アーノルドやMFアレックス・オックスレイド・チェンバレンなど、後方からどんどん攻撃参加してくる選手たちとも動きを合わせ、素早く、精度の高いパス交換を実現させることが必要になってくる。

FAカップ&CLで敗退 南野の出場はどうなる?

FAカップ&CLで敗退 南野の出場はどうなる?

クロップは決して慌てていない。南野をゆっくり育てる腹積もりだ photo/Getty Images

 本来、これからシーズン終盤に向けてプレッシャーがかかる痺れる試合が続き、そのなかで南野も良い経験ができるはずだったが、FAカップでチェルシーに敗れたのに続き、CLではA・マドリードに敗れ、プレミアリーグに集中できる状況になってしまった。日程的には楽になったが、南野に与えられるはずだった出場機会の絶対数が減ってしまった。

 ただ、すでにプレミアリーグの優勝はほぼ手中にしており、残り9試合を使ってクロップ監督は来シーズンを見据えた選手起用をしてくるはず。2022年まで契約を延長したが、ジェームズ・ミルナーはもう34歳。少し若い31歳のアダム・ララーナはMSLや中国への移籍が報じられていて、今シーズンでチームを去ることが濃厚だ。

 ふくらはぎを痛めているジェルダン・シャキリも復帰予定が定まっていない。さらに、ジョーダン・ヘンダーソンも太ももを痛めて3試合続けて欠場している。こうしたチーム事情を考えると、南野には引き続きチャンスがありそうだ。フィルミーノ、サラー、マネ、オリギ、ワイナルドゥム、オックスレイド・チェンバレンといった主力は適度に起用し、南野を筆頭に、カーティス・ジョーンズ(19歳)、ハーヴェイ・エリオット(16歳)、ペドロ・チリベジャ(22歳)といったFAカップで経験を積んだ選手たちに出番がまわってきそうだ。

 ただ、これが南野にとってどう働くかわからない。クロップ監督が志向するゲーゲンプレスからの素早い攻撃でゴールを目指すことに変わりはないが、選手が変わればやはり質も変わってくる。南野は狭いスペースでもうまくプレイできるが、その能力はまわりを使い、使われてこそ生きる。「個」の力を問われる状況になると、苦戦する期間が少し長引くかもしれない。

 直近の第29節ボーンマス戦(○2-1/3月7日)では出番がなかった。リヴァプールの選手たちが話す英語には強い訛りがあり、理解するのに苦しんでいるとの現地報道もあるが、監督も含めてチームメイトの数名とはドイツ語でのコミュニケーションが可能だ。

「クロップはタクミを大事に育てている。欧州屈指の激しさを誇るプレミアリーグに対して、ゆっくり時間をかけて適応させている」

 ボーンマス戦の翌日、地元WEBメディアはそう伝えている。すでに約2か月半が経過したが、まだ公式戦7試合に出場しただけである。しかも、その多くは交代出場だった。クロップ監督の戦術を理解し、まわりとの連携がより良くなってくれば、もとから持っている力がいよいよ発揮されてくるはずである。負けん気の強さ、ゴールへの意欲が人一倍あり、迷いのない思い切りの良いフィニッシュをみせる。あまり心配はいらない。いずれ、間違いなくアンフィールドに歓喜をもたらす日が必ず来る。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD243号、3月15日配信の記事より転載


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