[特集/最新セリエAを見逃すな! 05]セリエ通アナウンサー・北川義隆が紐解くカルチョの魅力

いま再び注目を浴びる “世界最強リーグ”

いま再び注目を浴びる “世界最強リーグ”

若かりし頃の“ローマの王子”トッティ photo/Getty Images

北川義隆アナといえば、セリエAの実況でおなじみ。ローマのチャンスには「決めろおおぉぉ〜!」と叫んでしまう生粋のロマニスタとしても人気の北川氏は、2013年まで現地で過ごし、その熱狂を直に体験するという貴重な経験をお持ちの識者でもある。そんな北川氏に、今のセリエAの魅力を語ってもらった。

ーー北川さんは以前、イタリアに住んでいらっしゃったのですよね。

北川「そうです。’98年から2013年までイタリアにおりました」

ーー’90年代後半から’00年代前半の頃は、セリエAはそれこそ世界最強リーグなんて言われていました。

北川「本当にそうだったと思いますね。当時は一番すごかった。今なんて比にならないくらいです。ルイ・コスタがいて、ビエリがいてネスタがいてトッティがいて、他にもシェフチェンコだビアホフだと、各国代表クラスの、キャプテンを務めるような選手が一堂に会して、みんなイタリアに来ているという意味でもすごかった。熱狂、魅力は今でも変わらないと思いますが、当時はとにかく一番派手でしたね」

ーーただ’00年代後半になると、人気がちょっと落ち目になってしまいます。

北川「世界がボーダーレスになってきて、いろんなサッカーが見られるようになったことが影響しているのでしょう。スペインなどのリーグで、ボールポゼッションが持て囃されるようになり、そういった潮流に合わせようとしたがために、おかしくなったような気が個人的にはしています。やれメッシだバルセロナだというところを見てしまうと、確かに見劣りするのかもしれませんが、文化が違うものをいきなり取り入れようとしても、うまくいきません。イタリアのクラブはイタリアらしく戦えば良かったと思うんです。相手の持ち味を消すのが、イタリアのサッカーのアイデンティティ。守備の美学は、今でも変わらないですよね」

昨年12月、ラツィオに2度敗れたユヴェントス photo/Getty Images

ーーしかし、時代の流れなのか、人気には翳りが見えてきます。例えばセリエAに対する批判として、よくあるのは「ユヴェントス一強だから面白くない」というものです。

北川「まあ、しょうがないですよね。強いんだから(笑)。でも随分と、その雰囲気も変わってきたと思います」

ーーおっしゃる通りで、今季はセリエAに競争力が戻ってきたような感じがします。

北川「そうですね。ユヴェントスは、明らかに何かおかしいな、という感じがあります。彼らは昨年末に、リーグ戦とスーペルコパで、ラツィオに2回負けてるんですよ。ユヴェントスが1カ月のうちに、同じ相手に連敗するというのは、30年間セリエAを見てきてもちょっと記憶にありません」

ーー過渡期なんでしょうか。

北川「監督が変わったというのが、一番大きいのでしょうね。戦力が潤沢であるがゆえに、サッリさん自身が迷ってしまっているというか。マンジュキッチすらベンチにも入れないという異常な戦力を揃えたクラブで、今季はあれもできるこれもできるという状態なわけです。でも、今までサッリさんは、メンバーを固定して戦うやり方しかしてこなかった。いかにコンスタントに戦力を使いながら、しかも結果を出していくかというところが、彼に立ちはだかっている大きな壁だと思うんです。それをまだ乗り越えられていないのでは?と感じるので、ちょっとザワザワした雰囲気がありますよね」

後半戦の見どころはユヴェントススタジアムにあり

後半戦の見どころはユヴェントススタジアムにあり

現在、セリエAの得点ランキングで首位を独走しているインモービレ photo/Getty Images

北川「逆にインテルなんかは、ユーヴェ連覇の時代を作ったマロッタさんやコンテさんを取り込んで、いいチームを作っている印象があります。私が後半戦面白いと思うのは、ユヴェントスを追うインテル、ラツィオ、アタランタ、ローマといったチームが、すべてユヴェントススタジアムで、つまりアウェイで戦わなければいけないところだと思います。ユヴェントスを止めないといけないわけですから、ココがカギになる。負けてしまえば、一気に離されてしまいますからね。ユヴェントスは約1年半ほど、ホームで負けていませんから、かなり厳しい戦いになるのは間違いありませんが」

ーーそんな中、ユヴェントスを止められるのはどのクラブだと思いますか?

北川「私はラツィオだと思ってるんです。20年前にさかのぼると、ラツィオが最終節までユヴェントスともつれて、劇的な優勝を遂げているんです。今季のラツィオは創設120周年記念で、ちょうどそのときのユニフォームに近いデザインのもので戦っている。そんなこともあって、私は年末の2敗を見て、これは何かあるかもしれないなと思ってるんですよ」

ーー今季のラツィオをどう見ていますか?

北川「中盤に限って言えば、十分にユヴェントスとも渡り合えるメンバーだと思います。ミリンコビッチ・サビッチをはじめ、ルイス・アルベルトも上手いですし、勝るとも劣らないスカッドを揃えていると思うんです。シモーネ・インザーギ監督も、それこそユヴェントスの後任監督に名前が挙がったくらいですし、インモービレも爆発的に点を取っている。カップ戦に敗れているので負担も少ない。ですから、このまま行けば十分にありうると思っています」

ーー逆にユヴェントスは得点数も、そんなに伸びていない。

北川「はい。失点も多いです。先制してから追いつかれるケースもよく見られます。先ほどもお話ししましたが、サッリさんにとって、これだけの陣容で戦うのは初めての経験。彼がどんな解を出すのかは、すごく楽しみな部分ですね。だけど、やらかす可能性もある」

ーーインテルはとても調子がいいですね。

北川「ラウタロとルカクが、ものすごくいいですね。ただ怖いのは、この2人はずっと出ずっぱりなんです。どちらかが怪我とか、出場過多になったときに、サンチェスあたりがうまくハマるのか。そこがカギだと思います」

アタランタは見本のよう 吉田&冨安にも期待

アタランタは見本のよう 吉田&冨安にも期待

今季、セリエAで最多得点を誇るアタランタ photo/Getty Images

ーーあと目立つのは、アタランタです。

北川「アタランタはすごいですよ。以前キエーヴォ・ヴェローナのGMをやっていたジョバンニ・サルトーリさんという方が今アタランタにいるのですが、この方の目利きがすごくて、いい若手がバンバン入ってくる。アタランタっていわゆるプロヴィンチャのクラブですけど、ここ5年で選手を育てて売って得た利益が250〜260億円とも言われていて。もうビッグクラブ並みです。才能のある若手を連れてきて、トップチームはガスペリーニさんがしっかり仕込んで、選手は成長して利益を出している。本当に好循環で、お手本中のお手本といってもいいくらいです」

ーー得点も一番取っている。

北川「そうです。誰かに偏っているということがないのがすごい。ガスペリーニさんはユヴェントスのプリマヴェーラ(育成部門の最上位組織)で指揮をとった経験があるからか、ユヴェントスにめっぽう強いですしね。一番いい時期にあるチームだと思います」

ーー愛するローマについては、いかがですか。

北川「いやー、厳しいですね(笑)。やりたいサッカーとやれるサッカーの乖離が大きくて、私は厳しいんじゃないかと見ています。もうすぐオーナーが変わるんですよ。ダン・フリードキンさんというアメリカ人になるのですが、そのタイミングで監督も変えるべきだと思います。サッスオーロに負けた時にジェコが行っていたのですが、若い選手が多すぎると。それはそうだなと思いました。若手とベテランばかりで、中間層がいないんです。そういう意味ではクラブのやり方も間違っているし、段階的に変えていかないと。フォンセカさんもいい監督だと思うのですが、ローマでやれるかどうかはまた別の話ですし、2年目になったからといって、上積みがあるとは思えないんですよね」

ーー厳しいですね(笑)。そういえば、サンプドリアには吉田麻也も加入しました。日本人選手についてはどうですか?

北川「個人的にラニエリ監督のことはよく知っているんですが、リストに挙がった選手の中で、監督自身が吉田を指名したと聞いています。インテルで長友と、レスターで岡崎と一緒にやって、日本人の勤勉さみたいな部分を評価しているんじゃないでしょうか。冨安については、現地でも非常に評価が高いですね。あのマルディーニがいい選手だね、才能を感じると言ったくらいですから。今は右サイドバックで出ることが多いですが、2ポジションできるというのは強みですよね」

ーー最後に、スクデット予想をズバリお願いします!

北川「ラツィオだと思います。先ほどの優勝したシーズンの話もそうですが、結局サッリさんの答えが出ないのではないかと。明確な答えが出せずに、肝心なところで『こうすれば良かった』となりそうな気がしています。ラツィオはメンバーを固定して迷いなく戦えているので、そっちの方が強いような気がしますね。いずれにしても、直接対決がポイントです。ユヴェントススタジアムで上位クラブがどう戦うか、見どころはそこに尽きると思います」

◯profile
北川 義隆

神奈川県出身。文化放送アナウンサーを経てフリーに。イタリア・ローマに10年以上移住し、現地でセリエAの熱狂に触れる。現在はDAZNなどのセリエA実況でお馴染み。愛するクラブはASローマ

構成/前田 亮

※theWORLD(ザ・ワールド)242号、2019年2月15日発売の記事より転載

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