[粕谷秀樹]大きすぎる疑問符が転がり一貫性にも欠ける VAR元年のプレミアリーグは大混乱

粕谷秀樹のメッタ斬り 022

粕谷秀樹のメッタ斬り 022

対ノリッジ戦。ユナイテッドはVARによってPKを得る photo/Getty Images

これがホントのロスタイム?

いくつかの問題を丁寧に検証しながら、大多数が満足するように仕上げていく。万人が拍手喝采するようなプランは、この世に存在しない。

さて、今回のテーマはVARだ。コメンテイターのガリー・ネビルが「必要ない。フットボールの醍醐味を損ねるだけだ」と大反対し、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督も、「救われるケースもあれば、奈落の底に突き落されることだってある」と半信半疑だ。VAR元年のプレミアリーグは、懐疑な意見が多い。

例えば10節のマンチェスター・ユナイテッド対ノリッジ戦でも、微妙なシーンがあった。ユナイテッドのダニエル・ジェイムズとノリッジのベン・ゴドフリーが競り合う。ショルダーチャージ。両者が倒れる。ともに反則を犯したようには見えなかった。VARでも問題は確認されなかった。ところが主審のスティーブ・アットウェルは、ユナイテッドにPKを与えている。

「VARは補佐で、最終的な権限は主審にある」がこのシステムのルールだ。プレミアリーグでも、主審とVAR担当レフェリーが協議しながら最終決定を下している。ただ、ユナイテッド対ノリッジ戦では、アットウェルがなにをもってPKと判断したのか、さっぱり分からなかった。しかも協議に時間を使いすぎたので、試合から緊張感を削ぎ落してしまった。ジャッジするまでに2分前後かかったケースもあったよね。これがホントの〈ロスタイム〉ってか。

名将モウリーニョもVARの使い方に少々疑問を抱いているようだ photo/Getty Images

モウリーニョも首を傾げている

最終的な権限を主審が持つってことは、ジャッジにも個人差が出てくる。たとえば、相手を意図的に傷つけるようなタックルは一発レッドだけれど、誤って削っちまったときはどうなるんだい? スリッピーなピッチでは、勢い余って相手のスネ、足首にタックルがヒットするときもあるでしょ。悪意がまったく感じられないアクシデントだ。

もちろん、ピッチサイドに設置してあるモニター画面を、主審がチェックすればより正確にジャッジできるよ。でも、概ねVAR担当レフェリーとの協議で済ましていないかい。ましてプレミアリーグは主審のレベルに問題がある。リー・メイスンやジョナサン・モスはスピードについていけず、はるか彼方から笛を吹く。

チェルシー、インテル・ミラノ、レアル・マドリード、ユナイテッドなどの監督を務め、アーセナルのネクストボス候補に挙げられているジョゼ・モウリーニョも、VARに首を傾げた。

「同じファウルであっても、ある週末はペナルティ、またある週末はノーファウル。現場が混乱するだけだ」

的を射た発言だ。「よく言ってくれた」って感謝している人も少なくないんじゃないかな。

繰り返しになるけれど、VAR元年だから万事順調は期待していなかったし、現場の評判も予想どおり芳しくない。だからこそプレミアリーグは監督、選手の意見に耳を傾け、VARを改善しなきゃいけないんだ。いまのところは大きすぎる疑問符がゴロゴロ転がっていて、一貫性も欠いている。大多数が不満タラタラね。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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