[貢献度で選んだ18-19ベスト11 プレミア編]激戦極まったリーグ戦 サプライズ選出多数!

最少失点リヴァプールがDF陣を独占

最少失点リヴァプールがDF陣を独占
ベストイレブンの選定はなかなか難しい作業である。なぜなら好き嫌いや独断と偏見が加味された人選になるため、嫌でも異論・反論・OBJECTIONが湧き上がる。今シーズンのプレミアリーグでも、選手投票によるベストイレブンにポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)が選ばれ、各方面で少なからぬ波紋が生じている。チェルシーに至っては、「われわれのエデン・アザールがなぜ選ばれないのか!?」と、公式サイトを通じてクレームをつけるほどだった。では、今回選定したベストイレブンをご覧いただこう。

通常ならGKはシティのエデルソン、もしくはリヴァプールのアリソンを選出すべきだろう。しかし、この両者は守備機会が少なく、GKとしての見せ場は限られている。ルカシュ・ファビアンスキは正反対だ。シュートの雨あられにさらされながら、決して慌てない。セーブ回数はリーグ最多の148回を記録。DF陣は脆弱だ。もし彼がいなければ、ウェストハムは最終盤まで残留争い、いや、プレミアリーグから降格していたに違いない。

さて、年間最優秀選手のフィルジル・ファン・ダイクは当然すぎる選出だ。今シーズンのパフォーマンスは、陳腐な言葉では表現できないほどの超高水準。いまや世界最高の、全知全能のDFといって差し支えない。守ってよし、攻めてよし、統率してよし。レベルの違いを「これでもか」というほど見せつけた。
また、トレント・アレクサンダー・アーノルドはリーグ3位タイの12、アンドリュー・ロバートソンは4位の11と、DFにもかかわらず二けたのアシストを記録。バリエーション豊富なキックでリヴァプールの攻撃にひと役買った。さらに一対一の強さ、試合終盤までスプリントが可能なタフネスも高く評価できる。

これぞプレミア! 中位・下位にもベスト選手多し

これぞプレミア! 中位・下位にもベスト選手多し

マンCで必要不可欠な存在となっているベルナルド・シウバ photo/Getty Images

初の得点王に輝いただけでなく、絶え間ないプレッシングでも貢献したサディオ・マネ、あらゆる部分でグレードアップしたベルナルド・シウバ、14アシストでランキング2位を獲得したライアン・フレイザーは、それぞれパーソナルベストのシーズンを過ごした。とくにシウバは「彼と出会い、指導できるなんて、この仕事をしていて本当にハッピーだ」とジョゼップ・グアルディオラ監督が相好を崩すほど、格段の成長を遂げている。そして彼らを支える中盤センターがルベン・ネベスとウィルフレッド・エンディディだ。前者は構成力と巧みなポジショニング、後者はリーグ屈指のボール奪取能力がキラリと光る。両選手ともに、来シーズンはビッグ6への移籍が有力視されている。

セルヒオ・アグエロの無慈悲なまでの決定力、モハメド・サラーの爆発力も捨てがたいが、前線はアレクサンダル・ミトロビッチとソン・フンミンを選出した。フラムで11ゴール。チャンスの数は絶望的に少なく、前線でストレスが募る試合ばかりだった。それでも常にからだを張り、闘いを具現化したミトロビッチは感動的ですらあった。所属するフラムはチャンピオンシップに降格するが、彼だけはトップランクのストライカーであることを立証した。貢献度だけならソンはスパーズ、いや、今シーズンのプレミアリーグでも最高だ。シュートの正確性が高くなり、ボールを受けた瞬間にゴールをイメージする。強引すぎるプレイは周囲の反発を買うケースもあったとはいえ、その闘争心こそが彼の持味だ。「いつでも強気であることがソンの魅力」とマウリシオ・ポチェッティーノ監督も絶賛していた。ひと皮もふた皮も剥け、ハリー・ケインの最強のパートナーとしてのポジションも確立している。

今季も圧巻の存在感を放ったソン・フンミン photo/Getty Images

次に監督である。ウォルバーハンプトンを7位に導いたヌーノ・エスピリト・サントを選ばずして誰を選べというのか。対戦相手、試合の流れによって戦略・戦術を巧みに使い分け、アーセナル、チェルシー、ユナイテッド、スパーズを破った。ビッグ6との対戦は4勝4分4敗。昇格クラブの躍進は、サントのベンチワークに負うところが大きい。なお、残念ながらベンチ入りに留まった7人も、今シーズンのパフォーマンスは見事だった。エデルソンの安定感はリーグ随一であり、アントニオ・リュディガーは天性のスピードと優れた状況判断で広いエリアをカバーした。さらにクリスティアン・エリクセン、ロベルト・フィルミーノ、ラヒーム・スターリング、サラー、アグエロといった実力者たちも、シーズンを通してハイレベルなプレイを披露している。ベストイレブンに入ってしかるべきだ。

しかし、クラブが置かれた状況や選手個人の力量を踏まえると、より高いレベルを求めたくなる者も何人かいる。したがって泣く泣くのベンチであり、彼ら7選手がトップランクであることに疑いの余地はない。以上が私なりのベストイレブンである。首を傾げたり、怒ったり、もしくは意外すぎる人選に呆れた方もいらっしゃるに違いない。しかし、冒頭でも述べたように好き嫌いや独断と偏見、さらに所属クラブのレベルを条件に加えると、すべてのフットボールファンが納得するチームの構成は非常に難しい。ご理解のほどを──。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD233号 2019年5月15日配信の記事より転載

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