[特集/欧州4大リーグ2021-22 #02]18-19シーズンの再現となった大接戦プレミア マンチェスターCが最終節で王座死守

 21-22シーズンのプレミアリーグはマンチェスター・シティとリヴァプールが最後まで優勝を競ってデッドヒートを繰り広げた。勝ち点差1で終盤を迎えるのは18-19シーズン以来のことであり、その年も1ポイント差でシティが逃げ切っている。リヴァプールは再びシティを捕まえきれなかったが、その実力は本物で今季のプレミアはマンCとリヴァプールが支配した。

優勝を呼び込んだ勝者のメンタル ペップの起用法も進化を見せた

優勝を呼び込んだ勝者のメンタル ペップの起用法も進化を見せた

アストン・ヴィラを下し21-22シーズンのプレミアリーグを制したマンチェスター・シティ。昨季に続いてのリーグ制覇であり、5シーズンで4度目の栄冠に輝いている photo/Getty Images

 思えば、マンチェスター・シティが44年ぶり3度目のプレミアリーグ制覇を達成した2011-12シーズンの最終節も劇的だった。QPRを相手に1-2の劣勢で終盤を迎えていたが、92分に交代出場のエディン・ジェコが同点弾、94分にセルヒオ・アグエロが決勝点を決め、マンチェスター・ユナイテッドと同勝点となり、得失点差で優勝を決めている。最終節のエティハド・スタジアムは、なにかが起こるのである。

 2021-22シーズンはマンCとリヴァプールによる激しい優勝争いとなったが、最終節を1位で迎えたマンCは勝てば優勝という状況だった。しかし、アストン・ヴィラを相手に前半のうちに失点し、69分にも元リヴァプールのフィリペ・コウチーニョに追加点を許して0-2という絶体絶命を迎えた。ところが、ここでネガティブにならず、さらには慌てることなく冷静に畳みかけることができるのがマンCで、各選手に勝者のメンタルが備わっていた。

 流れを変えたのはペップ・グアルディオラ監督から逆転のタスクを命じられて交代出場した選手たちで、76分にラヒーム・スターリング(56分in)からのクロスにイルカイ・ギュンドアン(68分in)が頭で合わせて1点差。78分にはオレクサンドル・ジンチェンコ(46分in)が左サイドを崩し、中央へラストパス。ロドリが右足でフィニッシュし、同点とした。ここまで来るとエティハド・スタジアムはお祭り騒ぎで、多くのサポーターが8年前の再現を期待していたに違いない。それを実現してしまうのがマンCで、81分にケビン・デ・ブライネが右サイドからファーサイドに流すと、ギュンドアンが飛び込んで押し込み、3-2と試合を引っ繰り返してプレミアリーグ連覇を果たしている。

 今シーズンなかばにマンCの公式サイトにグアルディオラ監督の「私は以前と少し変わったと思う。いまは選手たちをより理解できている」というコメントが掲載された。選手をいかに起用すると、より能力が発揮され、チームの勝利につながるのか。この選手を理解するという面について、グアルディオラ監督は「シーズンを重ねることでできるようになった」とも語っている。

 ベルナルド・シウバのプレイポジションをサイドではなく中央にし、ビルドアップ能力を生かす。B・シウバも生きるし、チームのためにもなる。また、グアルディオラ監督によると昨シーズンは「動き過ぎていた」というロドリも、大型アンカーとして逆に動きを制限することで変貌を遂げてチームの核となった。フェルナンジーニョからロドリへ──。マンCのアンカーは、スムーズに交代が行われたと言っていい。

 こうした細かな“整備”の結果、デ・ブライネの前への推進力、ゴールにからむ能力もより生きることとなり、異次元のプレイでチームを牽引した。さらには、最終節のアストン・ヴィラ戦の後半のように、左SBにジンチェンコを起用し、ジョアン・カンセロを右サイドにまわすことで両サイドからの攻撃力を高めるオプションもあった。無論、マンCが持つオプションは多く、前線のワイドなポジションならリヤド・マフレズ、スターリング、フィル・フォーデン、ジャック・グリーリッシュなど選択肢が豊富だった。グリーリッシュは移籍1年目の今シーズンは不本意だったかもしれないが、グアルディオラ監督によってより能力が発揮されるタスクが与えられると予想される。

 クラブの至宝であるフォーデンは順調に進化を遂げたシーズンとなった。スキル、アスリート能力、インテリジェンスとすべての分野が伸びており、プレミアリーグの年間若手最優秀選手に選ばれた。彼の強みはウイング、センターフォワード(偽9番)、インサイドハーフと複数のポジションでプレイできることであり、デ・ブライネやB・シウバ、マフレズとどの選手の後継者にもなれる素質を秘めている。

 今季目立ったのはデ・ブライネ、フォーデンら前線の破壊力とともに、後方の安定感だ。マンCには4人の各国代表のセンターバックが在籍しており、試合に合わせてグアルディオラ監督が先発を選ぶ。とくに重宝されたのはルベン・ディアスとアイメリック・ラポルトで、昨季からはジョン・ストーンズとラポルトが入れ替わる形となった。序盤はなぜストーンズではなくラポルトなのかと批判の声もあったが、シーズンが進むにつれパフォーマンスが上がり、ウィークポイントとされていた守備面でも改善が見られるように。ビルドアップでの貢献度の高さは健在であり、加えて怪我での離脱がほぼなかった。ディアス、ストーンズ、ネイサン・アケと他の3人は必ずどこかで負傷しており、いつでも起用可能なラポルトの安心感は大きい。

 カンセロもラポルトと同様に怪我での離脱が少ない。今季は左SBとして多くの試合で出場するようになり、両SBとしての地位を確立した。アタッキングサードでのチャンスメイクはリーグ屈指で、デ・ブライネがおとなしかった前半戦は攻撃のアイデアの大部分をカンセロに頼っていたほどだ。

 今季のマンCはリーグ最多得点(99点)を記録した攻撃陣に注目が集まるが、それは安定感のある守備があってこそ発揮されるもので、後ろが脆ければ100%の力は出せない。ラポルトやカンセロはシーズンを通して守備陣に安定感をもたらしており、2連覇を達成したマンCの強さは守備の改善によるものが大きかった。

失意のリヴァプールとチェルシー ノースロンドンは希望を掴んだ

失意のリヴァプールとチェルシー ノースロンドンは希望を掴んだ

モハメド・サラーは23ゴールを決めてプレミアリーグ得点王に輝いており、最終節ウルブズ戦では貴重な勝ち越し弾を決めた頼れるエースだ photo/Getty Images

 わずか勝点1差で優勝を逃したリヴァプールは、ユルゲン・クロップ監督が率いて7年目のシーズンとあってモハメド・サラー、サディオ・マネ、ディオゴ・ジョタを中心に完成度の高いサッカーを披露し続けた。プレミアリーグ制覇はならなかったが、FA杯で優勝を飾り、タイトルを得ている。

 そのFAカップでは南野拓実が4試合に出場して3得点し、ベストイレブンに選出された。リヴァプールはあまりにも層が厚く、4番手、5番手のアタッカーから序列が上がらないが、プレミアリーグ、FA杯、チャンピオンズリーグなど、複数のトップコンペティションで優勝を狙うチームのこのポジション(地位)を確保しているのは十分にすごいこと。とくに、プレミアリーグ、FA杯、カラバオ杯を合わせて10得点した今シーズンは、南野にとってイングランドに渡ってから最高の1年となった。

 昨シーズンの欧州王者であるチェルシーは、さまざまな問題を抱えながら3位に食い込んだ。トーマス・トゥヘル監督が「われわれのキープレイヤー」と語るエンゴロ・カンテが負傷もあって26試合(先発21試合)の出場にとどまったのをはじめ、ロメル・ルカクもフルシーズンは働けず、多くのケガ人に悩まされた。

 さらには、オーナーのロマン・アブラモビッチがクラブ売却を進めるなど、チェルシーはピッチの外にも難しい問題を抱えていた。そうしたなか、チームはシーズン終盤を迎えて絵に描いたように失速した。こうした状況を考えると、よく3位に食い込んだという印象である。メイソン・マウント、カイ・ハフェルツなど良質な若い選手がいなければ、この成績はなかったかもしれない。

 トッテナムとアーセナルによるCL出場権をかけた4位争いは、トッテナムがモノにした。大きかったのは5月12日に開催された第22節順延分の両者の直接対決で、ハリー・ケインの2得点、ソン・フンミンの得点でスパーズが快勝した。これまでもソン・フンミンは迷いのない動き、思い切ったフィニッシュで得点を重ねてきたが、今シーズンはより洗練された動き、正確なフィニッシュで得点を量産した。終わってみれば、サラーと並ぶ23得点(PKなし)でアジア人初のプレミアリーグ得点王となっている。

 一方、CLにあと一歩が届かなかったアーセナルだが、エミール・スミス・ロウ、マルティン・ウーデゴー、冨安健洋など若い選手が多く、可能性を感じさせる1年となった。とくに、冨安は加入直後から右SBを任され、短期間でミケル・アルテタ監督の信頼をつかみ取った。シーズン途中の負傷離脱がなければ、冨安自身の評価、さらにはアーセナルの勝点ももう少し上がっていたかもしれない。それほど、右サイドでブカヨ・サカなどといい連携をみせつつあった。伸びしろという意味では、上位5チームのなかではアーセナルが一番あるのではないだろうか。

ハーランド加入でマンCが3連覇か 対抗馬のリヴァプールは……

ハーランド加入でマンCが3連覇か 対抗馬のリヴァプールは……

マンチェスター・シティのラストピースとしてチームに加わるアーリング・ハーランド。194cmの長身FWで、シティ待望のストライカーだ photo/Getty Images

 来シーズンを考えると、やはりマンCが優勝候補の筆頭になる。なにしろ、複数のメガクラブが狙っていたアーリング・ハーランドの獲得に成功した。アグエロ、フェラン・トーレスの退団によって、マンCには「9番」タイプが不在だった。背番号としてはガブリエウ・ジェズスが「9」をつけているが、純粋なCFではない。ハーランドの加入が決まり、「チームを助けてくれると思う。みんなが多くのことを期待している」と語ったのはデ・ブライネで、早くも期待が大きい。前述のとおり中盤にはロドリ、デ・ブライネ、B・シウバなどビルドアップ能力に長けた選手が揃っていて、ワイドなポジションにもチャンスメイクできる選手がズラッと揃っている。ハーランドはマンCが待ち望んでいたフィニッシャーで、この新エースの得点数が20~30点に達するようなら、3連覇は堅いか。

 最大のライバルとなるリヴァプールは、おそらくマネが退団となる。現状、代わって獲得したのはフラムでプレイしていたU-21ポルトガル代表のファビオ・カルバーリョ、そしてベンフィカからダルウィン・ヌニェスだ。ディボック・オリギも退団となるため、控えも含めて前線の顔ぶれが変わることになる。南野にしても去就が注目されている。こうした現状から、選手が入れ替わるリヴァプールはエンジンがかかるまでに時間を要する可能性がある。

 この両チームにチェルシー、トッテナム、アーセナルがどこまで追随できるかという構図は、今シーズンと変わらないだろう。なかでもトッテナムは鎌田大地の獲得が噂されており、実現したならソン・フンミン、鎌田という恐ろしく縦に早いコンビが結成されることになる。すでにイヴァン・ペリシッチを補強しており、攻撃力を増している。来シーズンのトッテナムはプレミアリーグはもちろん、CLでも注目を浴びるだろう。

 マンチェスター・ユナイテッドに関しては、アヤックスで成果をあげたエリック・テン・ハーグを新監督に招聘したが、現状は目立った補強をしていない。ただ、マーカス・ラッシュフォード、ジェイドン・サンチョといったポテンシャルの高い伸び盛りの選手はいる。既存のスター選手であるクリスティアーノ・ロナウドに、どんな役割を与えるのか……。結果を求めるというより、テン・ハーグ新監督のもと今後の方向性を確認するシーズンになるか。

 日本人選手であれば、アーセナルの冨安が2年目にどんなパフォーマンスをみせるかも見逃せないし、ブライトンにレンタルバックされる三笘薫も気になる。ブライトンの左サイドにはハードワークできて「個」の力で突破できるマルク・ククレジャがいる。マンCが獲得を狙っている優良な人材で両名がチームメイトになれるか不透明だが、もし一緒にプレイするとなったら三笘は刺激を受けることで間違いなく成長できる。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)270号、6月15日配信の記事より転載

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