[西岡明彦]あの悲劇を乗り越えエリクセンがプレミアに帰ってきた!

プレミア最強ガイド #87

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トッテナム時代の輝きをまた見せてほしい photo/Getty Images

 昨年6月12日、EURO2020初戦での悲劇から約8ヵ月、クリスティアン・エリクセンがピッチに戻ってきました。移籍市場の最終日、ブレントフォードへの加入発表は大きな話題となりました。

 昨夏、突発的な不整脈を止め心臓の動きを回復させる補助人工臓器を体内に植え込む施術を受けていたエリクセン。イタリアでは“ペースメイカーの範疇とされるものを装着した選手はプレイ出来ない”規約があり、昨季のスクデット獲得に貢献したインテルを退団しなければなりませんでした。エリクセンは当初、妻のサブリナさんに「もうプレイは出来ないだろう」とこぼすなど選手キャリアを諦めていましたが、ドクターと相談しながら経過を観察し、様々な検査をクリアーしていくなかで、またピッチに立ちたいという意欲が湧いてきたそうです。

 昨年末、エリクセンがアカデミー時代を過ごしたオーデンセ(デンマーク)やアヤックスのリザーブチームで練習を重ねていたなかで、ブレントフォードが関心を示しました。トーマス・フランク監督はエリクセンがデンマークU-17代表だった当時の指揮官であり、「欧州内のタイトルをほぼ獲得してくれた。その年代のスターだった(フランク監督談)」ことが、契約の起因になっています。さらにプレミアリーグにはペースメイカー装着に関する規約は存在せず、プレイに支障がない事も確認されたことで合意に至ったのです。
 契約は今季終了までの6ヵ月。この半年にはクラブとエリクセン自身の大きな野望が込められています。すでにユニフォームなどのキットセールスは通常の30倍の売り上げを記録しており、トッテナム、インテルなどで活躍した彼の加入による宣伝効果は計り知れません。契約延長の可能性は十分あるのではないでしょうか。

 一方、エリクセンは、「フットボールのない半年はとても長く感じられた。芝の匂い、スパイクを履く感覚、今はすべてが喜びである。今の目標はカタールでのワールドカップに出場すること。体調に問題はないし、近々トップコンディションに戻せる自信がある」と意気込みを語っています。欧州予選を難なく突破したデンマークにとって、2大会連続6回目のW杯。これ以上ないパワーが生まれるのは間違いありません。

「誰もがあのような状況であれば人生が変わったはず。私だったら今後は人生を楽しもうと思考が変わっただろう」

 記者会見で“楽しんでほしい”と、間接的にエリクセンにメッセージを送ったフランク監督、同感です。


文/西岡 明彦

※電子マガジンtheWORLD266号、2月15日配信の記事より転載

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