経験のレアルか改革のバルサか 今季のリーガ占うエル・クラシコの行方

変わらぬハイパフォーマンスでレアルの中盤に君臨するモドリッチ photo/Getty Images

ベンゼマ、モドリッチらベテランが健在

現地時間4月10日にリーガ・エスパニョーラ第30節でレアル・マドリードとバルセロナが対戦する。世界中のサッカーファンが注目するスペイン2大クラブによる伝統の“エル・クラシコ”だが、首位のアトレティコ・マドリードを2強が追う形となっている今季のリーガにおいてこの試合が持つ意味は大きい。

ホームでバルセロナを待ち受けるレアルはここまで19勝6分け4敗と3位につけている。今季は序盤戦のリーグやチャンピオンズリーグで取りこぼしが目立ち、怪我人やコロナウイルス感染による離脱者が相次ぐなど、ジネディーヌ・ジダンは苦しい台所事情のなかでやり繰りが求められてきた。

そんななかでこれまでのレアルを支えてきたカリム・ベンゼマやルカ・モドリッチ、トニ・クロースといったベテランたちが30歳を過ぎた今もなお健在。彼らへの依存度が高く世代交代も指摘されてきたが、その必要性を感じさせないコンディションの良さとハイパフォーマンスで外野の声を封じ込める活躍を見せている。
それに加えてここに来て潜在能力を見せ始めているのがヴィニシウス・ジュニオール。2018年にレアルに加わった20歳のブラジル人ウインガーは、これまで主戦場とされたウイングだけでなく、ベンゼマと最前線で2トップを組むなど新境地も開拓。独力で違いをもたらせられるヴィニシウスの出来はバルセロナ戦でカギを握ってくるだろう。

懸念点は守備の柱の不在。セルヒオ・ラモスが負傷離脱中なのに加えてラファエル・ヴァランもコロナウイルス陽性反応により欠場。ジダンが今季併用する3バックシステムも考えられたが、守備の要である2人を欠くバルセロナ戦ではナチョ・フェルナンデスとエデル・ミリトンがCBでコンビを組む4バックシステムの採用が濃厚だ。

彼ら2人に守護神のティボー・クルトワを含めたDF陣が68得点とリーグ最多を誇るバルセロナの攻撃陣を封じられるか。中盤から前線にかけては経験豊富なベテランや勢いのある若手が揃っているだけに、ナチョとミリトンのペアが予想される最終ラインの出来も勝敗を分けるポイントとなってくるだろう。

ペドリ、デストら若手中心にシフトしつつあるバルセロナ photo/Getty Images

クーマンによる若手抜擢や3バック採用

一方のバルセロナはここまで20勝5分け4敗。前節バジャドリード相手に勝利を収めリーグ戦での負けなしを19試合に伸ばし、首位を走るアトレティコに勝ち点差1と肉薄。一時期はその手腕も疑問視されたロナルド・クーマンだが、リーグタイトルを争えるところまでチーム状態を仕上げてきた。

チームが過渡期とされてきたなかでクーマンがチームにもたらした改革のひとつが積極的な若手の抜擢。若干18歳でスタメンに定着しスペイン代表にも選出されたペドリをはじめ、20歳のセルジーニョ・デスト、21歳のオスカル・ミンゲサらがチームに組み込まれ、優勝を争うチームのなかで経験値を高めている。

また、ジェラール・ピケが故障離脱し最終ラインの要が不在のバルセロナでクーマンが採用した3バックシステムも機能。フレンキー・デ・ヨングをCBに配置した戦術がはまり、プレイビジョンに長けたオランダ代表MFがチームに安定感をもたらし、このシステムが機能したことでバルセロナ全体に好循環が生まれた。

それに加えて前線ではリオネル・メッシ、アントワーヌ・グリーズマンの2シャドーにウスマン・デンベレを1トップに起用する新たなトライアングルを採用。フランス代表にも久しぶりに復帰するなど充実のシーズンを過ごすドリブラーがレアルの守備陣を苦しめられれば、メッシ、グリーズマンが活きるスペースも生まれ、得点の可能性を見出せるだろう。

ラモス、ヴァランという守備の要が不在のレアルに対してバルセロナはクーマンが作り上げてきた現状のベストメンバーで挑んでくるだろう。直近にリヴァプールとのCL準々決勝を戦ってきたホームチームに対してよりフレッシュな状態で挑めるのはオランダ人指揮官が率いるチームである。

しかし、ジダン率いるレアルにはCLやリーガなどの大一番で結果を残してきた確かな実績と選手たちがいる。敗れると今季のリーグのタイトルレースからは脱落が濃厚なだけに、厳しい状況でこそ力を発揮してきた経験豊富な選手たちが伸び盛りの若手と融合し、チームに勝利をもたらせられるかは期待したいところ。

開幕から首位を走ってきたアトレティコの勢いに陰りがみられるなかで試行錯誤をしながらチームを上昇気流に乗せてきたレアルとバルセロナの両チーム。この試合はディエゴ・シメオネが率いるチームへの挑戦権をかけた戦いといって差し支えなく、今季それぞれが示してきた特長があるなかで、この戦いでその持ち味を発揮できるのかは興味深い。

今季のリーガの行方を占う大一番となる今回のエル・クラシコ。先頭を走り続けてきたアトレティコを追うシーズンを戦ってきたなかで首位チームへの挑戦権を得るチームはどちらになるのか。互いの意地と意地がぶつかり合うスペイン2強の戦いに注目だ。

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