[MIXゾーン]ウタカの“エンジェルパス”で決勝点の京都 勝ち切るための“積極チェイス”も結実してきた

京都はチョウ監督のプレッシングサッカーが浸透しつつある(写真はイメージ) photo/Getty Images

千葉が追い上げるも逃げ切る

「前の試合では自分がボールを持つと、『ウタカがシュートするだろう』と(味方が)ただ見ている場面が多かった。今日は(MF松田)天馬と(MF福岡)慎平が自らゴールを決めようと、しっかり上がってきた。だからこそ彼らが決めることができた」

 京都の2得点を演出したFWウタカはこう話した。

 京都の先制点は33分、ウタカが相手ペナルティエリア近くでDFにプレッシャーを与え、そこで生まれた千葉のミスに乗じた。ウタカ→松田→ウタカと渡り、最後は松田がDFと競り合いながらスライディングでゴールに運んだ。
「チョウ貴裁監督から『前からチェイシングをかける時は、後ろを気にせずにどんどんいけ』と指示されていて、今日も積極的にチェイスしたことが功を奏した」(ウタカ)

 京都の持ち前の徹底したプレッシングは、最前線のウタカが動き出すことで一気に加速する。この試合(特に前半)はウタカが入れたスイッチに周囲が呼応する様が素晴らしかった。立ち上がりから千葉を押し込む形で、主導権を握ってプレイすることができた。

 更に68分には自陣からのロングフィードにウタカが抜け出し、相手DFをフェイントで翻弄すると、中央に走り込んだ福岡に「自分のラストパスはまさにエンジェルパス」と自画自賛の絶妙のアシスト。これで京都は2点をリードした。

 ただ一方で繊細さも露呈してしまう。

「今日の試合に臨む前に京都のプレイヤーとして選手それぞれが大事にしなければいけないことは、形を作っても最後に結実しないと結果には繋がらないこと。練習を沢山重ねてきたが、特に後半は非常に相手に押され、2-0になった後も自分たちで自分たちを苦しくしてしまうような展開になった」(チョウ監督)

 ここから千葉の逆襲に遭う。ホームで勝てていないという心理面がプレイに影を落とし、残りの20分はゴールを必死に守るという展開に。

 千葉の尹晶煥監督は「(後半は)大きな変化というよりは、選手たちがゴールに向かったし、挽回するために運動量も多かったと思う。動きの質、サポートも良くなったことで、いつもよりサイドをうまく利用でき、前半に攻略できなかったところからうまく攻められたと思う」。ただ「どれだけ崩しても最後の精度、決定力のところは足りない。続けて解決しなければならない問題だと思う」。

 ミスを挽回しようと前に出た選手の姿勢は評価したものの、ゴールという結果に繋がらないことに口惜しさをにじませた。

 ただ中立の立場で試合を俯瞰した時、ホームの京都は積極的なプレッシングが機能する時間があり、それがゴールに繋がった。押し込まれる時間帯もあったものの、それに耐えて勝ち切った。これが何よりの収穫である。

 千葉は2点ともに勿体ない形での失点だった。ただ決して悪い内容ではないだけに、悲観する必要はないだろう。京都という昇格候補に敗れたとはいえ、自分たちのやりたいことをしっかり表現できたことを自信にしていい。

 互いに評価すべき点と反省すべき点が見えた試合だったが、最後まで勝敗がどちらに転ぶか分からなかいスペクタクルという意味も含めて、非常におもしろい試合だった。

文/吉村 憲文

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