レアル・マドリードの仇敵FCバルセロナにも、日本人選手が誕生した。安部裕葵だ。久保と同じように彼も、トップチームではなくバルセロナBからスタートを切る。
バルサ側は「以前から追跡していた」と説明した。安部を追いかけるきっかけは確かにあった。
たとえば、17年7月の鹿島対セビージャ戦である。当時プロ入り1年目の安部は後半途中から出場し、得意のドリブル突破でゴールをおぜん立てした。翌18年にはクラブW杯準決勝で、R・マドリードと対戦した。バルサからすれば評価をしやすい試合で、持ち味とする仕掛けの姿勢をアピールしていたのである。
日本代表として出場したコパ・アメリカでも、気持ちの矢印を前へ、前へと向けていた。うまいだけの選手は通用しないのが国際舞台であり、ブラジルで見せたパフォーマンスはバルサの評価をさらに押し上げるものになったのだろう。
鹿島でサイドアタッカーを務めてきたこれまでは、攻撃の切り込み役として評価を高めてきた。バルサBの一員となった今後は、自ら決め切ることも必要になってくる。外国人アタッカーの評価基準として、ゴール数は何よりもわかりやすい。
サイドアタッカーではなくストライカーとなれば、得点は目標ではなくノルマである。ポルトガル1部のマリティモに期限付き移籍した前田大然も、求められるのはゴールだ。
松本山雅FCでの彼は、国内屈指のスピードスターとして存在感を発揮してきた。ディフェンスラインの背後を狙うランニングが攻撃に奥行きをもたらし、守備でもハードワークする献身性が松本山雅を、U−22日本代表を助けてきた。コパ・アメリカで2列目右サイドで起用されたのも、運動量と守備力を買われてのものだった。
マリティモでの前田に求められるのは、チャンスメイクだけではなくゴールだ。その意味で、8月11日のリーグ開幕戦は好印象を抱かせた。
後半途中から出場すると、クロスバー直撃のヘディングシュートを放った。ゴールへの意欲を結果へ結びつけていくことで、自身の未来は切り開かれていく。
欧州で最初のシーズンを過ごす3人とは対照的に、冨安はステップアップを果たした。ベルギー1部のシント・トロイデンから、イタリア・セリエAのボローニャへ移籍したのだ。
身体能力に恵まれた伸び盛りのセンターバックには、最高の移籍と言っていい。イタリアのサッカーには、守備の文化が隅々まで行き届いている。財政基盤を整えてリーグ内の中堅から上位へ躍り出ようとしているクラブで、対人プレイの強さをさらに磨き上げることができるはずだ。
同時に、アタッカー陣を充実させたクラブでは、マイボールの局面での組み立ても求められていくだろう。攻撃のスイッチとなる縦パスにも特長のある冨安は、攻守両面でレベルアップできる環境だ。
外国人選手としてプレイする彼らは、勝敗に影響を及ぼすプレイを求められる。飛躍へのスタート地点に立った4人の成長は、来夏の東京五輪と22年のカタールW杯に直結する。
文/戸塚 啓
※電子マガジンtheWORLD No.236、8月15日発売号の記事より転載
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