[ロシアW杯#45]日本、セットプレイで痛恨の失点も “究極の決断”で決勝Tへ!

集中力を保った日本 GK川島も渾身のセーブ

集中力を保った日本 GK川島も渾身のセーブ

長友はこの日も堂々たる守備を披露。対面のグロシツキと互角に渡り合った photo/Getty Images

試合前日の西野監督は「日本らしいサッカーで質の高いゲームをやりたい。決して崩せない相手ではないと思うので、ボールも人も動く日本らしいクイックネス(速さや俊敏性)を持って戦いたい」と語っていた。

しかし、ボルゴグラードアリーナは30度を超え、湿度もある過酷な環境だった。また、日本は引き分けでも決勝トーナメント進出が決まり、ポーランドは既に敗退が決定していた。前半がお互いに攻守の切り替えが遅く、まったりした展開になったのも仕方なかった。

そうしたなか、「勝ち上がることを前提で出ていない人を起用したかった」(西野監督)という考えのもと1戦目、2戦目から先発6名を入れ替えた日本は、各選手が集中力を切らさず、押さえるべきところはしっかりと押さえていた。レヴァンドフスキにボールが入ると2人、3人で潰しにいき、簡単にはボールに触らせなかった。32分にベレシニスキのクロスからグロシツキにヘディングシュートを許したが、GK川島が渾身のセーブを見せ、前半最大のピンチも切り抜けた。
この時点で同時キックオフのセネガル対コロンビアも0-0であり、日本はこのまま試合を終わらせればよかった。しかし、2連敗だったポーランドは“誇り”をかけて臨んでおり、勝点3を強く欲していた。59分、山口がペナルティエリア付近でクルザワを倒し、FKを与えてしまう。キッカーのクルザワがゴール前にクロスを入れると、マークを外したベドナジェクが右足ボレーでゴールネットを揺らした。

厳しい選択を迫られた日本  “他力突破”を選択

厳しい選択を迫られた日本  “他力突破”を選択

他力突破の道を選んだ西野監督。この決断が奏功した photo/Getty Images

ここからの日本は時間の経過とともに色々な選択を迫られた。「試合が動いたことで攻めなければいけなくなった。その後、他会場でも試合が動いた。そうしたなか、選択肢が変わっていった」と説明したのは西野監督で、大迫、乾が投入されたときは同点を目指す意志があった。しかし、他会場でコロンビアが先制したことで状況が変わった。フェアプレイポイントでセネガルを上回る日本は、負けてはいるが、引き続きそのまま試合を終わらせればよかった。
 
とはいえ、1点負けているし、他会場が同点になったら決勝トーナメント進出を逃す可能性があった。自分たちで同点に追い付き、自力で勝ち上がると考えるのが通常だが、西野監督の決断は違った。

「グループリーグを突破するなかでの究極の選択だったかもしれない。自力ではなく他力を選んだ。自分のプランになかったが、判断を迫られたなかでの決断だった」
 
指揮官のこの選択は、結果的に決勝トーナメント進出につながった。「根本的には勝つことがプランだった」(ナヴァウカ監督)というポーランドの状況もまた日本にとっては好都合で、追加点を狙いにくることもなかった。激しいブーイングを浴びつつも、ゆっくりとパスを回すなか、終了のホイッスルを聞いた。
 
今回のような状況で他力に頼る選択は消極的だが、何事も勝てば官軍であり(試合には負けているが)、決勝トーナメント進出を決めたのだからこの選択は正しかったということになる。次の相手はベルギーとなったが、究極の決断で日本を決勝トーナメントに導いた指揮官は、「現時点ではどちらとも対戦したい」と言葉を残した。


文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD213号 2018年6月29日配信の記事より転載

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