ベトナムのVリーグ1は現地時間16日、ハノイFCを率いていた手倉森誠監督の解任を発表した。今年2月に同クラブの監督に就任した手倉森氏だったが、開幕したばかりの25−26シーズンはここまで1分2敗と未勝利が続いていたことから、クラブは早くも解任を決断。ハノイ FCは昨年1月から7月まで岩政大樹氏が指揮しており、手倉森氏はクラブを率いる2人目の日本人監督であったが、成績が振るわず約半年間の活動に終わった。
ベトナムメディア『The thao 247』は今回の発表を受け、「東南アジアサッカーにおける日本人と韓国人監督のパラドックス」と題し、これまでの東南アジアにおける日本人と韓国人監督の実績を比較。「両国共にサッカー先進国であるにもかかわらず、東南アジアにおける日本人と韓国人監督の成功率は大きく異なる」と日本人指揮官がなかなか結果を出していないことを指摘した。
これまで複数の日本人指導者が東南アジアの国やクラブの監督に就任していた。かつて大宮アルディージャやヴィッセル神戸の監督を率いていた三浦俊也氏は、2014年にベトナム代表の監督に就任。 A代表のほかベトナムのアンダー世代も掛け持ちで率いることとなった三浦氏は、就任数ヶ月後に開催された仁川アジア大会のグループリーグでイランを倒し首位通過を果たすなど躍進を見せた。しかし以降はAFFカップ(東南アジア選手権)、東南アジア競技大会、U23アジアカップなどで目立った成績を残せず2016年に解任された。タイでは西野朗氏が2019年に就任するも、2018年のAFFカップ準決勝でマレーシアに敗れ敗退、2022年ワールドカップアジア2次予選敗退など、こちらも思った成績が振るわず2年後に解任。他にも、U-23タイ代表に就任した西ヶ谷隆之氏や、同国女子代表監督を務めた池田太氏、シンガポールでは吉田達磨氏、小倉勉氏などが率いるも、大きな成功を収められず短期間の活動に終わっていた。
一方で韓国人指導者は大きな成功を収めている。2017年から2023年の間ベトナム代表、及びアンダー世代の代表を率いたパク・ハンソ氏は、2018年のU-23アジアカップ、アジア大会で同国代表を準優勝に導き、同年のAFFカップではベトナムに10年ぶりのタイトルをもたらした。今年1月までインドネシア代表の監督を務めたシン・テヨン氏は、2020年AFFカップで準優勝、2021年東南アジア競技大会で3位という成績を収め、2026年ワールドカップ予選では、同国代表を初となる3次予選(最終予選)へ進出させた。3次予選では敵地でサウジアラビアに勝利するなど躍進を見せ、途中でパトリック・クライファート氏が監督に就任するも、インドネシア代表の4次予選進出に貢献したことは確かだろう。
日本は近年、欧州をはじめ、世界トップの舞台で活躍する選手が増えているが、監督ではなかなかそういった舞台で指揮を取る人は少ない。韓国人指導者が東南アジアで成功しているほか、オーストラリアではアンジェ・ポステコグルーや、ケヴィン・マスカット、ハリー・キューウェル氏などが指揮をとっている。現状、日本の指導者が世界的に見ても高いレベルにあるとは到底言えないことから、今後は監督業でも成長は必須だろう。世界各国で指揮をとる人が増え、選手同様ハイレベルな環境になることを願うばかりだ。