[MIXゾーン]FC東京レアンドロ、“簡単でない”一撃が名古屋を沈める

決勝点を叩き込んだレアンドロ photo/Getty Images

素早い攻守の切り替えでボールを奪い、そのままゴールへ

J1第10節FC東京×名古屋が行なわれた15日の味の素スタジアムは、公式記録によると気温30.4度、湿度54%という気候条件だった。実際はこの数字よりも体感の不快指数が高く、モワッとした暑苦しい空気が漂っていた。こうしたなか、選手たちは過密日程で戦い続けている。この試合に限らず、夏場は動きにいつものキレやスピードがなく、トラップミスやパスミスが発生するのは仕方ないこと。そうなると、勝敗を分けるのは集中力や大事な場面での精度の高さといった要素になる。

試合は序盤からゆっくりしたペースで進んだ。名古屋の両サイドにはマテウス、前田直輝というスピードのある2人がいたが、FC東京は彼らが使いたいスペースをうまく潰し、トップスピードでのプレイをほぼ許さなかった。パスコースがないことでガブリエル・シャビエル、ジョアン・シミッチ、稲垣祥らの球離れが遅くなり、名古屋が中盤でボールを失い、FC東京がカウンターを仕掛けるという展開に徐々になっていった。「片方のサイドに引いて守っている相手に対して、寄ってきた瞬間に逆サイドを突くというスピード感がなかった」と試合を振り返ったのはマッシモ・フィッカデンティ監督である。

一方、FC東京は高い集中力を維持し、したたかにチャンスを狙っていた。先制点は素早い守備、正確なプレイの連続によって奪っている。33分、名古屋が自陣でマイボールをガブリエル・シャビエルへ入れる。ここに室屋成が素早く突っかけ、こぼれたボールを近くにポジションを取っていた安部柊斗が拾い、前方にいたレアンドロとダイレクトでワンツーをかわし、ゴールに背中を向けている髙萩洋次郎へタテパスを入れた。狭いスペースのなかで髙萩洋次郎は細かいステップを踏み、さらに前方にいた永井謙佑にパスを出す。この時点で先程ボールを触ったレアンドロがパス&ゴーで走り込んでおり、しっかりと視野にとらえていた永井謙佑が1トラップののちラストパスを送る。これを受けたレアンドロが右足でフィニッシュして勝点3につながる決勝点をマークした。
「パスを受けた時点で選択肢があれ(シュート)しかなかった。判断がよい結果になってよかった。時間がないなか、早い判断を求められるプレイだった。ゴール前に誰かいないかと思ったが、いなかったのであの選択になった。いつもチームプレイを考えているなかで、シュートやアシストもある。チームプレイをするなか、パスもゴールも狙っている」(レアンドロ)

決して、簡単なプレイではなかった。ゴールに対して半身の態勢だったが、しっかりと身体を振って抑えたコントロールシュートを逆サイドに流し込んでいる。軸足を踏ん張ることができなかったり、身体が伸びたりしていたら、正確なフィニッシュはできなかっただろう。レアンドロの集中力、判断力、プレイ精度の高さが生んだゴールだった。

また、そこに至るまでのつなぎも実にFC東京らしかった。名古屋が守備から攻撃に入ったところで、逆にFC東京の各選手は攻撃から守備に素早く切り換え、狙いどおりにボールを奪った。そして、複数の選手がからむ正確なパスワークで狭いスペースを切り崩し、ゴールへとつなげてみせた。ここぞという場面でチーム全体のゴールへの意識が合わさったもので、勝負どころをキッチリと抑えたゴールだった。長谷川健太監督も「先制点は高いポジションで攻撃から守備に意識を切り替え、そこからのコンビネーションで奪うことができました。素晴らしいゴールだったと思います」と振り返っている。

現在のJリーグは、90分間集中力を保つのが難しいぐらいの環境で試合が行なわれている。しかも、連戦となっている。そうしたなか、FC東京は高い集中力を維持して名古屋のスピードある攻撃を封じ、正確なプレイの連続で決勝点をモノにした。夏場の連戦では、疲労や判断力の低下から普段どおりのプレイや動きができなかったり、多少のミスが出たりは仕方ないこと。そうしたなか、より勝負どころを逃さないプレイをしたチームが勝点を伸ばしていく。この日はFC東京が勝点3を得るに相応しい戦いをしたといえる。

取材・文/飯塚 健司

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