絶対的な守護神である鈴木彩艶に、2025Jリーグ最優秀選手である早川友基。GKには頼もしい2人がいて、大迫敬介、小久保玲央ブライアンなど第3GK候補も複数いる。最終ラインでは板倉滉、冨安健洋、伊藤洋輝、町田浩樹、高井幸大など負傷者が続出したが、渡辺剛、瀬古歩夢、鈴木淳之介、安藤智哉などが台頭してカバーしてきた。W杯に向けて徐々にケガ人が復帰しており、いまでは誰を選出するか悩ましい贅沢なポジションとなっている。
基本布陣[3-4-2-1]のなかで、3バックの組合せはどのようなものが考えられるのか。状況に応じて5バックになることがあるし、4バックという選択肢もある。W杯で勝ち上がることを想定すると、SBができる人選も含めてどんな守備陣を揃えるのが最適なのか考察する。
求められる守備力プラスα 展開に応じた判断が必要
日本代表の基本布陣は[3-4-2-1]で、最終ラインのスタートポジションは3バックとなるのが通常でもう長く4バックではキックオフを迎えていない。ただ、昨年9月10日のアメリカ代表戦では0-1のビハインドで迎えた後半から4バックで戦っている。E-1選手権でも試合途中から4バックとなった試合があった。「今後のオプションとしていくために、先発メンバーで前半は0-0でいきながら、システム変更することをプランとしていた」とはアメリカ代表戦後の森保一監督であり、この考えも現存するなら守備陣にはCBだけではなく、SBもできる選手が数名選ばれると予想される。
板倉滉、冨安健洋、伊藤洋輝、町田浩樹、谷口彰悟、高井幸大、渡辺剛、瀬古歩夢、鈴木淳之介、安藤智哉などがここ数年の日本代表戦で招集されてきたCB候補で、ここにSBができる選手を加えると、菅原由勢、長友佑都、望月ヘンリー海輝、橋岡大樹などの名前があがってくる。
3月下旬のスコットランド代表戦、イングランド代表戦はいろいろな状況が生まれた2試合で、W杯を見据えた戦いができたと考えられる。スコットランド戦は従来の[3-4-2-1]で先発はGK鈴木彩艶、3バックは渡辺、瀬古、伊藤だった。より多くの選手をプレイさせるために後半頭に渡辺→谷口、伊藤→鈴木淳、終盤には瀬古→橋岡という交代が行われ、試合開始時と終了時では3バックの顔ぶれがそっくり入れ代わっていたが、これによってチームが変調するようなことはなかった。
むしろ主導権を握り続けていたが、なかなか得点できずにいた。こうした展開のときに、いかにゴールを奪うか。日本代表は森保監督のもと攻撃的な[3-1-4-2]でゴールを狙いにいっており、84分に左CBを務めていた鈴木淳が思い切って攻撃参加し、PA内で三笘薫からのパスを受けて中央に折り返して伊東純也が奪った決勝点をもたらしている。ベンチの意図を汲んだ鈴木淳の攻撃参加であり、W杯でも同じような状況を迎えるかもしれない。誰が起用されたとしても、CBには展開に応じた柔軟な判断、攻撃参加が求められる。
イングランド代表戦は谷口、渡辺、伊藤の3バックでスタートした。相手はゼロトップで前線に素早くボールを入れてくるプレイは少なかったが、3人とも高い位置に起点を作らせないようにボールホルダーに厳しくマークにいっていた。とくに、1対1の競り合いに強い渡辺は前に勝負する積極的な守備が目立った。視野が広くてプレイエリアが広い谷口、どんなときも冷静でボールコントロールが乱れない伊藤。この3人に限った話ではないが、いまの日本代表は普段から欧州でトップレベルの相手と戦っている。気持ちでもプレイでも圧倒されない選手が揃っているのは、非常に心強い。
このイングランド代表戦は後半になって防戦一方になり、ほぼ5バックにチェンジ。3バックが谷口、渡辺、瀬古。WB(ウイングバック)が右に菅原、左に鈴木淳となった。カタールW杯のクロアチア代表戦もそうだったが、森保監督はWBに守備力を重視してCBもできる選手を起用することがある。5バックにシフトするということは、要は守備を固めるということ。相手の攻撃を跳ね返す身体の強さ、1対1で負けない競り合いの強さといった従来のCBに求められる要素だけではなく、足元の正確性、展開を読む力、複数のポジションができる柔軟性などが日本代表の守備陣には求められている。
多くの候補選手がいる 大事なのはコンディション
鈴木淳は攻守両面に高い能力を持ち、複数のシステム、複数のポジションで機能する Photo/Getty Images
中盤もそうだが、守備陣にも質の高い選手が多い。しかし、一人一人をみればコンディションには差があるし、クラブで置かれた立場も違う。いまはケガをしていても、W杯までに戻ってくる可能性がある選手もいる。ひとまずいま良い状態でプレイできている選手となると、渡辺、谷口、鈴木淳、瀬古、安藤があげられる。
渡辺はフェイエノールトでポジションをつかみ、安定したパフォーマンスを続けている。日本代表でも重要な一戦での先発起用が多く、前述のイングランド代表戦やブラジル代表戦に右のCBで先発し、強いフィジカルを発揮して勝利に貢献している。シント・トロイデンでキャプテンを務める谷口も同様で、左足アキレス腱断裂の大ケガから復帰し、徐々にコンディションをあげていまはクラブでも日本代表でも最終ラインに安定感をもたらしている。
鈴木淳は短期間で日本代表のなかで地位を確立した選手で、ブラジル代表戦ではエステバンの動きを封じ、スコットランド代表戦では途中出場で積極的な攻撃参加で決勝点にからみ、イングランド戦では後半途中から出場して左WBを務めてクリーンシートで試合を終わらせている。コペンハーゲンではCBはもちろん、右SBで先発することもある。4バックへの対応も可能で、ひとりいると何役も任せられる。招集人数に限りが大会では、こうした選手は貴重な戦力となる。
ケガ人が続出した時期に存在感が増したのが瀬古で、日本代表では左右のCBを務め、ル・アーヴルではボランチで稼働する。怖がらずに勇気ある縦パスを出せるタイプで、前線の動きを良くみている。スコットランド代表戦では攻撃的な[3-1-4-2]になったときに鎌田大地がアンカーのポジションに入ったが、W杯では守備的な5バック+3ボランチというシステムで守る時間帯があるかもしれない。そのときに誰がアンカーを務めるか。ル・アーヴルの3ボランチのアンカーでのプレイ経験が豊富な瀬古の存在がクローズアップされてくる。
コンディションが整っているという意味では、ザンクトパウリで厳しい経験を積んでいる安藤智哉がいる。日本代表でのプレイ経験はまだ浅いが、今冬に加入したザンクトパウリでは3バックの真ん中でポジションをつかんでいる。身長190センチで身体のサイズが大きく、しっかりと戦える。3バックの真ん中だけではなく、左右のCBで起用が可能なので汎用性もある。
森保監督はW杯に向けた選手選考で大事なこととして、コンディションをあげている。最終ラインではいまもケガによってプレイできていない選手がいるし、ケガから復帰したがクラブのなかで十分なプレイ時間を得られていない選手もいる。これからの1カ月で各選手のコンディションはまた変わっていくだろう。守備陣の選手選考は、贅沢な悩みだと言える。
ケガ人の状態は気になるが、誰が出てもチーム力は落ちない
SB、CB、WBができる冨安は貴重な戦力だが、アヤックスでのプレイ時間はまだまだ少ない Photo/Getty Images
現在や今後のコンディションが懸念されるのが、伊藤、板倉、冨安、高井、町田だ。ここ数年、断続的に負傷離脱していた伊藤だが、今季途中からバイエルンで先発、途中出場を繰り返していて、日本代表の英国遠征ではスコットランド戦、イングランド戦に続けて先発した。長身で技術力の高い左利きのCBで、バイエルンでは左SBを務めることもある。森保監督の期待度、信頼度が高い選手だが、ブンデスリーガ第29節ザンクトパウリ戦でピッチに座り込んで途中交代している。高い能力を持つのは間違いないが、コンディションの把握が難しい一面もある。
今冬にアヤックス入りした冨安も同様で、英国遠征に招集されていたがハムストリングを痛めたことで辞退となった。エールディビジ第30節ヘラクレス戦で復帰したが、入ったのはボランチのポジションですぐに一発退場となってしまった。万全な状態ならCB、SB、WBでの起用が考えられるが、あまりにもプレイ時間が少ない。伊藤と同じくコンディションを把握しなければならい選手だ。
板倉もケガのため英国遠征にいなかった。プレイエリアの広さ、攻撃につながる精度の高いパスなどを考えると日本代表の最終ラインにいてほしいが、アヤックスで苦しいシーズンを送っている。第30節ヘラクレス戦に先発したが、与えられたポジションはボランチだった。後半途中には冨安と交代で退いており、90分間戦えるコンディションにあるかどうか未知数となっている。
高井、町田も長身で足元の技術力が高く、日本代表でのプレイ経験もあってコンディションが万全なら先発起用に応えられる2人だ。しかし、トッテナムからボルシアMGにローン中の高井は長期離脱から復帰したもののふたたび肉離れで英国遠征には参加できず、今季開幕戦で十字じん帯を断裂したホッフェンハイムの町田はまだ復帰できていない。それでも、高井はここにきてブンデスリーガ第29節のライプツィヒ戦でサブに入り、町田もW杯でのプレイを見据えてリハビリを続けている。残された時間は短いが、両名ともにチャンスがないわけではない。
5バックのときの守備的なWBと4バックのときのSB。どちらもこれまで紹介してきた選手でカバーできるが、どの選手もサイドの専門家ではない。他ポジションとの兼ね合いになるが、サイドのスペシャリストを招集する必要があるときは菅原や望月の出番になるか。
右ハムストリングの肉離れで負傷離脱している長友もWBやSBの候補になるが、どこまでコンディションを整えられるかが問題になってくる。過去、日本代表で長友はCBで先発起用されたこともあり、森保監督から複数のポジションをこなす役割が期待されている。この信頼に応えられるコンディションに戻すことができれば、5回目のW杯出場もあり得る。
最後に、GKに関して。鈴木彩艶がみせる俊敏な反応、落ち着いたキャッチは守備陣に安心感を与えていて、後方を任せることができている。ハイボールの処理が正確で、的確な判断でゴールを飛び出してピンチを救ってみせる。スローイング、キックへの移行も早く、1本のパスでチャンスを作り出すときもある。
第2GKの早川友基も同様の安定感があり、いまの日本代表には2人のハイレベルなGKがいる。さらに、第3GKとなると大迫敬介、小久保玲央ブライアン、谷晃生など複数の候補がいる。どのGKも経験豊富で、フィールドプレイヤーはもちろん、3人を選出するGKに関しても悩まなければならない。
今回名前をあげた守備陣はいずれも実力者だが、26名のリストから外れる選手が必ずいる。あとは最終的に選ばれたコンディションが整っている選手たちがどんなパフォーマンスをみせてくれるかだが、いまの日本代表は2チームどころか3チームを作れるぐらい選手層が厚い。誰が選ばれても不思議はなく、チーム力が落ちることもない。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD316号、4月15日配信の記事より転載