W杯アジア最終予選の突破を2025年3月25日のサウジアラビア戦で決めた日本代表は、E-1選手権を除いて、その後に10試合の公式戦や強化試合を行ってきた。すべての試合を[3-4-2-1]でスタートしているが、中盤2枚、ダブルボランチの組合せはさまざまだった。
森保一監督がこのポジションの選手に求めるのは、攻撃、守備の両面で強度の高いプレイができて、まわりの選手と連係・連動して良い守備からの良い攻撃を実現できること。この「良い守備からの良い攻撃」は日本代表の代名詞になっていて、イングランド戦の決勝点も相手陣内でコール・パーマーからボールを奪ったところから素早いカウンターを仕掛けて奪っている。
試合後に「日本代表の連係は複雑」と語ったのはイングランド代表のトーマス・トゥヘル監督で、このゴールシーンのパスワークも正確で素早く、なおかつ複雑だった。三笘薫→鎌田大地→上田綺世→三笘とボールが渡ったが、イングランド代表の選手たちは後追いするだけだった。守備力が高い、ボール奪取能力が高いなど守備面に特化したひとつの特長があるだけではなく、このときの鎌田のように、攻撃面でも存在感を発揮できるより幅広い能力を持つことが日本代表のボランチには求められる。
さらに、技術的、身体的に高い能力を持つだけではなく、複数の戦術に対応する柔軟性も必要だ。いまの日本代表は対戦相手、試合状況に応じていろいろな戦い方ができている。[3-4-2-1]を基本に、スコットランド戦の後半途中からは攻撃的な[3-1-4-2]になった。逆にイングランド代表戦の後半途中からはほぼ5バックで守備を固めて相手のパワープレイに対処した。ボランチに限った話ではないが、こうしたシステム変更、戦術変更に対応できる能力が必要なのである。
W杯出場決定後の10試合(E-1選手権を除く)で先発起用されたのはわずか5人で、先述の選手たちのうち守田を除いた遠藤、鎌田、田中、佐野海、藤田となっている。ここから2人をセットにして送り出しているが、どれかの組合せが突出して多いということはない。遠藤×鎌田、鎌田×佐野海、田中×佐野海、佐野海×藤田がそれぞれ2試合ずつある。残り2試合は遠藤×佐野海、田中×藤田の組合せとなっている。これはすべて先発の組合せで、試合途中からとなるとまた違ってくる。イングランド代表戦のようにアンカー+インサイドハーフというケースもある。
もうおわかりだと思うが、6つの組合せのなかに佐野海がからむコンビが4つある。他選手が負傷離脱していたという事情もあるが、10試合中、7試合に佐野海は先発している。他4選手との組み合わせがすべてテストされているのは佐野海だけで、この事実がなにを物語っているかは想像に難くない。いわば、この数字に森保監督からの信頼が表れていると言える。
体幹が強く、腰を落としてバチッと相手に身体をぶつけてボールを奪うことができる。それ以前に一つ先のプレイを読む力があり、相手選手の前に出て接触なしでボールを奪ってみせる。さらに、佐野海は強度の高い守備ができるだけではなく、力強く前にボールを運ぶこともできる。常に視野を確保していて、少ないボールタッチ、ときにダイレクトで前方に入れるくさびのパスは正確でスピードがあり、守備から攻撃への素早いトランジションを可能にしている。佐野海にはこうした役割が求められている。
日ごろプレイするマインツは[3-5-2]を基本布陣にしていて、中盤は3ボランチでアンカー+インサイドハーフ2人となっている。佐野海はアンカーを務めることが多いが、インサイドハーフでプレイする試合もある。すなわち、日本代表でも同様の起用が可能で、どちらのシステム、どのポジションにも対応可能だ。佐野海はもはや、日本代表の中盤に欠かせない戦力となっている。