[特集/日本代表の完成形 02]ここがチームの心臓部 精鋭揃った中盤は人選よりも「役割」

 日本代表の中盤守備的なポジションはダブルボランチが基本で、試合状況によってはアンカー+インサイドハーフとなる。つまりは2人、もしくは3人で構成され、このポジションの人選についてはこれまでの公式戦、強化試合からある程度は絞れる。遠藤航、鎌田大地、佐野海舟、守田英正、田中碧、藤田譲瑠チマといったところが候補となるはずで、新たな顔ぶれがこの段階から加わることは予想しづらい。

 キャプテンの遠藤が2月11日のプレミアリーグ第26節サンダーランド戦で左足首を負傷。その後に手術を行い、現在5月下旬の復帰を目指してリハビリ中という事情はあるが、肝となるのは人選よりも役割となる。どんな狙いをもって、誰を出すのか。また、誰と誰の組み合わせが最適解なのか。チームの心臓部ともいえる中盤の事情を探っていきたい。

5人が起用されてきたなか佐野海が存在感を発揮

5人が起用されてきたなか佐野海が存在感を発揮

佐野海は昨年6月の代表復帰以来、常に重要な働きを見せ続けている。イングランド代表戦でも躍動 Photo/Getty Images

 W杯アジア最終予選の突破を2025年3月25日のサウジアラビア戦で決めた日本代表は、E-1選手権を除いて、その後に10試合の公式戦や強化試合を行ってきた。すべての試合を[3-4-2-1]でスタートしているが、中盤2枚、ダブルボランチの組合せはさまざまだった。

 森保一監督がこのポジションの選手に求めるのは、攻撃、守備の両面で強度の高いプレイができて、まわりの選手と連係・連動して良い守備からの良い攻撃を実現できること。この「良い守備からの良い攻撃」は日本代表の代名詞になっていて、イングランド戦の決勝点も相手陣内でコール・パーマーからボールを奪ったところから素早いカウンターを仕掛けて奪っている。

 試合後に「日本代表の連係は複雑」と語ったのはイングランド代表のトーマス・トゥヘル監督で、このゴールシーンのパスワークも正確で素早く、なおかつ複雑だった。三笘薫→鎌田大地→上田綺世→三笘とボールが渡ったが、イングランド代表の選手たちは後追いするだけだった。守備力が高い、ボール奪取能力が高いなど守備面に特化したひとつの特長があるだけではなく、このときの鎌田のように、攻撃面でも存在感を発揮できるより幅広い能力を持つことが日本代表のボランチには求められる。
 さらに、技術的、身体的に高い能力を持つだけではなく、複数の戦術に対応する柔軟性も必要だ。いまの日本代表は対戦相手、試合状況に応じていろいろな戦い方ができている。[3-4-2-1]を基本に、スコットランド戦の後半途中からは攻撃的な[3-1-4-2]になった。逆にイングランド代表戦の後半途中からはほぼ5バックで守備を固めて相手のパワープレイに対処した。ボランチに限った話ではないが、こうしたシステム変更、戦術変更に対応できる能力が必要なのである。

 W杯出場決定後の10試合(E-1選手権を除く)で先発起用されたのはわずか5人で、先述の選手たちのうち守田を除いた遠藤、鎌田、田中、佐野海、藤田となっている。ここから2人をセットにして送り出しているが、どれかの組合せが突出して多いということはない。遠藤×鎌田、鎌田×佐野海、田中×佐野海、佐野海×藤田がそれぞれ2試合ずつある。残り2試合は遠藤×佐野海、田中×藤田の組合せとなっている。これはすべて先発の組合せで、試合途中からとなるとまた違ってくる。イングランド代表戦のようにアンカー+インサイドハーフというケースもある。

 もうおわかりだと思うが、6つの組合せのなかに佐野海がからむコンビが4つある。他選手が負傷離脱していたという事情もあるが、10試合中、7試合に佐野海は先発している。他4選手との組み合わせがすべてテストされているのは佐野海だけで、この事実がなにを物語っているかは想像に難くない。いわば、この数字に森保監督からの信頼が表れていると言える。

 体幹が強く、腰を落としてバチッと相手に身体をぶつけてボールを奪うことができる。それ以前に一つ先のプレイを読む力があり、相手選手の前に出て接触なしでボールを奪ってみせる。さらに、佐野海は強度の高い守備ができるだけではなく、力強く前にボールを運ぶこともできる。常に視野を確保していて、少ないボールタッチ、ときにダイレクトで前方に入れるくさびのパスは正確でスピードがあり、守備から攻撃への素早いトランジションを可能にしている。佐野海にはこうした役割が求められている。

 日ごろプレイするマインツは[3-5-2]を基本布陣にしていて、中盤は3ボランチでアンカー+インサイドハーフ2人となっている。佐野海はアンカーを務めることが多いが、インサイドハーフでプレイする試合もある。すなわち、日本代表でも同様の起用が可能で、どちらのシステム、どのポジションにも対応可能だ。佐野海はもはや、日本代表の中盤に欠かせない戦力となっている。

鎌田は起用方法が豊富 遠藤の復帰は間に合うか

鎌田は起用方法が豊富 遠藤の復帰は間に合うか

スコットランド戦ではアンカーでの働きも見せた鎌田。攻撃的にいくときのオプションとなるか Photo/Getty Images

 この1年間で日本代表が行ってきた強化試合のなかで、より重要だったものはどれか。どの一戦にもそれぞれ目的があり大事だったが、やはりブラジル代表、イングランド代表との2試合は世界トップレベルとの対戦で特別な意味があった。ケガ人の有無、各選手のコンディションなど選手起用の背景にはさまざまな要素が存在するが、奇しくもこの2試合の先発ダブルボランチは同じ組み合わせだった。どちらも、鎌田×佐野海というコンビだった。

 現状、この両名がダブルボランチのファーストチョイスになる。鎌田も複数のシステム、複数のポジションに対応可能で、スコットランド戦の後半途中からは[3-1-4-2]のアンカーを務め、中盤深い位置でボールをさばき、攻撃の基点となっていた。今後、得点がほしいとき、ゴール前を固める相手を崩すときにこの攻撃に振り切ったシステムを採用する可能性がある。アンカーを務める選手にはプレスをかけられてもボールをロストしないキープ力、幅広い視野、正確なロングパスを出せる能力などが求められるが、鎌田はすべてを備えている。

 無論、このシステムはあくまでもオプションで、本来の[3-4-2-1]のダブルボランチでも鎌田の攻守両面での献身的な動きは効いている。ブラジル代表戦、イングランド代表戦ともに、日本代表はハイプレスをかける時間帯、ミドルゾーンにブロックを作る時間帯があった。鎌田×佐野海のコンビはどちらの展開にも柔軟に対応でき、ブラジル代表戦は前半に2点をリードされる展開になりながら、後半立ち上がりから割り切ったハイプレスを敢行し、逆転に成功。その後は低い位置にブロックを作り、ボランチの2人は堅守で相手の攻撃を跳ね返すとともに、カウンターの基点にもなっていた。

 鎌田の所属するクリスタル・パレスも日本代表と同じ[3-4-2-1]を基本にしていて、ボランチだけではなくシャドーでプレイすることもある。状況に応じてハイプレスやミドルゾーンにブロックを作る展開に対応できて、なおかつ複数のシステム、複数のポジションでプレイできる。日本代表がこの1年間で行ってきた10試合中、鎌田は4試合にボランチで先発していて、コンビを組んだのは佐野海、遠藤と2試合ずつだ。攻撃面に豊富なアイデアを持つ鎌田をボランチで先発起用するときは、その動きをカバーできる守備能力の高い選手をパートナーとして起用しているということだ。

 長く日本代表のキャプテンを務めてきた遠藤だが、2月の負傷後に手術を行っている。W杯に間に合わせるために3カ月で復帰が可能な術式を選択しており、遠藤自身は5月下旬の復帰を目指している。国際サッカー連盟は5月11日までに最大55名の予備登録リストを提出することを求めていて、最終26名のリスト提出の締め切りは30日となっている。遠藤はおそらく、55名の予備登録リストには入るはず。

 その先は遠藤の回復具合、コンディションとの兼ね合いになる。日本代表は5月31日に国立競技場でアイスランド代表戦を行うことになっており、ここに遠藤の名前が入ってくるかどうか……。森保監督が「W杯でプレイできる」と判断したなら、遠藤は間違いなく26名に入ってくる。それだけの経験、実績、信頼がある。

 遠藤はW杯出場が決定してから3試合に先発していて、鎌田(2試合)、佐野海(1試合)とのコンビとなっている。遠藤×鎌田であれば両者のストロングポイントがそのまま日本代表のなかでいかんなく発揮されるし、遠藤×佐野海であればミドルゾーンにブロックを作って対応するときに抜群の安定感となりそうだ。勝ち上がれば勝ち上がるほどシビアな戦いになってくるW杯では、間違いなく遠藤の力が必要だ。間に合ってほしいが、誰よりもそう願っているのは遠藤自身だろう。

経験の守田か若さの藤田か 6人体制で臨む可能性も

経験の守田か若さの藤田か 6人体制で臨む可能性も

試合中に修正ができる守田の戦術眼は日本代表の貴重な財産だ Photo/Getty Images

 鎌田×佐野海のダブルボランチがファーストチョイスだとすると、このポジションにはあと何人が必要か。遠藤はコンディション次第。では、田中、藤田についてはどうだろうか。

 田中も複数のシステム、ポジションで稼働するタイプで、森保監督からの信頼も厚い。ゴール前に飛び出すタイミングが絶妙で、フィニッシュの精度も高い。この1年では佐野海とのコンビで2試合、藤田とのコンビで1試合に先発しており、攻撃面での良さを発揮することが求められる組合せとなっている。とくに勝負強さがあり、日本代表でもリーズでも大事な場面で得点している。守備の強度も高く、しっかりとハードワークできてプレイエリアが広い田中だが、ボランチの中ではやや攻撃的な役割を求められていると言えるか。

 藤田については、これまでの4人とは少し違う視点が必要になってくる。高いポテンシャルを持つのは間違いなく、ザンクトパウリではボランチ、インサイドハーフでプレイしており、複数のポジションもこなせる。確実に経験を積んでいるが、日本代表においてこの1年間で先発したのは3試合で、コンビを組んだのは佐野海(2試合)と田中(1試合)となっている。

 佐野海×藤田でスタートしたのはオーストラリア代表戦、アメリカ代表戦で、どちらも主導権を握れず結果的に敗れている。田中×藤田だったのはスコットランド代表戦で、78分までプレイ。得点が生まれたのはメンバー交代、システム変更したあとだった。「われわれは日本代表の勝利と、日本サッカーの発展のために活動している。選手層を厚くしながら最強チームを作ることが、日本サッカー全体の底上げになる。底上げしながら勝つことを考えて活動している」とは森保一監督が定期的に発する言葉で、藤田はこの戦力の底上げを担う選手だと言える。遠藤の復帰、あるいは次に取り上げる守田英正の動向によっては、予備登録にとどまるかもしれない。

 守田は負傷離脱していたこともあって昨年3月のバーレーン代表戦以来、日本代表でプレイしていない。しかし、現在はスポルティングCPで先発出場を続けていて、CL準々決勝のアーセナルとの第1戦でもスタメンを飾っていた。日ごろからシビアな環境で戦っており、良いコンディションをキープしている。「実力はわかっている」(森保監督)との理由で英国遠征には不参加だったが、W杯で勝ち上がることを考えると守田の経験値は日本代表にとってプラスでしかない。さらに試合のなかで流れを読み、的確に修正を行う戦術眼に優れていることが守田の特長として挙げられる。どうにも思い通りに試合を運べないとき、相手が奇策に出てきたとき、守田の経験と戦術眼が活きることになる。

 ファーストチョイスの鎌田、佐野海に、計算できる田中。ボランチのポジションでこの3人は外せないだろう。遠藤は本人のコンディション次第。あとは今大会での勝利を追求するなら守田の経験&実績。日本サッカー全体の底上げを考えるなら、若い藤田という選択になるか。あるいは、他ポジションとの兼ね合いでうまく調整できれば、6人とも北中米W杯に臨むことになる。負担がかかるポジションであり各選手がインサイドハーフでも稼働できることを考慮すると、それも十分にあり得る。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD316号、4月15日配信の記事より転載

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