[名良橋晃]U-20女子がW杯準優勝 WEリーグ任せではなくJFAは心からサポートを!

絶対に諦めない姿に、ハポン! の声援が飛ぶ

絶対に諦めない姿に、ハポン! の声援が飛ぶ

驚異的な粘りをみせて準優勝となった日本は、フェプレイ賞も受賞した photo/Getty Images

 コスタリカで開催されたU-20女子W杯に臨んだU-20日本女子代表が、準優勝で大会を終えました。出発前にコロナ陽性者が出るなど困難がありましたが、見事に乗り越えてつかんだ結果であり、立派な成績です。

 テレビ中継を通して観戦させていただきましたが、とにかく引き付けられました。各選手の最後まで絶対に諦めない姿勢が、こちらに伝わってきました。2連覇はなりませんでしたが、繰り返しですみませんが本当に素晴らしい結果でした。

 過密日程のグループステージでは池田太監督がターンオーバーを選択し、福田史織、野田にな、大場朱羽のGK3人をそれぞれ起用するなど、ほとんどすべての選手をピッチに送り出して貴重な経験を積ませました。そうしたなか、一試合一試合、選手とチームが成長することによって出場国唯一の3戦全勝で勝ち上がっています。
 決勝トーナメントではフランス戦、ブラジル戦と苦しい戦いが続きました。とくにフランス戦は、先制され、追いつき、追い越し、追いつかれ、追い抜かれるという居ても立ってもいられない展開となりました。粘り強く、絶対に諦めずに戦う日本の姿勢に、コスタリカの人たちも思わず「ハポン! ハポン!」と応援の声をあげていました。

 延長後半の110分に勝ち越され、終了間際を迎えたときはもうダメかと思いました。しかし、最後まで戦うことが大事だと選手たちは教えてくれました。おそらくラストプレイだったFKからの流れでVARとなり、土壇場でPKを得ました。これを藤野あおばがきっちりと決め、3-3としてPK戦に持ち込みました。そして、PK戦ではGK大場朱羽が1本止め、キッカー全員が決めてみせました。

 ブラジル戦も苦しい時間が続きましたが、84分に浜野まいかが決勝点をもぎ取りました。いよいよ迎えたスペインとの決勝戦は、前回2018年フランス大会と同じカードでした。4年前は日本が3-1で勝利しており、それもあってスペインはリベンジに燃えていて、30分までに3点をリードされる展開に。

 日本は47分に天野紗が1点を返しましたが、反撃はここまで。1-3で敗れ、世界一の座をスペインに譲りました。それにしても、スペインの前線は強烈でした。そうした部分で決勝戦は少し差が出たのかなと思います。

 いずれにせよ、私は感動させてもらいました。今回の経験を糧に、選手たちがどう成長していくかとても楽しみです。各クラブでしっかりプレイし、同じ池田太監督が指揮するなでしこジャパン入りを目指してほしいです。

浜野が大会最優秀選手賞に 長江はキャプテンシーがあった

浜野が大会最優秀選手賞に 長江はキャプテンシーがあった

技術力が高く、走れる。浜野はチームに欠かせない存在だった photo/Getty Images

 選手に目を向ければ、絶大な存在感があった浜野まいかがゴールデンボール(大会最優秀選手)とシルバーブーツ(得点ランキング2位の4得点)を受賞しました。なんでもできる器用さがあり、得点感覚にも優れています。去年、C大阪堺レディースからINAC神戸レオネッサに移籍した選手で、左サイドバックの小山史乃観とは小さいころから一緒だそうです。仲の良い2人が代表でも一緒というのはなんかいいですね。

 表彰でいけば、山本柚月は3得点でブロンズブーツとなりました。また、日本はチームとしてフェアプレイ賞を受賞しています。

 キャプテンを務めた長江伊吹は小柄でスピードがあり、対人プレイに強かったです。守備でよく声が出ていて、キャプテンシーがあるなと感じました。苦しい台所事情をよくまとめていました。もともとINAC神戸の選手ですが、長野パルセイロに移籍して今シーズンを迎えます。WEリーグでのパフォーマンスが期待されます。

 大山愛笑は攻撃、守備の両面で存在が効いていたアンカーで、安定感がありました。ときに攻撃面でボールを散らす展開力があり、うまく組み立てていました。また、右サイドバックの杉澤海星、左サイドバックの小山史乃観も攻撃、守備どちらの能力も高く、積極的に上下動していました。GK大場朱羽もプレイエリアが広く、その動きに気持ちを引き寄せられました。

 選手個々が自分の持つこうした特長を発揮しながら、各選手がよい距離感をキープしてパスをつないで崩す。U-20女子代表は、こうしたサッカーをしていました。これはなでしこジャパンにもつながるスタイルで、今回のチームから来年の女子W杯に出場する選手が出てくるかもしれません。というか、出てきてほしいですね。

 そのためには、各選手が今度はそれぞれのクラブで結果を出さなければいけません。大場朱羽のようにアメリカの大学でプレイする選手もいますが、多くはWEリーグが戦いの場となります。今季のWEリーグは10月下旬スタートです。ここをどれだけ活性化できるかが問題で、U-20代表の準優勝と切り離して考えてしまうのはもったいないです。

 男子もそうですが、選手の強化に関して、日本サッカー協会(JFA)がクラブに丸投げのようなカタチで任せているのは少し違うと思います。クラブだけだと限界があります。目的を果たさないといけないのはJFAです。あとはWEリーグでお願いしますではなく、もっとできることがあると思います。心からサポートしてほしいです。

構成/飯塚 健司

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)273号、9月15日配信の記事より転載

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