F・マリノスの強みはターンオーバーできる選手層 チームの大崩れを防ぐ“4人の多様性を持つトリコロールの戦士”

ユーティリティを体現する岩田智輝 photo/Getty images

ACLはターンオーバーで乗り切った

ケヴィン・マスカット体制2季目となっている今季の横浜F・マリノス。リーグ戦では3位、ACLではグループステージ突破を決めており、シーズン序盤から好調ぶりを披露している。

そんなF・マリノスの強みは1チームで2チーム分の戦力を持っている選手層の厚さだ。大幅なターンオーバーをすることで今季は有名であり、4月2日のFC東京戦から4月6日のサンフレッチェ広島戦では約半数の選手が入れ替わっていた。広島戦では残念な結果となったが、ACLではターンオーバーの強みを十分に生かせており、グループステージ突破を決めている。

ターンオーバーを取り入れる強みとして挙げられるのは、その試合で好調なフレッシュな選手をチョイスして選ぶことができることだ。実力順で並べるのもいいが、選手によって好不調の波はあり、実力通りにいかない展開は多い。また、新しい並びを試すことで選手のアドリブ力も上がり、成長につながるだろう。

だが、このターンオーバーは思ったよりも難しく、選手を変えすぎれば広島戦のように全く別のチームになってしまい、チーム全体で機能不全に陥ることがある。これがターンオーバーの弱みである。

それを解消すべく今のF・マリノスで重宝されているのが、ユーティリティ性を持った選手である。特に岩田智輝の活躍は素晴らしい。中盤に加え、センターバックでもプレイ可能な選手で、リーグ戦、ACL合わせて守護神の高丘陽平に続くプレイタイムを確保している。ビルドアップ、守備対応と攻守両面で輝ける人物でF・マリノスの最重要人物は岩田だといえる。

最終ラインには岩田のような多様性を持った選手は多い。サイドバックの小池龍太と角田涼太郎である。小池は右サイドバックが本職だが、反対の左サイドバックに加え中盤でもプレイ可能である。プレイタイムは高丘、岩田に続く3番目である。

角田はセンターバックが本職の選手で、ACLを通じて左サイドバックで起用されることが増えた。今季本格的に使われ始めた若手で、速さ、強さ、賢さの三拍子を備える逸材である。チアゴ・マルチンスの抜けた穴を埋めたのは新加入のエドゥアルドではなくこの角田であり、センターバックの序列はすでにトップだ。2-1と勝利した直近の名古屋グランパス戦では終盤に永戸勝也と代わって左サイドバックに入った。この試合では永戸は相手のエースであるマテウスと何度も対峙しており、疲弊していたところにフレッシュな角田を入れ見事勝利を掴んでいる。

前線では西村拓真が面白い働きを見せてくれている。ベガルタ仙台時代はセンターフォワードで起用されることの多かった同選手だが、F・マリノスではトップ下での起用が目立つ。マルコス・ジュニオールほどテクニカルな選手ではないが、豊富なスタミナを武器にライン間で顔を出し、受け手となってビルドアップを活性化させる。そこでパスを捌きながら隙を見て推進力のあるドリブルで攻撃を前進させることもでき、プレイの幅が広い選手だ。決定力も高く、ここまでは4ゴールを記録している。

大幅なターンオーバーを武器にその試合で好調な選手を選び、その時に最も強いスカッドを組み立てるマスカット監督。その際大崩れしないように複数のポジションをこなせる選手を保有しており、今季のF・マリノスは失速せずにシーズンを走り切ることができそうだ。

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