初戦敗戦も怒涛の6連勝でカタール行きが決定 「無策」と批判された森保一監督の評価はそれで正しかったのか

批判の多かった森保監督だが、彼の采配がなければここまで勝てていない photo/Getty images

大仕事をやってのけた

グループB最大のライバルであるオーストラリア代表を2-0で破り、ワールドカップ・カタール大会への出場権を獲得した日本代表。これで1998年に開催されたフランス大会から続いて7大会連続で日本代表はワールドカップに出場することになる。

29日にベトナム戦は控えているものの、ここまでの最終予選を総括すると、多くのドラマがあった。アジア最終予選初戦オマーン戦ではまさかの敗戦スタートに。日本側が準備できる時間が少なく、反対にオマーンが長い時間をかけて日本戦に備えていたという背景はあるが、負けると思って見ていたサポーターは少ないだろう。そして、極めつけは3節のサウジアラビア戦だ。0-0と拮抗した中で柴崎岳のミスから失点を喫し、敗れてしまった。アジア最終予選3試合を終えて1勝2敗と最悪なスタートであり、代表監督である森保一監督の解任を要求する声もこの時期は大きかった。

それでも、10月のホーム、オーストラリア戦でそこまでの批判を跳ね返す采配を見せる。[4-3-3]の採用、そして田中碧の抜擢だ。これが大当たりとなり、田中はその試合で先制点を決め、今では欠かせない中盤戦士としてチームを支えている。さらに抜擢は続く。11月の2回目となるオマーン戦では前半で10番南野拓実を諦め、三笘薫を投入した。田中同様にこれまでフル代表での経験のなかった選手だが、オーストラリア戦でも見せた止められないドリブルでオマーン守備陣を破壊し、伊東純也のゴールをお膳立てしている。森保監督の采配が大当たりというわけだ。そして、今回のオーストラリア戦では巧みな交代術を駆使し、2-0と完璧な勝利を収めた。ここまで「無策」だと批判されがちな森保監督だが、田中、三笘ら若手の抜擢、チームにあった適切なシステムの採用、試合を決める交代策と存分に手腕を発揮し、怒涛の6連勝でカタール行きを決めている。

しかし、カタール大会までに改善する問題はいつくかある。一つはメンバーの固定だ。森保ジャパンは今回の冨安健洋らのように、主力が不在にならない限りはメンバーを変更しない傾向にある。それでもここまで勝利を積み重ねているのだが、本大会では基本的に中3日でグループステージを3試合こなすことになる。これはアジア最終予選では体験できなかった過密日程だ。さらに対戦相手はアジアレベルではなく、欧州や南米の強豪国と当たることになる。そうなれば、試合の強度は上がり、試合間の休みが短くなれば選手に疲労は溜まっていく。東京五輪では夏の暑さと過密日程が重なり、苦しい戦いを強いられた。幸い、カタールの11月は比較的過ごしやすいシーズンのようだが、ターンオーバーをしなければ東京五輪のようなガス欠は避けられない。そのためには選手起用のバリエーションの増加や[4-3-3]以外のシステムの採用も検討する必要がありそうだ。

開幕からの3戦は先の見えない暗闇だったが、その後は6連勝と一気にカタール行きを掴んだ森保ジャパン。選手たちの躍動もあるが、森保監督の手腕は光っており、今後はカタール大会のような短期決戦でも戦えるようなアップデートに期待したい。

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