[CL激闘必至の3番勝負 03]絶好調の伏兵が、いつもCLを盛り上げる 優勝も狙えるダークホースはどっちだ?

 欧州最強を決めるUEFAチャンピオンズリーグだが、見逃せないのはジャイアントキリングを起こすダークホースの存在である。19-20シーズンにはライプツィヒがアトレティコ・マドリードを、リヨンがマンチェスター・シティをそれぞれ下してベスト4へ。18-19シーズンにも同じくベスト4躍進を果たしたアヤックスの存在があり、こうしたチームがいつもCLに驚きと興奮をもたらしてきた。そして今シーズンは、アヤックスとベンフィカがラウンド16で対戦。今季リーグ最高の得点数を叩き出す両者の対決の結果は、大会の行方を占うといっても過言ではなく、欧州の懐の深さを見せつけるような熱い一戦が期待できる。

アヤックスの恐るべき攻撃力 GS全勝はダテじゃない

アヤックスの恐るべき攻撃力 GS全勝はダテじゃない

GS全試合でゴールを決め、17-18シーズンにC・ロナウドが打ち立てた連続ゴール記録に並んだアレ photo/Getty Images

 どちらもチャンピオンズカップ時代に欧州制覇の経験があり、時代が違えば決勝で実現してもおかしくない好カードである。こうした“伏兵”がメガクラブをなぎ倒して勝ち上がると、大会はやはり盛り上がる。ベンフィカは2015-16に準々決勝まで進出している。アヤックスは2018-19に準決勝まで進み、あと一歩のところで決勝進出を逃している。ラウンド16を勝ち上がったほうが、勢いのままに上位進出を果たしそうな予感が漂っている。

 就任5年目を迎えたエリック・テン・ハーグ監督が率いるアヤックスは、ハイプレス、ショートカウンターを駆使した攻撃的なサッカーでグループステージの主役となった。ドルトムント、スポルティング、ベシクタシュという実力者、曲者と戦って6戦全勝である。しかも、すべての試合で複数得点している。

 最終ラインから前線まで連動し、高いポジションからプレスをかけてボールを奪い、素早くフィニッシュにつなげる。テン・ハーグ監督はかつてバイエルンBで監督(2013-15)を務めていたが、このときトップの監督を務めていたのがペップ・グアルディオラである。その後、ユトレヒトを経由して2017-18にアヤックスの指揮官になったが、主力を引き抜かれるなどしてもブレずに継続性のあるチーム作りを進めてきた。結果、意思の疎通が取れた各選手が攻守に連動するモダンなチームに仕上がっている。

 システムは[4-3-3]とも[4-2-3-1]とも表現できるカタチで、その立ち位置は流動的というか、状況に応じて可変する。とくに、ライアン・フラーフェンベルフ、エドソン・アルバレス、ステフェン・ベルハイス(デイヴィ・クラーセン)で形成する中盤の真ん中はアンカー+インサイドハーフになったり、ダブルボランチ+トップ下になったりする。両サイドのアントニー、ドゥシャン・タディッチもポジション取りが巧みで、ライン形成によっては[4-1-4-1]のようにもなる。

 また、最終ラインの選手も積極的に攻撃参加する。右サイドのアントニーがワイドに開いていれば、右SBのヌセア・マズラウィがインナーラップで攻撃参加し、スペースを有効に使う。内側からアントニーを追い越すのは通常の光景となっている。

 CBも攻撃の意識が高く、グループリーグ第6節スポルティング戦では象徴的なゴールが生まれている。1点リードで迎えた58分、CBペール・スフールスが相手陣内に約10メートル入ったところでカウンターを潰し、マイボールにする。するとそのままの勢いで前方へ運び、左サイドへパスを出す。フリーで受けたダビド・ネレスが決め、リードを広げてみせた。CBがボールを奪ってから2人で奪ったゴールで、スポルティングには為すすべがなかった。

 ちなみに、この試合の2点目もアヤックスらしいゴールだった。ビルドアップしようとする相手DFに対して、ペナルティエリアでセバスティアン・アレ、ベルハイス、アントニーがプレスをかける。その背後にはフラーフェンベルフ、ネレスの姿があり、パスコースをみつけられない相手DFが苦し紛れのパスを出す。これをアントニーがカットし、得意の左足で難なくゴールネットを揺らした。

 アヤックスの得点にはこのアントニーがからむことが多く、グループリーグ6試合で2得点4アシストとなっている。アレ(10得点2アシスト)はもちろん、ベルハイス、タディッチも決定力があるし、その後方には“ポスト・ポグバ”と呼ばれる下部組織出身の生え抜きであるフラーフェンベルフがいる。戦術が浸透し、各ポジションに質の高い選手がいる。ここまでのアヤックスは、欧州王者になっても不思議ではない戦いをみせている。

監督交代はプラスに転じるか サイドを封じれば勝機あり

監督交代はプラスに転じるか サイドを封じれば勝機あり

ラファ・シウバは切り札的な存在。リーグではすでに7ゴール13アシストの数字を記録している photo/Getty Images

 ベンフィカが準々決勝に進出するためには、このアヤックスの攻撃をまずは封じなければならない。ただ、プリメイラ・リーガで自分たち(3位)より上位にいるスポルティング(2位)に2試合合計9-3で勝っている相手で、一筋縄ではいかないミッションとなる。

 年末にはジョルジェ・ジェズス監督が解任され、ベンフィカBを率いていたネウソン・ベリッシモが今シーズン終了まで暫定監督を務めることが発表されている。CLでラウンド16進出を決めたなか、マヌエル・ルイ・コスタ会長が下したこの決断が吉と出るか凶と出るか興味深い。解任理由は選手との確執であり、不満が解消されてストレスフリーになったならベンフィカはチーム状態が上向くはずである。

 グループリーグでは[3-4-2-1][3-4-3]などおもに3バックで戦い、2勝2分2敗だった。バルセロナ、ディナモ・キエフとは1勝1分。圧巻だったの第2節バルセロナとのホームゲームで、立ち上がり3分にダルウィン・ヌニェスが先制点を奪って主導権を握る。その後はポゼッションを許したが、当時のバルセロナは恐れるに足らないチーム状態で、気持ちよく試合を展開。後半に2点を追加して3-0で快勝している。

 この一戦も含めて、バルセロナ、ディナモ・キエフとの4試合では5得点0失点と守備の堅さをみせた。ニコラス・オタメンディ、アンドレ・アルメイダ、ヤン・ヴェルトンゲン、ルーカス・ベリッシモなどで形成した3バックは平均年齢が高く、経験から来る安定感、駆け引きのうまさがあった。

 中盤から前線ではボランチのジョアン・マリオ、ユリアン・ヴァイグルが相手ボールを執拗に追いかけて刈り取り、ヌニェス、ラファ・シウバ、ジウベルト、エヴェルトン、ピッツィ、ロマン・ヤレムチェクなどが早いリズムで連携しつつ、ときに個人技で相手の意表を突く。新たに就任したべリッシモ監督がベンフィカBからの昇格であることを考えると、3バックをベースとした統率の取れたアグレッシブなサッカーが変わることはないか。

 なかでもキーマンとなりそうなのがラファ・シウバだ。昨夏のEUROでもポルトガル代表の切り札的な役割を担って複数のゴールに関与していたが、その突破力は一級品。丁寧な守備からボールを繋いで彼のドリブルを活かせる展開に持ち込めれば、ベンフィカのペースとなる。

 ただ、バイエルンには2試合合計2-9という完敗を喫している。スピードのある相手、より強い圧力をかけてくる相手と対峙したときに一抹の不安がある。アヤックスは前線からのプレスに強度があり、中途半端につなごうとすると餌食になる。慌てずに、落ち着いて、しかし素早くビルドアップすることが試合を進めるうえで重要になる。

 ベンフィカが次にやらなければいけないのが、相手の右サイドを封じること。アントニー、マズラウィに対して、最終ラインや中盤の左サイドでの出場が想定されるフェルトンゲン、アレックス・グリマルドをはじめ、ボランチもそうだし、前線のヌニェス、エヴェルトンといった選手にも献身的な守備が求められる。そして、アヤックスはラインが高い。必然、最終ラインの裏にはスペースがある。ハイプレスをかわし、前線に素早く、正確なパスを出せれば、あっけなくチャンスになる可能性はある。

 いずれにせよ、グループリーグの勝ち上がりから判断するとテン・ハーグ監督のもとチーム力を高めてきたアヤックスが有利だと考えられる。ベンフィカは年末の監督交代がどう転ぶかわからない。年明けの第17節パソス・フェレイラ戦は[4-4-2]で戦っており、3バックと併用するのか、4バックを突き詰めるのか見極めていかなければならない。継続性のある監督交代であれば、チーム力は維持される。むしろ、ストレスがなくなったことで選手たちはよりイキイキするだろう。逆に、新たなストレスを生むようだと、CLのラウンド16を勝ち上がるのは難しくなる。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD265号、1月15日配信の記事より転載

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