堂安、久保、安部裕葵、そして本田圭佑 東京五輪延期はプラス要素にできる

世代を代表する堂安 photo/Getty Images

今夏の開催ならメダルは厳しかった

アスリートにとって、新型コロナウイルスの影響で今夏開催予定だった東京五輪が延期される影響は大きい。2020年夏に照準を合わせて調整を進めていた各競技の選手たちは、来年へ向けて新たな準備をしていかなければならない。

マイナスな部分が多いように見えるが、サッカー男子日本代表の場合はどうだろうか。来年に延期されることをポジティブに捉えることもできるのではないか。

何より今はU-23日本代表の主力組が所属クラブで苦戦している。この世代の主役の1人でもあるMF堂安律は、昨夏に移籍したオランダの名門・PSVで出番を確保できていない。予定通り今夏に東京五輪が開催されていた場合、堂安は試合勘を失ったまま五輪本番に臨む可能性もあった。これは何としても避けねばならないシナリオだ。
バルセロナBに移籍したMF安部裕葵も現在は負傷離脱中で、今夏の五輪には間に合わなかった可能性がある。しかし来年ならば怪我も完治し、2列目のキープレイヤーとしてチームに合流できることだろう。

すでにA代表でもプレイする久保 photo/Getty Images

レアル・マドリードからマジョルカにレンタル移籍しているMF久保建英はリーガ・エスパニョーラで徐々に調子を上げていたが、久保の場合はまだ18歳だ。来季どうなるかは分からないが、19歳で東京五輪を迎える方が選手として成熟している可能性が高い。来季もリーガの舞台で技を磨けば、よりレベルアップした久保を東京の地で見ることができるはずだ。

スコットランド・ハーツで立場が怪しいものとなっていたMF食野亮太郎、怪我で離脱していた期間があったベルギー・アントワープ所属MF三好康児にとっても来年への延期は悪い話ではない。現時点で23歳の三好の場合は年齢制限が気になるところだが、来年の東京五輪でも1997年生まれ以降の選手に出場資格が与えられるならば三好は大きな戦力となる。

オーバーエイジ組にもポジティブな影響が期待できる。これまではブレーメンFW大迫勇也、マルセイユDF酒井宏樹、デポルティーボMF柴崎岳らが理想的なオーバーエイジ候補になると言われていたが、大迫と酒井は所属クラブで苦戦を強いられている。大迫が所属するブレーメンは残留争いに巻き込まれており、大迫のパフォーマンスも不十分と批判を受けている。

酒井は出番が減少傾向にあることに加え、今月17日には右足首の手術に踏み切っている。今夏よりは来年の方がコンディションが安定している可能性は高いのではないか。

今冬にブラジルのボタフォゴへ移籍したMF本田圭佑にもチャンスが出てきた。本田はまだボタフォゴでデビューしたばかりで、東京五輪までは4ヶ月程度しかアピールの時間がなかった。今回の延期でアピールの時間が増えることになり、よりオーバーエイジとしての招集が狙いやすくなったと言える。来年の6月で35歳になるのは気になるところだが、1年間ボタフォゴできっちりアピールできれば問題ない。本田の最終目標の1つでもある東京五輪出場は、延期によって逆に可能性が高くなったはずだ。

チームの準備にも時間をかけたい。昨年はコロンビア代表との親善試合を落とし、今年に入ってからもU-23アジア選手権でグループステージ敗退の屈辱を味わっている。選手選考もそうだが、この1年をかけてチームの形をもう1度見つめ直すべきだ。今はその時間が手に入ったと前向きに捉えるしかない。

日本代表が掲げるは東京五輪でのメダル獲得だが、おそらく今夏に予定通り開催されていれば目標達成は難しかった。この1年間で選手とチームがどこまで上積みができるのか。出場資格など気になるところはあるものの、サッカー男子日本代表にとって悪い話ばかりではないはずだ。

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