今季もまた、数多くの若者が新たなクラブへと移籍を果たした。なかでも前所属クラブで名を挙げ、世界中から熱視線を浴びながらビッグクラブへ移籍した選手にかかる期待は大きい。年齢など関係なく、チームの中心としてすぐ王座に就くことを求められる存在。ヤング・キングとでも言うべきだろうか。たとえば、ユヴェントスに加入したマタイス・デ・リフト。イタリア王者が彼の獲得に要した移籍金は7500万ユーロ(約91億円)とも言われている。存在感はその価格からも推し量ることができるだろう。近い将来、シーンの中心に君臨するであろう俊英たち。彼らのプレイは、強豪たちをさらなる高みへ導く可能性を秘めている。
不世出の大エース、ロナウドが去って2年、世代交代が迫られる「白い巨人」レアル・マドリードが新たな得点源として白羽の矢を立てたのが、セルビア代表のルカ・ヨビッチ。フランクフルトに所属した昨季、ブンデスリーガ17得点、ヨーロッパリーグ10得点と大ブレイクを果たしたストライカーだ。
目を見張るテクニックはないが、ボックスの中でめっぽう強い本格派センターフォワード。左右からのクロスを確実に収め、間髪入れずにフィニッシュする。身体をきれいに折りたたんだジャンピングボレーは、一見の価値がある。
常勝軍団レアル・マドリードのストライカーは、並の精神では務められない大役。したがって今季は、ベンゼマの2番手という序列からのスタートが予想される。
ただし、スタメン浮上の可能性は十分に考えられる。得点感覚を開花させたヨビッチは、精神的にタフなことでも知られるからだ。近い将来、ロナウドの不在を忘れさせるのは、この21歳かもしれない。
本格派のセンターフォワードを補強したレアル・マドリードに対して、ライバルのアトレティコ・マドリードは「ポルトガルの神童」ジョアン・フェリックスを獲得した。
ルイ・コスタ、フィーゴ、ロナウドと、ポルトガルはテクニックに優れたタレントを輩出してきたが、フェリックスもその流れを汲む。
多彩なアイデアとテクニックを持ち、ボールを持つと前へ前へと果敢に仕掛けていく。面白いように敵を翻弄するプレイスタイルは、駆け出しのころのロナウドを彷彿とさせる。
突破力ばかりではない。決定力に優れ、ヘディングも強い。昨季は国内リーグ15ゴールを叩き出し、ベンフィカのリーグ制覇に貢献。ヨーロッパリーグのフランクフルト戦では、ハットトリックを達成した。
爽やかなルックスも含めて、スター性は抜群。グリーズマンがつけていた背番号7を継承した若者が、アトレティコの新たな王様になる日は近い。
チェルシーにとって、今季はいつになく厳しいシーズンになるかもしれない。FIFAの規定に違反したとして、2度の移籍市場における補強が禁じられたからだ。
補強ができない上に、アザールとダビド・ルイスという攻守の主軸が流出。開幕戦では、マンチェスター・ユナイテッドに0-4と大敗するという悪夢の滑り出しとなった。
前途多難なチェルシーにとって、数少ない希望の灯が貸出先のドルトムントから帰還したクリスティアン・プリシッチ。クロアチア人の血を引くアメリカ代表の20歳だ。
インドアサッカーのプロ選手だった父、サッカー経験者の母の間に生まれた彼の最大の強みはドリブル。スラロームを思わせるドリブルで、次々と敵を置き去りにする。
ファーストタッチからの急加速と予測不能なターンで、敵を翻弄。積極果敢に仕掛ける姿勢は、イングランドのファンのツボにはまるかもしれない。
左右両サイドに加えてトップ下と、多くのポジションに対応する利便性も魅力。右サイドではタッチライン沿いを巧みなドリブルで駆け上がり、チャンスメイク。左サイドでは内側に切れ込んでのフィニッシュ。トップ下では中央突破からの絶妙なラストパスを繰り出す。
どのポジションでも、ゴールへの道を切り拓くプリシッチ。窮地のチェルシーを救うことができるだろうか。