[水沼貴史の欧蹴爛漫014]開幕4連勝のチェルシー サッリ就任で何が変わった?

コンテ戦術の弊害とは?

コンテ戦術の弊害とは?

サッリ新監督のもと、チェルシーは好調を維持している photo/Getty Images

水沼貴史です。世界中のサッカーフリークを熱狂させたロシアW杯もあっという間に終わり、2018-2019シーズンの欧州主要リーグが開幕しました。大型補強が功を奏して順調に勝ち点を積み重ねているクラブ、逆に補強の失敗で波に乗りきれていないクラブなど、序盤戦で早くも各クラブの明暗が分かれていますね。私はプレミアリーグ開幕から4連勝と、好調を維持しているチェルシーに注目しています。今夏に監督がアントニオ・コンテからマウリツィオ・サッリ(前ナポリ)に替わったことで、チェルシーの選手たちにどのような変化が見られたのか。ふたりが採用している戦術の違いにふれながら見てみましょう。

前任のコンテ監督は[3-4-2-1](ウイングバック帰陣時は[5-4-1])という、守備重視の布陣を採用していました。自陣の深い所で守備ブロックを敷き、ボールを奪ったら最前線を目掛けてロングボールを蹴るというのが基本的な攻撃パターンでした。ある程度のリスクを覚悟で攻撃に人数をかけるというよりも、相手のカウンターに備えて自陣に一定数の人を残し、なるべく少ない手数で攻撃を完結させようという思いが強かったのではないでしょうか。守備面ではある程度計算がたつ反面、攻撃時の制約が多く、選手たちが窮屈そうにしている感が否めなかった昨季のチェルシーですが、サッリ新監督は前任者とは異なる戦術で各選手の特長を引き出しています。ここからはサッリ監督が志向する戦術のキーマンとなっている選手についてお話ししましょう。

アザールとの好連係が光るアロンソ

アザールとの好連係が光るアロンソ

今季も左サイドから好機を創出しているM・アロンソ photo/Getty Images

まず一人目が、[4-3-3]の布陣の左サイドバックでプレイしている、マルコス・アロンソ(スペイン代表)です。昨季はウイングバックとしてプレイしていましたが、攻撃時もある程度自陣に人を残すという前任者の方針もあってか、敵陣深くまで侵入した回数は今季ほど多くはありませんでした。サイドバックに常に高い位置をとること、そして果敢な攻め上がりを求めるサッリ監督のもとで、今季は持ち前の攻撃センスを遺憾なく発揮しています。センターバックのふたり(ダビド・ルイス、アントニオ・リュディガー)や、アンカーのジョルジーニョから始まるビルドアップが安定していることも、アロンソが心おきなく高い位置をとれる理由でしょう。

また、左ウイングFWのエデン・アザール(ベルギー代表)との関係も、非常に整備されていますね。アロンソが攻め上がっているシーンをよく見ると、アザールがタッチライン際でボールを持った際はインナーラップ(ボールホルダーを内側から追い越す)、アザールがカットインした時はタッチライン際からオーバーラップするなど、走るコースを使い分けていることが分かります。アロンソのこの動きによりアザールのプレイの選択肢が広がり、相手DFにとっては読みにくい攻撃になると、私は考えています。今後チェルシーの試合をご覧になる際は、アロンソがアザールをどのように追い越すかに注目してみて下さい。彼の動き出しの上手さが分かるはずです。

攻撃面のタスクが増えたカンテ 今季は開幕戦で得点

攻撃面のタスクが増えたカンテ 今季は開幕戦で得点

今季は攻撃参加の機会が増えているカンテ photo/Getty Images

サッリ監督就任以降、インサイドハーフでプレイしているエンゴロ・カンテ(フランス代表)も、新境地を開きつつある一人です。コンテ前監督のもとでは主にボランチで起用されており、中盤の低い位置での守備がクローズアップされがちでしたが、今季はベースポジションが一列上がったことにより、敵陣ペナルティエリア内でフィニッシュに絡む機会が増えました。プレミアリーグの開幕戦(ハダースフィールド戦)で早速ゴールを決めたこともあり、カンテのプレイスタイルの変化は私にとって新鮮に映りましたが、彼が攻め上がっている最中にボールを失った場合、チームとして自陣の危険なスペースを埋めきれないという難点があります。先月18日に行われたプレミアリーグ第2節(アーセナル戦)では攻め上がったサイドバックの背後のスペースを突かれ、相手のマイナスのクロスから失点を重ねています。サイドバックの背後のスペースは両センターバックがスライドして埋める、アンカーのジョルジーニョが攻め上がった際はカンテが帰陣しておくなど、優勝争いに加わるにはより細かく守備の約束ごとを定める必要があるでしょう。

現時点で守備に課題を残しているサッリ監督ですが、就任から2か月程度でチェルシーに連動性のある攻撃を落とし込み、開幕ダッシュに成功したことは称賛されるべきだと思います。個人的には、同じくポゼッションサッカーを掲げるマンチェスター・シティとの撃ち合いが楽しみです。果たして、どちらがポゼッションで上回るのでしょうか。今季のプレミアリーグも、目が離せなくなりそうです。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
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