大型FWがサッカーの流れを再び変える ペップ流を破壊する新時代の”巨人”たち

ルカクに対応するセビージャ守備陣 photo/Getty Images

大型FWは動きが鈍い、技術がないのイメージはもう古い

「グアルディオラ流が守備を破壊した」とは、ユヴェントスDFジョルジョ・キエッリーニの言葉だ。グアルディオラは最終ラインの選手にも攻撃の出発点となるよう正確なパス能力を求め、近年は足下の技術が高くなければ名DFとは評価されなくなった。しかしその一方で、キエッリーニが言うように相手FWへのマークなど肝心な守備能力が備わっていないDFも増えている。

そこで再び存在感を増してきたのが大型のストライカーだ。グアルディオラが2008-09シーズンにバルセロナの指揮官として3冠を達成した時にはリオネル・メッシを攻撃陣の中央に配する0トップなる言葉が流行し、それをドイツ代表のヨアヒム・レーヴが取り入れるなど近年はFWにサイズが求められない時代でもあった。しかし、ここ最近は大型ストライカーの活躍が目立つ。

興味深かったのは2月25日に行われたブンデスリーガ第24節レヴァークーゼン対シャルケの一戦だ。両チームはチャンピオンズリーグ出場権獲得を争う上位クラブだけあって、前線から統率の取れたプレスをかけることができていた。思うように最終ラインからパスが繋げない場面も目立ったが、このプレスを攻略するために両チームは全く異なる対応を見せた。

レヴァークーゼンは前線のカイ・ハウェルツやケビン・フォラントが中盤まで下がって縦パスを引き出そうとしたのに対し、シャルケは細かく繋がず前線へロングボールを送るやり方でレヴァークーゼンのプレスを回避しようとした。ここで力を発揮したのがシャルケの攻撃陣だ。シャルケの前線はトップ下にフランコ・ディ・サントが入り、2トップの形でブリール・エンボロとグイド・ブルグスタラーを並べていたが、この3人にはいずれも高さとパワーがある。エンボロは185㎝、ブルグスタラーは187㎝、ディ・サントは193㎝だ。加えてエンボロには縦へのスピードもあり、前線へロングボールを送るやり方は確かな効果を発揮していた。

それが実ったのは前半11分だ。シャルケが前線へロングボールを送ると、これにブルグスタラーが反応。最後は相手の19歳DFパナギオティス・レトソスを華麗にかわして先制点を奪っている。ブルグスタラーのプレイが見事だったのは間違いないが、対応したセンターバックのレトソスはあまりに不用意だった。ロングボールの落下地点をしっかりと把握できず、抜かれたらGKと1対1になる状況であるにも関わらず強引にボールを奪おうとしたためにあっさり抜かれてしまった。センターバックとして正しい対応とは言えないものだ。

また、レトソスの相棒はスヴェン・ベンダーが務めている。ベンダーはボランチなど中盤をこなしていた選手で、センターバックとしてディ・サントやブルグスタラーなどサイズのあるFWへの対応には疑問が残る。中盤出身の選手ならば最終ラインでも落ち着いてボールを持てるだろうが、センターバックに本来求められるパワーなど不安な部分は多い。シャルケだけに限らず、最近はブンデスリーガでもバイエルンに復帰したサンドロ・ヴァーグナー、ケルンで大迫勇也の相棒を務めるシモン・テロッデなど190㎝を超える大型FWが幅を利かせ始めている。こうした選手たちにシンプルにロングボールを送るやり方に現代のセンターバックはきっちり対応できているだろうか。

マンチェスター・ユナイテッドにはロメル・ルカクがいるが、先日チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦1stレグで戦ったセビージャの最終ラインはルカクのパワーと高さに手を焼いていた。相手が1トップである場合はセンターバック2人で数的優位を確保しやすいのだが、ルカクには2人で対応しても苦労している場面があった。ルカクはあまりに規格外の存在ではあるものの、マンUの単純な放り込みが効果を発揮したことは現代サッカーのトレンドの変化を感じさせるものだ。

この不安は日本にも当てはまる。日本の選手は世界と比べても上背がなく、ロングボールへの対応には以前から不安があった。例えば今季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を見ても、昨季まで大迫の相棒だった187㎝のFWアントニー・モデスト擁する中国の天津権健に柏レイソルのDF陣が苦労している場面も見られた。日本のDF陣の中には正確にボールを扱える選手も多いが、肝心の守備能力は世界と戦えるレベルにあるのか不安は大きい。

また近年はルカクのように高さとスピードを併せ持っているFWも存在し、大型FWは機動力や俊敏性に欠けるといったイメージは過去のものだ。こうした新時代の大型選手が増えてくればサッカーの流れは再び変わることになるだろう。相手のプレスをショートパスで攻略するのではなく、強引にロングボールで破壊する。これに現代の技巧派センターバックたちは対応できるだろうか。キエッリーニの言葉が重みを増してきている。

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