[特集/欧州4大リーグ2021-22 #04]ナーゲルスマン監督のもと手探りでも バイエルンが前人未踏の10連覇達成

 今シーズンもまた、バイエルンがマイスターシャーレ(優勝皿)を掲げた。第31節ドルトムント戦に勝利し、3試合を残して10連覇を決めている。敗れたドルトムントはケガ人が出るなど苦しいシーズンを過ごしたが、2位に食い込んで意地をみせた。以下、レヴァークーゼン、ライプツィヒなど上位に入ったのはお馴染みのクラブだった。

 中位から抜け出したのはウニオン・ベルリンで、最終節を制してEL出場権を得ている。フランクフルトはそのELを制覇し、ブンデスリーガの力を示した。下位ではシュツットガルトがやはり最終節に劇的な勝利を収め、残留を果たしている。この3チームでは、いずれも日本人選手の活躍が目立った。

序盤苦戦は風物詩!? 終わってみれば10連覇

序盤苦戦は風物詩!? 終わってみれば10連覇

3バックを試すなど手探りながら10連覇を達成。ブンデスリーガにおけるバイエルンの進撃は止まらない photo/Getty Images

 バイエルンはスロースタートを切ることがあり、シーズン序盤はエンジンのかかりが遅いときがある。そのスキにドルトムントやライプツィヒ、あるいはレヴァークーゼンが首位に立つも、バイエルンが通常運転に入ると他クラブは太刀打ちできず、気づいたら順位が入れ替わっている。過去9連覇の間にも、そんなシーズンがあった。

 新たにユリアン・ナーゲルスマン監督を招聘した今シーズンも、ボルシアMGとの開幕戦に1-1で引き分け、第7節フランクフルト戦にはアリアンツ・アレーナで1-2と競り負けた。DFB杯2回戦ボルシアMG戦にも0-5で大敗し、第12節アウグスブルク戦にも1-2で惜敗。序盤戦のバイエルンは、ナーゲルスマン監督のポゼッション+ゲーゲンプレスの攻撃的なスタイルを実践する一方で、守備時の人数が足らずにカウンターから失点するシーンが目についた。

 しかし、ブンデスリーガにバイエルンを凌駕するチームはなく、ナーゲルスマン監督はいろいろと試行錯誤しながら戦っていた。第2節ケルン戦、第6節グロイターフュルト戦、第8節ホッフェンハイム戦などで3バックを採用し、[3-4-2-1]で戦っている。ダヨ・ウパメカノ、ニクラス・ズーレ、リュカ・エルナンデス、タンギ・ニャンズ、バンジャマン・パヴァールなどを最終ラインで起用し、従来の[4-2-3-1]との併用を目指したが、この方針が守備の安定感に繋がらず所々で星を落としていた。

 ただ、こうした状態でも簡単には崩れないのがバイエルンであり、守備の不安を払しょくする勢いでゴールすることで勝点を積み上げていった。というか、ライプツィヒからナーゲルスマン監督とウパメカノを引き抜いたように、ブンデスリーガで結果を残した監督や選手を迎え入れることがバイエルンの強化方法のひとつで、他チームはこの“絶対王者”に追随することができない。そうこうするうちに3バック、4バックともに練度を増していき、第23節から第31節まで無敗で突っ走り、この間の9試合では5失点しかしなかった。

 そもそも、バイエルンの中盤、前線は選手が揃っている。[3-4-2-1]であれば、より多くの攻撃的な選手をピッチに立たせることができる。35ゴールで得点王に輝いたロベルト・レヴァンドフスキを1トップに、2列目にはトーマス・ミュラー、セルジュ・ニャブリ、レロイ・サネ、キングスレイ・コマン、ジャマル・ムシアラなどがいる。[4-2-3-1]であればトップ下3枚+1トップとなるが、[3-4-2-1]であれば両サイドに2枚+2シャドー+1トップと1名多くピッチに送り出せる。さらに、中盤のワイドなポジションではアルフォンソ・デイビス、パヴァールという選択肢もあった。

 無論、守備的MFに負担がかかるが、ヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカがいる。ナーゲルスマン監督のもと、ムシアラもこのポジションで新境地を開拓した。ボールをキープできて、自身で前方に運べる。ドリブルという武器があるのは、キミッヒ、ゴレツカとは異なる特長であり、ムシアラの守備的MFは今シーズンの大きな発見となった。こうして戦力を考えると、バイエルンの陣容は[3-4-2-1]に向いていたのかもしれない。

 ただ、最終ライン(とくにCB)はそう選手層が厚いわけでなかった。デイビスが病気で離脱すると、左サイドが安定感に欠けた。パヴァールは右サイドの選手であり、3バックの右CBでは特長があまり生きない。本人に迷いが出たのか、サイドでプレイしたときに本来の精度がない試合もあった。3バックで戦い続けるだけのCBが揃っておらず、[4-2-3-1]がベースであることに変わりはなかった。

 いわば、ナーゲルスマン体制となったバイエルンは手探りのまま1年目のシーズンを終えている。それでも10連覇達成である。2位ドルトムント、3位レヴァークーゼン、4位ライプツィヒとの対戦(全6試合)は、5勝1分けだった。抑えるところは抑え、相手に「ひょっとしたら」という希望を与えない。この強さあっての、絶対王者だった。

上位はお馴染みの顔ぶれ 日本人選手もそれぞれ活躍

上位はお馴染みの顔ぶれ 日本人選手もそれぞれ活躍

インサイドハーフに取り組んだ原口。古巣ヘルタ戦で得点するなど、結果を残してチームの5位躍進に貢献した photo/Getty Images

 ドルトムントは2位に食い込んだが、シーズンを終えて招聘したばかりのマルコ・ローゼ監督を解任している。マルコ・ロイス、マッツ・フンメルスなど主力の年齢があがるなか、ゲーゲンプレスを軸とする早いサッカーを目指したが、完成形には遠かった。

 頼みのアーリング・ハーランドが負傷離脱した時期があったのも痛かった。彼がフルシーズンに渡ってプレイできていれば、バイエルンとの勝点差はもう少し小さく済んだかもしれない。

 それでも2位である。その背景には、18歳ですでにイングランド代表にもデビュー済みのジュード・ベリンガムの活躍があった。スピード、パワー、スタミナのどれも高いレベルで保有していて、視野が広くて判断力にも優れる。セントラルミッドフィルダーとしてチーム最多の32試合に先発し、大黒柱となって戦い続けた。年齢が上の選手にも臆することなく指示できるメンタルの持ち主で、今シーズンすでにそうだったが、これからのドルトムントを支えていく選手である。

 レヴァークーゼン、ライプツィヒの上位常連組もCL出場権を確保した。就任1年目だったジェラルド・セオアネ監督によって守備面が整えられたレヴァークーゼンは、後方が安定したことで攻撃に良い影響が出た。大きかったのはウニオン・ベルリンから加入したロベルト・アンドリヒの存在で、中盤で献身的なプレイをみせて攻守のバランスを取った。

 もともと、パトリック・シック、フロリアン・ヴィルツ、ムサ・ディアビなど、攻撃陣にはゴールに絡む仕事ができる選手が揃っていた。あまりにも圧倒的なレヴァンドフスキがいなければ、24ゴールを叩き出したシックは得点王である。レヴァークーゼンは新監督、新加入選手によって守備が整備されたことで、既存の攻撃陣が機能した。継続性のある強化が期待できる来シーズンは、面白い存在になりそうである。

 CL出場権を得たものの、ライプツィヒにとっては不本意なシーズンとなった。ジェシー・マーシュ監督のもと戦ったシーズン序盤は選手の運動量こそあるものの、守備ではプレスを外され、攻撃では素早く潰されるなど苦戦が続いた。

 状況の深刻さを読み取り、クラブは監督交代を決断。これが奏功し、ドメニコ・テデスコ監督に率いられたライプツィヒは後半戦になって勝点を積み上げ、5位ウニオン・ベルリンより勝点1だけ上回ってCL出場権を手にしている。

 テデスコ監督はかつてナーゲルスマン体制下で働いており、チームに受け継がれるスタイルを熟知している。守備における立ち位置、プレスのかけ方、マイボールになってからのオートマティックなゴールまでの動き。これらが浸透していくことで本来の姿を取り戻し、ライプツィヒは大崩れすることなくシーズンを戦い終えている。

 原口元気がインサイドハーフを務めるウニオン・ベルリンは各選手がハードワークする好チームに仕上がっており、冬の移籍市場でマックス・クルーゼ、マルビン・フリードリヒを引き抜かれながら最終節で5位に滑り込み、EL出場権を獲得した。2018-19シーズンから指揮官を務めるウルス・フィッシャー監督は選手の力を引き出す能力に長けており、3シーズンぶりの1部でのプレイになった原口もインサイドハーフとして強度の高いプレイをみせるようになり、同氏のもと進化を続けている。

 ブンデスリーガの日本人選手に目を向ければ、フランクフルトでは鎌田大地、長谷部誠がEL制覇に貢献した。また、シュツットガルトでは遠藤航がキャプテンを務め、2季連続の“デュエル王”に輝いている。伊藤洋輝も当初はセカンドチームでのプレイが予定されていたが、第3節フライブルク戦以降に出番を増やし、最終ラインの左CB、左SBで安定したパフォーマンスを披露し続けた。

 劇的だったのはケルンとの最終節で、1-1で迎えた終了間際にCKのチャンスをつかみ、ゴール前に入れられたボールを伊藤が後方に流し、遠藤が決めて2-1とした。この1点がなければシュツットガルトは1部、2部入れ替えのプレイオフ行きだった。両名が活躍したのはこの試合だけではなく、シーズンを通じて守備を支えていたが、1年間の働きがご褒美のようなカタチで出た決勝ゴールだった。

11連覇を狙うバイエルン ドルトムントは未知数

11連覇を狙うバイエルン ドルトムントは未知数

攻守の要となり、1年間フル稼働した遠藤。残留を確定させるという大きな役目が最後に待っていた photo/Getty Images

 来シーズンもまたバイエルンが中心になることに変わりはないが、レヴァンドフスキが今夏に移籍する可能性がある。そうなると、年間で約30ゴールを他選手で捻出しないといけない。ニャブリとの契約延長交渉もうまくいっていないという報道があり、攻撃陣の顔ぶれが一新される可能性がある。また、守備陣ではズーレの退団が決定し、ただでさえ薄いCBのポジションが人材不足となっている。

 一方、ヌサイル・マズラウィ(アヤックス)の獲得が決まり、ライアン・フラーフェンベルフ(アヤックス)との交渉も進んでいる。いずれも「個」の力で縦に突破できるタイプで、守備の意識も高く献身的なプレイができる。攻撃の基準となる「9番」がいなくなっても、バイエルンは「偽9番」を置くゼロトップで対応できる。こうした攻撃力を考えると、バイエルンが大きく崩れることはない。

 ライバルで躍進が期待されるのはレヴァークーゼンで、セオアネ監督のもと積み上げたものがある。エースであるシックとの契約延長にも成功し、さらに19歳の新鋭アダム・フロジェクも獲得している。シックとフロジェク。来シーズンのレヴァークーゼンは2人のチェコ代表ストライカーに要注目だ。

 ドルトムントは未知数だ。テクニカル・ディレクターを務めていたエディン・テルジッチが新たに指揮官を務めることで、継続性はある。ただ、ハーランドの抜けた穴はやはり大きい。カリム・アデイェミ(ザルツブルク)を獲得しているが、前線で動くタイプでターゲットにもなっていたハーランドとは異なる特徴を持つ。主力の年齢も上がっている。来シーズンのドルトムントは、ピッチに立つ選手の顔ぶれが変わるかもしれない。

 優勝の可能性があるのはこの3チームで、ライプツィヒが続くのは今シーズンと同じか。以下に食い込むチームとなると、中位、下位の実力差が小さいブンデスリーガでは多くのクラブにチャンスがある。原口のウニオン・ベルリン、鎌田、長谷部のフランクフルトはもちろん、ぎりぎりで残留したシュツットガルト、さらには昇格したシャルケにもチャンスがある。EL出場圏内となる5位以下に関しては、なにが起こってもおかしくないのがブンデスリーガである。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)270号、6月15日配信の記事より転載

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