[MIXゾーン]J3長野がG大阪U-23に見せつけた「飯を食っていく覚悟の違い」 

“プロとアマ”の違いが出たのか photo/Getty Images

昇格争いもクライマックスに

「これで飯を食っていくんだという覚悟の違いが出たのかなと。形でサッカーをやっても、なかなか勝つことには結びつかないし、本当に長野の選手の姿勢は素晴らしかったと思う」(G大阪U-23森下監督)

 G大阪U-23の若い選手にとって、長野が見せた鬼気迫るプレイがいい薬になればと思う。年代別日本代表経験者も多く、トップチームでJ1の試合経験もある、誰の目にも才能の塊のような選手たちが、無名のJ3の選手に翻弄される様は、サッカーというスポーツの真髄を感じさせるものだった。

 ともにアウェイで戦った前節から中二日。ホームのG大阪U-23はトップの湘南戦に帯同していた選手がピッチに。一方の長野はアウェイ2連戦となり、移動などハンディは相当大きかったはずだ。しかし試合は前半開始から長野の激しいプレッシングがG大阪U-23を圧倒する。
「ナイスゲーム。よくハードワークしている」

 長野の横山監督のハーフタイムコメントどおり、球際の勝負で長野は若いG大阪U-23に勝ち続けた。職業として結果を求められるプロの集団。ピッチに立つだけでもチーム内のサバイバルは激しい。まして昇格争いの真っ只中。長野はこの試合を含めて残り3試合を3連勝すれば、自力でJ2昇格を決められる。

 一方言葉は悪いが、G大阪U-23にはスタメン争いはあるにはあるだろうが、決して勝ち取ってピッチに立つとはいい難い育成チーム。ここで試合に出られなくても、2種登録の選手にはユースの試合もある。当然昇格争いとも無縁だ。覚悟の差はそのまま前半のプレイに反映されていた。40分にはCKから長野のMF三田がゴールを決める。

「苦しい時間帯が続いた中でもチャンスのシーンは必ずあると信じていた。最初のシュートは止められてたが、うまく自分の前にボールが転がってくれたので、あとはコースを見極めて決めるだけだった。しっかり決められて良かった」(三田)

 内容面で押していた長野だったが、三田自身は「苦しい時間帯」と感じていたのだろうか。やはり勝たなくてはならないというプレッシャーが、そう感じさせるのかもしれない。

 後半に入るとG大阪U-23は前線にMF中村、ボランチに菅野を投入。この選手起用が活き、徐々にペースはホームチームへと移る。逆に長野は前半がオーバーワークだったのか、時間とともに動きが重くなっていった。更にアウェイの連戦という過酷な日程が足取りを重くさせる。残りの15分は若いG大阪U-23がボールを丁寧につなぎ、それをボックスの中で長野が必死に耐えるという構図に。ただ最後の最後で体を張って守る長野のゴールを、G大阪U-23は陥れることはできなかった。ひと言でいえばこれがプロとアマの差というところだろう。どれほど才能に溢れていても、そのピッチでいい訳なく力を出し尽くせる選手でなくてはプロの人生を切り拓くことはできない。

 長野は厳しい試合をものにして昇格圏内の2位を死守した。残りの2節はホームで戦えるアドバンテージもある。次節の岐阜に勝ち、現在3位の相模原が既にJ2昇格とリーグ優勝を決めている秋田に敗れれば、その時点で長野の悲願の昇格が決まることになる。果たして長野がこのまま逃げ切るのか、それとも相模原、岐阜がストップをかけるのか。

「残り2試合、とにかく総力戦。今日も中2日で迎えた試合で、次の岐阜戦も簡単に勝てる試合ではないと思う。とにかく最大の準備をして全力を尽くす。これに尽きる」(横山監督)

文/吉村 憲文

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.292 最強ボランチは誰だ

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:インタビュー

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ