[ロシアW杯#29]またしても追加タイムにドラマが!  満身創痍のドイツに降臨した救世主

後がないドイツ、痛恨の先制弾を浴びる

後がないドイツ、痛恨の先制弾を浴びる

逆転弾を突き刺したクロース。追加タイムも終わろうかという本当にギリギリの時間だった photo/Getty Images

負ければグループリーグ敗退という窮地に立たされたドイツが、キックオフのホイッスルを合図にアクセルをベタ踏みにしたのは当然だろう。

エジルに代わってスタメンに抜擢されたロイスをはじめ、ミュラー、ドラクスラーの2列目が流動的にポジションを入れ替えながら最終ラインの裏を狙い、さらに両サイドバックも高いポジションをキープしてスウェーデンを自陣に押し込めた。

それでも、サイドは崩されても中でしっかりと跳ね返すスウェーデンの組織立ったディフェンスを崩し切れずにいると、王者の脳裏にメキシコ戦のトラウマが蘇る。
12分、頚椎捻挫のフンメルスの代役としてCBに入ったリュディガーの中途半端なパスを引っ掛けられ、スウェーデンの鋭いカウンターを浴びる。中央を駆け上がったベリの突破はボアテングが後ろから足を出して辛くも阻止したが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定に持ち込まれていれば、あるいはPKとなっていた際どさだった。

痛恨だったのは、まさにカウンター対策としてスタメン起用したセントラルMFのルディが、負傷交代を余儀なくされたことだろう。相手との接触プレイで鼻血が止まらなかったルディを諦め、ギュンドアンを投入するまでに費やしたおよそ5分という時間が、レーブ監督の無念を物語っていた。

スウェーデンに先制を許すのは、そのギュンドアンをピッチに送り込んだわずか1分後の32分。珍しいクロースのパスミスからだった。またもカウンターで右サイドに素早く展開されると、クラーソンの正確なクロスをトイヴォネンに決められたのだ。胸トラップからの一撃は、カバーに入ったリュディガーのつま先に当たり、緩やかな弧を描きながらネットに吸い込まれた。

前半終了間際にも、FKからフリーでベリのヘディングシュートを浴びる。ノイアーがなんとか掻き出したものの、セットプレイで集中を欠くとは、およそドイツらしくなかった。

レーヴのベンチワークがドイツに流れを引き寄せる

レーヴのベンチワークがドイツに流れを引き寄せる

ゴメスが入り、左サイドにコンバートされたヴェルナーは水を得た魚のようにチャンスに絡む photo/Getty Images

嫌な流れを変えたのは、後半の頭からゴメスを投入したベンチワークだった。1トップに基準点となるゴメスを置き、スピードのあるヴェルナ
ーを左サイドに回した効果はすぐさま表れる。

48分、左から縦に仕掛けたヴェルナーのクロスを、ロイスが左膝に当ててゴールに押し込んだのだ。ようやく生まれた今大会初ゴールで、ドイツが一気に勢いづく。ヴェルナーが再三ドリブルで切り込めば、ロイスも神出鬼没の動きで相手DFを翻弄。それまで窮屈そうにプレイしていたクロースも、スウェーデンの運動量が低下したことで、中央で自由にボールを捌けるようになった。

しかし、決定打は生まれない。82分にボアテングがこの日2枚目のイエローカードで退場となっても、あくまでも勝利を求めて攻め続けたドイツだが、88分のゴメスのヘディングシュートはGKオルセンの右手に弾き出され、92分に途中出場のブラントが放ったミドルは左のゴールポストに阻まれてしまう。このまま勝点1を分け合うだろと、誰もが思った。

だが、ドラマは最後の最後に待っていた。アディショナルタイムの94分40秒。ペナルティーエリアの左で得たFK。クロースがロイスに一旦預けてから右足でこすり上げたシュートが、急激なカーブを描いてゴールに突き刺さった。まさに起死回生の逆転弾──。不屈のゲルマン魂で、文字通り勝点3をもぎ取ったドイツが、グループリーグ突破に望みをつないだ。

[スコア]
ドイツ代表 2-1 スウェーデン代表

[得点者]
ドイツ代表:ロイス(48)、クロース(90+5)
スウェーデン代表:トイヴォネン(32)

文/遠藤 孝輔

theWORLD208号 2018年6月24日配信の記事より転載

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