2000年代のプレミアリーグでは、マンチェスター・ユナイテッドのリオ・ファーディナンドやチェルシーのジョン・テリー、リヴァプールのジェイミー・キャラガーらクラブの象徴とも言えるセンターバックが活躍していた。最近ではマンチェスター・シティのヴァンサン・コンパニもそうだろう。彼らは強いハートを持ったクラブの顔であり、とにかく熱かった。あのファイト溢れるプレイに興奮したプレミアファンも多いだろう。
しかし、世代交代の時はやってくる。ファーディナンドとキャラガーはすでに引退し、現在は解説者として活躍している。テリーも昨季限りでチェルシーを去り、コンパニも負傷続きだ。そんな彼らに代わり、現在プレミアリーグの強豪クラブでは次なる世代が偉大なるセンターバックになろうと奮闘している。
マンUでは2016年夏に獲得されたエリック・バイリーだ。負傷が続いているものの、身体能力の高い将来性ある23歳はジョゼ・モウリーニョの下でワールドクラスのセンターバックに成長する可能性がある。そのスタイルから新たなネマニャ・ヴィディッチと呼ぶ声もあり、コートジボワール代表DFにかかる期待は非常に大きい。
テリーの去ったチェルシーでは21歳のアンドレアス・クリステンセンが伸びてきた。ボルシアMGへのレンタル移籍で確実に力をつけてきたデンマーク代表DFは、今季ダビド・ルイスから見事にポジションを奪取。年齢的にも今後10年はクラブを支えていく存在になれるはずだ。指揮官アントニオ・コンテもテリーと同じキャリアを歩んでほしいと語っており、クラブのレジェンドになる可能性を秘めている。
トッテナムでは同じく21歳のダビンソン・サンチェスに注目が集まる。サンチェスは昨夏アヤックスから引き抜かれたコロンビア代表のセンターバックで、こちらも身体能力は抜群だ。コロンビアでは先日バルセロナに移籍したジェリー・ミナなど若いセンターバックにスポットが当たっており、世界屈指の守備力を誇るチームになる素質を備えている。サンチェスはそのリーダー格だ。
そして忘れてはならないのがマンCだ。今冬にはアスレティック・ビルバオから23歳のアイメリック・ラポルテを引き抜き、今後は同じ23歳のジョン・ストーンズとのコンビがチームの中心となっていくのだろう。この2人は足下の技術が高いという共通点も持っており、ここに現代のトレンドを感じさせるものがある。こうしたセンターバックはフィジカル勝負の多いプレミアでは好まれないタイプだったが、今では彼らのような攻撃能力の高いセンターバックが主役になりつつある。
さらにセンターバックとして出場機会が多いわけではないが、リヴァプールのジョー・ゴメス(20)も188㎝とサイズがあり、今でもフィルジル・ファン・ダイクの相棒にゴメスを据えるべきといった意見が出ている。サイドバックも担当しており、機動力は抜群だ。センターバックとしての守備力には疑問もあるが、広範囲をカバーする点においては現代らしい選手と言えよう。
こちらもまだ批判は絶えないが、アーセナルのロブ・ホールディングもクラブの顔となる素質を持っている。イージーミスは目につくものの、まだ22歳と伸びしろは十分だ。英『Squawka』のデータでも空中戦の勝率は72%、1試合平均のインターセプトは2.8回と上記の選手たちを上回る数字を記録している。順調に成長できれば32歳とベテランの域に入ったローラン・コシェルニーに代わる中心的存在になれるはずだ。
プレミアを代表する6クラブに有望な若いDFが揃っているのは特徴的で、彼らが今後の主役となっていくのだろう。ファーディナンド、テリー、ビディッチらがゴール前でのプロテクト能力に優れた武闘派センターバックとするなら、今は正確な足下の技術と広範囲をカバーする高い身体能力を兼ね備える技巧派が主流と言える。常に最終ラインから叫んでいたテリーやキャラガーらとはキャラクターが大きく異なり、現代のセンターバックは全てをクールにさばいてしまおうとする選手が多い印象だ。1対1のマークや空中戦には弱くなった、リスク管理ができていないとの意見もあるが、足下の精度は間違いなく上がっており、これまでとは違った角度からチームに貢献することができる。
マンCが揃えたラポルテとストーンズはその象徴ともいうべき存在で、彼らはボランチもこなしてしまえそうなほど正確な技術を誇る。高い身体能力で最終ラインの裏のスペースをケアできるゴメスやサンチェス、バイリーもトレンドに合った選手だ。タイプは大きく異なるものの、プレミアの強豪クラブが抱える若いセンターバックは楽しみな選手ばかりだ。以前はチャンピオンズリーグの舞台でもファーディナンドやテリー、キャラガーらが激突するプレミアファンを熱くさせる戦いが多かったが、バイリーやクリステンセンらもそうした存在になれるのか。2、3年後には彼らがワールドクラスのセンターバックとの評価を確立している可能性もあり、今後の成長から目が離せない。