[MIXゾーン]神戸“守備面でのバルサ化”にも光明 イニエスタの表情も明るく

5試合連続フル出場のイニエスタ(写真は札幌戦) photo/Getty Images

名古屋は対照的に迷路を抜けられず

 これで3連勝。一時期は白星から見放されていた神戸が、ようやくだが息を吹き返しつつある。この名古屋戦の決勝ゴールだけを取り上げれば、以前神戸が高らかに宣言した『バルサ化』を具現化したかのような得点だった。しかもフィニッシャーがMFイニエスタ。まさにバルサのDNAが凝縮されたといってもいい。イニエスタはこの試合を含む3試合で神戸のあげた9ゴールの内、実に8ゴールに絡むというスーパーぶり。しかも5試合連続フル出場。異常ともいえる暑さが去り、かなり涼しくなったことで体調面は相当いいのだろう。それをプレイで証明してみせている。彼に引っ張られるようにチームは上り調子。しかもここ2試合はクリーンシートだ。フィンク監督の突然の退任でチームにショックが走ったが、結果的にはそれをきっかけにチームはまとまった。まさに雨降って地固まったといえるだろう。

 では何が良くなったのか? イニエスタのスーパーさがクローズアップされがちだが、むしろ守るべきところで守れるようになったことの方が重要だろう。前線からプレスをかける場面と、それが上手くいかなかった時に最終ラインまでに守備のブロックを素早く作ること。ここを徹底したことが神戸の不要な失点を防ぐことになった。

「前線の選手のプレスバック、ボランチの選手のプレスバック、今までは前への守備は強かったが、後ろ向きの守備に少し課題を感じていた。今日と前回(鳥栖)の試合は後ろ向きの守備のところで全体が連動してできていたので、ひとつ目で取れなくてもふたつ目、みっつ目で取れるシーンがすごく多かった」(左SB酒井)

 言葉からチームとして修正がしっかりできたことが読み取れるし、それが徐々に確信に変わってきているのが分かる。

「試合の中でうまくいかない流れの時でも、チーム全体としてまずは守備から入り、全体で守備をしているのが良くなってきていると思う」

 バルサというとその攻撃的サッカーばかりがクローズアップされがちだが、本質は守備の切り替えの速さと強度にある。それにはチームとしての献身性が求められるが、その意味では日本人は90分を集中を切らさずにやり切れるメンタリティがある。創造性の部分はイニエスタや外国人選手に負う部分が多いのも事実だが、チームとしてやることがシンプルに、より明確になったことは非常に大きい。ここまでにあまりに多くの勝ち点を落としてしまったので、上位進出はなかなか難しい状況にあるが、それでもクラブの悲願であるアジア制覇という意味では、今の歩みを止めなければ、大きな成果を残す可能性は高い。

「三浦監督はすごくクリアなコンセプトを持っているし、チームとしてはそのコンセプトのもとで心地よくプレイをできていると感じている」(イニエスタ)

 曇りがちだったイニエスタの表情も明るいものになってきた。今のチーム状態に自信が芽生えてきたのではないだろう。

 一方の名古屋はまずどのアウェイチームにも共通することだが、ノエビアスタジアム特有の滑るピッチに苦労していた。フィッカデンティ監督は「神戸に来る前から明らかに多くのチームが、このスタジアムで滑っていることは分かっていた。それにふさわしい準備をして試合に入ろうとしたが、やはり我々の方がよく滑っていた。その部分でも今日の試合への準備ができていなかったのではないかと思う」。

 選手に少し厳しすぎる面もあるとは思うが、チームとして特に前半はピッチへの順応も含めて神戸にゲームを支配されてしまった。後半は神戸を押し込む時間もあっただけに、ひとつゴールを奪えていれば、まったく違う流れになっていた可能性もある。指揮官のコメントからはその歯がゆさが感じられる。J1の大半のチームが一旦過密日程が解消したにもかかわらず、この水曜日にゲームがあったことも、今後の戦いに影を落とすことになるかもしれない。

 上昇曲線を描き始めた神戸、迷路から抜け出せない名古屋。同じ過密日程でもチームの手応えとダメージという点では好対照な試合だった。

取材・文/吉村 憲文

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