【特集/W杯で見たい選手30#2】ストライカーの最高栄誉は誰の手に? ゴールデンブーツ獲得候補はこの10人!

得点王になるためにはそれなりの試合数が必要

得点王になるためにはそれなりの試合数が必要

シュートのバリエーションが豊富なロナウド photo/Getty Images

2014年ブラジル大会で脚光を浴びた選手のひとりが、ハメス・ロドリゲスだ。司令塔として、ストライカーとしてコロンビアの攻撃をリードし、通算6得点で得点王に輝いた。ただ、4年前を振り返ればハメス・ロドリゲスは大会前に得点王候補として各方面で名前が挙がっている選手ではなかった。そう考えると、ロシアW杯で誰が得点王になってもおかしくないが、それを承知で可能性がある選手を10名ほどピックアップしてみたい。

その前に過去5大会を参考にすると、やはりグループリーグを突破して少なくとも4試合以上は戦わないと得点王にはなれない。2014年のハメス・ロドリゲスは5試合で6点、2010年はディエゴ・フォルラン(ウルグアイ)、トーマス・ミュラー(ドイツ)、ウェズレイ・スナイデル(オランダ)、ダビド・ビジャ(スペイン)が5点で並んだが、スナイデル、ビジャ、フォルランが7試合、ミュラーも6試合に出場している。

2006年ドイツ大会のミロスラフ・クローゼ(ドイツ)が7試合で5点、2002年日韓大会のロナウドが7試合で8点、1998年のダボール・シュケル(クロアチア)は6試合6点で得点王になっており、グループリーグで敗退するとやはり得点数は伸びない。1994年アメリカW杯でオレグ・サレンコ(ロシア)がグループリーグ3試合で6点を奪ってフリストス・ストイチコフ(ブルガリア) とともに得点王になっているが、これは例外と言っていい。こうした事実を踏まえると、得点王はグループリーグを突破すると考えられる強国から生まれると考えていい。

出場停止が心配なスアレス C・ロナウドとメッシも候補に

出場停止が心配なスアレス C・ロナウドとメッシも候補に

複数得点が見込めるスアレス photo/Getty Images

グループAを勝ち上がると予想されるウルグアイには、ルイス・スアレスがいる。ゴールへの執念、決定力の高さはもはや説明する必要もなく、エディンソン・カバーニという相棒もいるし、サウジアラビア、エジプト、ロシアと対戦するグループリーグでは1試合で複数得点も狙える。ただ、不用意なプレイで退場となり、出場試合数を伸ばせないと厳しい。南アフリカW杯、ブラジルW杯ではいずれも出場停止があっただけに、ゴールを奪うかどうかとともに、スアレスにはフェアにプレイするのかどうかという見どころがある。クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)ももちろん得点王候補となる。グループBで対戦するのはスペイン、モロッコ、イランでおそらく勝ち上がるし、近年のポルトガルはユーロ2016を制したように非常に勝負強く、そのなかでC・ロナウドはチームに勝利をもたらす役目を担っている。ポルトガルが6~7試合を戦い、すべてにC・ロナウドが出場したなら5~6点は奪っていてもおかしくない。

アントワーヌ・グリーズマン(フランス)とリオネル・メッシ(アルゼンチン)はこの両名ほど楽なグループリーグに入ったわけではなく、だからこそ温存されることなく全試合に出場すると考えられる。そして、フランスのサッカーは攻撃的で、グリーズマンには多くのチャンスが訪れるだろう。優勝こそ逃したが、決勝まで進出して得点王になったEURO2016がロシアで再現されるかもしれない。
 
一方、アルゼンチンは堅守が特長で、一試合のなかでメッシにはそう多くのゴールチャンスが訪れるわけではない。それでも、厳しいマークを受けるなか1本のシュートを1点に結びつける正確性、決定力を持つのがメッシだ。アイスランド、クロアチア、ナイジェリアと戦うグループリーグは相当に厳しい展開になると予想されるが、そのなかからアルゼンチンが勝ち上がったなら、メッシにも必ず複数のゴールが生まれているはずだ。

ネイマールには「個」の力がある ブラジルにはジェズスもいる

ネイマールには「個」の力がある ブラジルにはジェズスもいる

持ち前のスピードと高いスキルでDFを翻弄するネイマール photo/Getty Images

優勝候補に挙げられるブラジルから得点王が生まれるとしたら、ネイマールかガブリエウ・ジェズスか。セレソンの3トップは真ん中にG・ジェズス、左にネイマール、右にフィリペ・コウチーニョが基本で、得点源となっているのはジェズスとネイマールだ。南米予選を振り返れば、ブラジルは18試合で41点を奪う攻撃力を発揮したが、このうち13点をジェズス(7点)とネイマール(6点)で奪っている。チームメイトにはコウチーニョ、レナト・アウグスト、パウリーニョ、カゼミロなど質の高い選手だらけで、正確なパスをもらうこともできる。また、ネイマールはゴールから離れたところでボールを受けても「個」の力で状況を打開してシュートまで持っていくことができる。一方、ジェズスはゴールに近いところでプレイするため、チャンスが訪れる回数が多い。グループリーグで対戦するスイス、コスタリカ、セルビアはいずれも堅実な戦いができるやっかいな相手だが、ブラジルが16強進出を逃すことはないだろう。あとは、どこまで試合数を伸ばせるかで、勝ち上がりとともに両名のゴール数も増えていくことになる。

グループGを勝ち抜くことが濃厚なベルギーとイングランドにも候補がいる。ロメル・ルカクとハリー・ケインで、それぞれ欧州予選ではルカクが11点、ケインが5点を奪って予選突破に貢献している。両名がグループリーグで対戦するのはパナマ、チュニジアで試合展開によっては複数のゴールが期待できる。この2試合で3点ぐらい積み上げることができれば、最終的に得点ランクの上位に食い込んでいる可能性が高い。とくに、ルカクを擁するベルギーは爆発的な攻撃力があり、たとえば決勝まで勝ち進んだときに何点を奪っているか想像がつかない。そして、そうなったときはルカクが多くのゴールを奪っているのは間違いない。

日本が入ったグループHにはロベルト・レヴァンドフスキ(ポーランド)、ラダメル・ファルカオ(コロンビア)がいる。レヴァンドフスキはチャンスの数だけゴールを決めるという容赦ない決定力の持ち主で、欧州予選では歴代記録を塗り替える16ゴールを奪ってみせた。屈強かつ柔軟な身体を持ち、動きが俊敏で足元の技術力も高い。レヴァンドフスキは万能で、日本との対戦にフルパワーで臨んできたなら2点、3点奪われるのは覚悟しなければならない。幸い、対戦するのは3戦目なので本来の姿は見られないかもしれないが……。

逆に、初戦で対戦するファルカオは日本を困らせることになるだろう。ポジショニングがよく、ゴールへの執念があり、一発で仕留める決定力がある。一瞬でもマークを外すと、日本に限らずやられることになる。このファルカオ、そしてレヴァンドフスキにはグループリーグでゴールを量産するチャンスがある。セネガル、日本の守備力は未知数で、ポーランド、コロンビアとの戦いがどんな展開になるのか想像がつかない。両名にとっては、この2試合でゴールを積み上げることが得点王への最初の関門となる。


文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD196号 2018年3月23日配信の記事より転載



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