[水沼貴史の欧蹴爛漫002] PSGの切り札はずばりディ・マリア! レアルにとっては彼の方が脅威です

ネイマールを上回る“献身性”が攻守で活きる

ネイマールを上回る“献身性”が攻守で活きる

ディ・マリアの閃きがPSGを救うのか photo/Getty Images

水沼貴史です。待ちに待った2018年のJリーグも開幕し、国内・海外問わず注目試合が盛り沢山ですね。「サガン鳥栖×ヴィッセル神戸」、「ジュビロ磐田×川崎フロンターレ」の解説を担当させて頂きましたが、トップレベルの選手による熱き攻防に驚かされる毎日です。

さて、今回取り上げるのはUEFAチャンピオンズリーグのラウンド16(2ndレグ)、パリ・サンジェルマン対レアル・マドリードの一戦です。世界的に注目されている試合であることは言うまでもありませんが、1stレグで2点のビハインドを背負い(1-3)、なおかつネイマールの負傷欠場が決定したPSGがいかにレアル・マドリードの守備陣を揺さぶるべきなのか。まずはこの点からお話ししましょう。

ネイマールが務めていた[4-3-3]の布陣の左ウイングには、おそらくアンヘル・ディ・マリアが入るでしょう。彼とネイマールの最大の違いは、攻守両面における献身性です。前線でのチェイシングや素早い帰陣で自サイドのスペースを埋める作業については、ネイマールを上回ると言っても良いでしょう。攻撃面についてですが、彼はフィニッシュワークのみならず、オフ・ザ・ボール(ボールを持っていない時)の動きを得意としています。相手に引かれた場合でも巧みにパスコースを作れますし、最前線の核として充分に機能するでしょう。
また、球離れが悪い場面が見受けられるネイマールとは違い、彼はボールを持っている時でも周囲の味方の動きを敏感に察知できます。特にペナルティエリア内での駆け引きを得意とするエディンソン・カバーニとの相性はこれまでの試合を見ていても良好で、ディ・マリアのパスからカバーニのフィニッシュ、またはカバーニの動きを囮にして他の選手が相手最終ラインの背後を突くプレイなどが、ネイマールがいる時よりも多く見られるのではないでしょうか。前線の選手の動き出しがより活発になる可能性が高いので、レアル・マドリードにとってはある意味、ネイマール抜きのパリ・サンジェルマンのほうが脅威に感じるかもしれません。

レアルの防戦は必至 PSGの“超攻撃的SB”の背後を突けるか

レアルの防戦は必至 PSGの“超攻撃的SB”の背後を突けるか

1stレグで貴重なアシストを挙げたM・アセンシオ(写真右) photo/Getty Images

一方のレアル・マドリードですが、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミロが負傷明けということもあり、ポゼッションでパリ・サンジェルマンを上回れないでしょう。最終ラインを低く設定してカウンターという戦法をとることが予想されます。この戦い方で鍵を握るのが、ジネディーヌ・ジダン監督からの信頼が厚く、最近出場機会を増やしているルーカス・バスケスとマルコ・アセンシオです。パリ・サンジェルマンは勝ち抜けのために最低2点が必要ですので、両サイドバック(ダニエウ・アウべス、ユーリ・ベルチチェ、レイヴァン・クルザワなど)が普段よりも高い位置をとることが予想されます。1stレグでもアセンシオがパリ・サンジェルマンの右サイドを深く抉り、貴重な2アシストを記録しました。

もしパリ・サンジェルマンが引いて構えてくるような場面があれば、今度はイスコらを中心とするパスワークに注目してみてください。相手の陣形を横に広げようとしてくると思います。こうして空いたスペースにアセンシオやバスケスらを走らせれば、得点の可能性が高まります。無論、両チームともサイドの裏のスペースは気にしていると思うので、このような場面が多く見られるかは何とも言えませんが、この試合をご覧の皆さんには、ワールドクラスの選手たちが相手の僅かな隙をどんなふうに突いてくるのか、そこに注目してほしいですね。

ではでは、また来週お会いしましょう!

※UEFAチャンピオンズリーグのラウンド16(2ndレグ)、パリ・サンジェルマン対レアル・マドリードは7日(日本時間)の早朝4時45分にキックオフ!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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