【ロシアW杯展望/グループA】大本命は攻撃力のウルグアイ 開催国ロシアはアドバンテージを活かせるか

コンフェデレーションズカップ2017に臨んだロシア代表の面々 photo/Getty Images

ロシアにとって有利なスケジュール? 

今大会の開幕戦にあたる6月14日(現地)のロシア対サウジアラビア戦で幕を開けるグループAは、南米予選2位通過の伝統国ウルグアイの1強のグループ。決勝トーナメント進出をかけた残る1枠を、開催国ロシアと28年ぶりの本大会出場を果たしたエジプトが競い合う展開が予想される。それだけに、とりわけ重要になってくるのがロシアとエジプトの初戦だ。開催国ロシアの初戦の相手は、出場国の中で最弱レベルと見られているサウジアラビア。確かに開催国枠で予選が免除された影響があったとはいえ、FIFAランキングでは出場32チーム中最下位(65位)のロシアにとっては願ってもない対戦スケジュールと言える。

そのロシアの指揮を執るのは、スタニスラフ・チェルチェソフ監督。現役時代、旧ソ連代表を含めると49キャップを誇る名GKとして名を馳せた人物で、指導者としてはオーストリア、ロシア、ポーランドのクラブで監督のキャリアを積んできた。2016年8月から率いるロシア代表では、それまで低迷していたチームを守備の再建と世代交代によって改革を進めるも、現状を見る限りその改革は順調とは言えないレベルにある。

特に印象的なのは、コンフェデレーションズカップ2017で露呈した脆弱な守備だ。基本システムの[3-5-2]は、守備の時はほぼ5バックになるという典型的な守備的サッカー。にもかかわらず、ヴィクトル・ヴァシン(CSKAモスクワ)をセンターに、ゲオルギ・ジキヤ(スパルタク・モスクワ)とヒョードル・クドリャショフ(ルビン・カザン)で構成する3バックは、対人にはそれなりの強さを見せるものの、バイタルエリアで簡単にマークを外されてしまうなどコンビネーションはまだ発展途上の段階だ。経験豊富な守護神イゴール・アキンフェエフ(CSKAモスクワ)に頼るところが大きい守備面は、開幕戦までに最優先で修正しなければならない。 

また、速攻を武器とするアタック陣も両サイドからのクロスに精度を欠き、チーム最大の得点源とされるフョードル・スモロフ(クラスノダール)もそれほどの決定力は兼ね備えていない。つまり、攻守ともに不安材料が目立っているのが現状なのだ。

ただし、対戦相手のサウジアラビアはもっと多くの不安を抱えたまま本番に挑む。初戦の結果がモノを言う短期決戦において、ロシアにとっての明るい材料はそこだ。勝てば波に乗り、地元の声援をバックにグループリーグ突破も視界に入ってくるはずだ。

サウジアラビアの不安は、何と言っても予選突破後に続いた監督交代劇にある。オランダ人ベルト・ファン・マルヴァイク監督が予選突破後にその職を離れると、後任となったアルゼンチン人エドガルド・バウサは2ヵ月足らずで解任。結局、本大会の組み合わせ抽選会の直前に同じアルゼンチン人のファン・アントニオ・ピッツィ新監督が就任し、新チームはこれからヴェールを脱ぐことになっている。そんな状況を考えれば、ピッツィ新監督も予選を戦い抜いたメンバーを大幅に入れ替えることはないだろう。現在のサウジアラビアは、選手個々で言えばアジア内ではイランに次ぐタレントの宝庫。中でもストライカーのアル・サハラウィは今予選で16ゴールをマークした得点源であり、中盤の仕切り役でもあるサルマン・アル・ファラジもなかなかの実力者だ。そういう点では、開催国ロシアの守備網を破ってジャイアントキリングを起こす可能性はゼロとは言えない。もちろんそのためには、選手個々の能力をチームとして成熟させる必要があり、やはりカギを握るのは新指揮官の手腕となるだろう。

プレミア・カルテットウルグアイ攻略なるか 

プレミア・カルテットウルグアイ攻略なるか 

エジプト代表の攻撃を牽引するサラー(現リヴァプール) photo/Getty Images

一方、7大会ぶり通算3回目の出場となるエジプトは、名将エクトル・クーペルが率いるだけあって、堅い守備からのカウンターを武器とする好チームになっている。システムはクーペルが得意とする[4-2-3-1]。基本的には低い位置で守備の網を張り、奪った後はエースのモハメド・サラー(リヴァプール)に託すというのが基本パターンだ。注目すべきタレントは、CBアハメド・ヘガジー(WBA)、MFモハメド・エルネニー(アーセナル)、左ウイングのラマダン・ソブヒ(ストーク)のプレミア組。これにチーム最大のスターであるサラーを加えたプレミア・カルテットは、経験値こそ不足するが、相手チームにとって脅威となることは間違いない。とりわけ華麗なドリブルテクニックを武器とするゾブヒと決定力を兼ね備えたスピードスターのサラーの両ウイングは、このチームの勝敗の行方を左右する重要なキーマン2人。“クーペル戦術”を発揮して、アフリカ予選時と同じように失点の少なさを本大会でも維持できれば、旋風を巻き起こす可能性も十分にある。

とはいえ、問題は初戦の相手が百戦錬磨のウルグアイであるという点だ。経験のないチームが初戦で敗れれば、回復不能なレベルのダメージを受けることになるからだ。しかも2006年2月から長期政権が続くオスカル・タバレス監督率いるウルグアイには、これといった隙が見当たらない。近年囁かれていたベテラン勢の衰えも、20歳前後の若きタレントたちの台頭によってしっかり世代交代が行われているのが現状だ。ウルグアイがグループ首位通過に最も近い理由はそこにある。 

このチームの看板は、何と言ってもエディンソン・カバーニ(PSG)とルイス・スアレス(バルセロナ)の強力2トップだ。2人は世界でも5本の指に入るゴールゲッターで、おそらく今大会に出場するチームの中で、FWの破壊力ではナンバーワンと言っても過言ではない。

さらに、伝統の堅守を体現する強力コンビ、ディエゴ・ゴディンとホセ・ヒメネスのアトレティコ・マドリードのCB2人、そして経験豊富なGKフェルナンド・ムスレラも健在。そこに、MFナイタン・ナンデス(ボカ・ジュニオールズ)、MFフェデリコ・バルベルデ(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)といった新世代のタレントが急速に実力をつけてレギュラーを奪取する勢いもあるだけに、チームとしての伸びしろも残されている。 これまでは徹底的に守って前線のタレントにアタックを任せるというスタイルで成功を収めてきたウルグアイだが、今回は台頭する中盤の若いタレントがアクセントとなることにより、今後も攻撃のバリエーションを増す可能性が高い。当然、彼ら若手のパフォーマンス次第でカバーニ&スアレスのゴールチャンスも増えるだけに、2010年南アフリカ大会以来のベスト4進出も夢ではなさそうだ。



文/中山 淳

サッカージャーナリスト。海外サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を経て、編集制作会社『有限会社アルマンド』を立ち上げる。同社では、フットボールコアマガジン『フットボールライフ・ゼロ』を刊行。また、J-SPORTSのフットボール番組『Foot!』にも出演。

theWORLD193号 2017年12月23日配信の記事より転載
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