アメリカの敗退は女子サッカー勢力図変化の証明? 「アメリカは戦術面で取り残されつつあり……」

ベスト16でスウェーデンに敗れたアメリカ photo/Getty Images

女子サッカーは新たなフェーズへ突入する

グループステージを苦しみながら2位で通過するなど怪しい部分もあったアメリカ女子代表は、FIFA女子ワールドカップ2023のベスト16でスウェーデン女子代表にPK戦の末敗れた。スウェーデンも強豪とはいえ、女王アメリカがベスト16で消えるのはサプライズだろう。

何よりアメリカは第1回大会の1991年女子ワールドカップより、3位より下の成績になったことがない。優勝4回、準優勝1回、3位が3回と、とてつもない成績を残してきたのだ。その歴史が変わったことになる。

今大会は強豪のドイツやブラジルがグループステージで姿を消すなど波乱続きだが、この状況に元イングランド女子代表のカレン・バーズリーは女子サッカー界の勢力図が変わってきたと印象を語る。
「今大会は、私が見てきた中で最も競争力があるエキサイティングなワールドカップになっている。下から上までの差が縮まっている。何か特別なことが起きているから、初優勝チームが出る可能性もある。では、何が起きているのか?1つは、各国の連盟が女子サッカーに投資することで早期に大きな改善が見られると理解し始めている。女子サッカーに対する世界的な認識も高まっている。全体として今大会はサッカーの質も非常に向上している。戦術的、技術的な進化があり、トランジションのレベルも向上している。よりゲームは激しくなり、それによって予期せぬ結果が起きている。より適応力のあるチームが優位性を得ているため、指揮官にはもっと創造性が求められる」

「アメリカはフィジカル面でどのチームをも上回っていたが、戦術的な進化はそこまで達していない。時間はかかったが、欧州勢のフィジカルが追いついてきていて、アジアのチームも追いついてきているのが分かる。アメリカは現在戦術面で取り残されつつあり、他の国々がどれだけ優れているかを理解していなかったのだろう」(『BBC』より)。

これまでフィジカルでアメリカが絶対優位となっていないのは明らかで、今大会は女子サッカーのさらなる進化を予感させる。それはなでしこジャパンにも言えることで、今大会のなでしこも球際の攻防で世界と互角に戦っている。デュエルの意識は女子サッカーでも強くなっているのだ。

アメリカも世代交代の問題など他にも敗退の原因はあるだろうが、それでもベスト16敗退の衝撃は大きい。主に欧州勢が力をつけたことで、女子サッカー界は新たな時代へ突入しようとしている。

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