天才エリクセンがイタリアでついに覚醒 復調をもたらした「頼れる相棒」の存在

インテルやイタリアのサッカーに適応し始めたエリクセン(右)photo/Getty Images

インテルにとって今冬“最大の補強”に

セリエA参戦から1年の時を経て、ついにインテルに所属するデンマーク代表MFクリスティアン・エリクセンが覚醒した。クラブ事情により、今冬の移籍市場での補強を行えなかった同クラブにとって、デンマークの天才の復調こそが“最大の補強”になったに違いない。

昨年1月に長きにわたって活躍してきたトッテナムを退団し、インテルへ移籍した現在29歳のエリクセン。プレミアリーグを代表する司令塔として活躍していたこともあり、イタリアでの更なる飛躍が期待された。しかし、その期待とは裏腹に新天地ではなかなか結果を残すことができず、昨季後半戦の出場時間は836分(公式戦20試合に出場して2ゴール2アシスト)。今季も昨季同様にベンチを温める時間が長く、1月中旬までで500分超しか出番がなかった(公式戦14試合に出場)。

こういった状況もあり、夏ごろからエリクセンに関する移籍やトレードの噂は絶えず、今冬の移籍市場で早くも退団するのではないかと予想された。ただ、エリクセンは最終的にインテル残留を決断。そして、その決断が間違っていなかったことを証明するかのように、1月26日に行われたACミランとのミラノダービー(コッパ・イタリア準々決勝)で劇的な決勝ゴールを決めて以降、存在感を発揮し始めている。
復調の要因として大きかったのは「ポジションの変更」と、それによって生まれた「頼れる相棒の存在」か。これまで主に、イングランド時代から主戦場としてきたトップ下としてプレイしてきたエリクセンだが、ここ数試合はインサイドハーフ、もしくはアンカーとしてプレイ。相手のプレッシャーが今までより少なくなったことに加えて、チームの心臓であるマルセロ・ブロゾビッチとの距離が近くなったことが影響したのか、以前に比べて視野を広く保ちながら落ち着いてプレイできているように思える。

インテルの攻撃を組み立てるブロゾビッチとエリクセンのコンビ photo/Getty Images

ブロゾビッチとはコンビネーションも抜群。キープ力のあるブロゾビッチが中盤の底でタメを作り、エリクセンがダイレクトパスで一気に攻撃のスイッチを入れる。プレイスタイルが似ている部分も多いだけに、うまくビジョンを共有できているのか、2人のコンビで緩急を巧みに使ってインテルの攻撃を組み立てるシーンが増えてきている。実際に、14日に行われたラツィオ戦(セリエA第22節)では、この形からロメル・ルカクに当ててラウタロ・マルティネスが裏へ抜け出し、先制点へとつながるPKを獲得していた。

そして、“ブロゾビッチ封じ”で苦しめられることも少なくなかったインテルにとっても、エリクセンとブロゾビッチの2枚で攻撃を組み立てられるようになったことは、スクデット争いを戦い抜いていく上で大きいだろう。クラブOBのマルコ・マテラッツィ氏も伊『Gazzetta dello Sport』で「エリクセンには信じられないほどのクオリティがある。ブロゾビッチと一緒にプレイさせるのが最適だ」と述べていた。

さらに、データから見てもエリクセンがインテルに適応し、周囲から信頼され始めたのかがわかる。今季リーグ戦で初のフル出場を果たしたベネヴェント戦(第20節)では、ブロゾビッチがベンチだった影響ももちろんあるが、両チーム最多となる「130回」のボールタッチを記録(2番目のバストーニよりも約30回多い)。ラツィオ戦でも、72分にピッチを退いた時点でブロゾビッチと同等のボールタッチ数だった。トッテナム時代と同様に、チームの中心となりつつあるのだ。アントニオ・コンテ監督も「エリクセンは、プレミアリーグに比べてより戦術的なイタリアのサッカーを理解する上で、いくつか問題を抱えていたようだが、彼は大きな一歩を踏み出した。イタリア語もわかり始め、我々が彼に何を望んでいるのかも理解し始めている。彼は我々にとって新たな武器となったよ。今は彼に頼るのがよりスマートだ」と真価を発揮し始めたエリクセンに対して賛辞を送っていた(伊『sky sport』より)。

また、ここ最近では守備面での奮闘も見られるエリクセン。この勢いでどんどん調子を上げていきたいところだ。11年ぶりのスクデットを狙うインテルにとって、彼が後半戦のキーマンになるかもしれない。そういった意味でも、まずは21日に行われる首位攻防戦のミラノダービーでも違いを見せつけたい。

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