日本がボールを持っている時が最も危険! もう”攻撃は最大の防御”ではなくなった

最近の日本はビルドアップでミスを連発 photo/Getty Images

日本がボールを持っている時が最も危険

日本代表がマリ代表と引き分けた23日、ロシアワールドカップで同じグループHに入っているコロンビア代表は敵地でフランス代表を3-2と撃破した。ワールドカップに出場していないマリ相手に終了間際の同点弾で辛うじて引き分け、27日のウクライナ代表戦も1-2で落とした日本と、優勝候補でもあるフランスを敵地で粉砕したコロンビア。何とも対照的な結果になってしまった。コロンビアとの間に実力差があるのは誰の目にも明らかで、ロシアワールドカップへの希望を失ってしまった日本のサポーターもいることだろう。しかしこのまま簡単に諦めるわけにもいかない。グループ最弱と評価される日本は彼らとどう戦えばいいのだろうか。

今大会のテーマとなるのは、「どうボールを奪うか、失うか」だろう。アルベルト・ザッケローニの下で臨んだ2014ブラジルワールドカップではポゼッションをベースとした攻撃的なサッカーを志向していたため、日本のテーマは「相手をどう崩すか」だった。しかしこの4年で世界のサッカーは大きく変わった。先日のフランスとコロンビアの一戦で興味深かったのは、両チームの攻撃の進め方だ。

まず注目したいのは両チームのボランチで、フランスはエンゴロ・カンテとブレーズ・マテュイディ、コロンビアは前回大会と同じくカルロス・サンチェスと33歳のアベル・アギラルを起用している。カンテとマテュイディは運動量が豊富で、マテュイディは自陣の守備から敵陣への攻め上がりまでこなすボックス・トゥ・ボックス型の選手だ。一方のカンテは世界屈指のボール奪取力が武器で、この2人は司令塔タイプというわけではない。そのため前半はフランスがボールを支配したものの、常に効果的にビルドアップできていたわけではなかった。コロンビアはフランスのことをリスペクトしてか自陣で守備ブロックをきっちりと形成していたため、容易に縦パスを入れることができなかったのだ。

コロンビアも同じだ。サンチェスは守備の1対1に定評のある選手で、攻撃を組み立てる能力はそれほど高くない。そのためハメス・ロドリゲスがボランチの近くまでポジションを下げてボールをもらいにくるケースがあり、大きな展開はハメスがこなしていた。両チームともボランチの選手が組み立て部分で大きな働きをこなす機会はそれほど多くなく、遅攻から決定機を作ったシーンはほとんどなかった。ボランチに守備的な選手を2枚配していることもあり、このレベルとなれば守備ブロックをきっちりと作った相手を自陣からのビルドアップで崩していくのは非常に難しい。

では、彼らはどう相手を崩したのか。ここがこの4年で進化したポイントとも言えるが、両チームともボールを奪ってからの速攻が驚くほど速い。例えばフランスの2点目だ。自陣でボールを奪い返したフランスは一気に攻撃のスイッチが入り、キリアム・ムバッペ、アントワーヌ・グリーズマンら強力アタッカー陣が一斉に相手ゴール前へ迫っていく。最後はトマ・レマルが左足でシュートを決めたが、相手からボールを奪うことが攻撃のスイッチになっているのだ。コロンビアが奪った2点目も同じで、カンテのパスミスを拾ったところからたった2本のパスでラダメル・ファルカオのゴールへ繋げている。この速攻は世界のあらゆるチームが4年前からキレ味を増しており、クラブシーンでもユルゲン・クロップ率いるリヴァプールやパリ・サンジェルマン、ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティもボールを奪い返すと縦に速い攻撃を繰り出している。日本はとにかくこの速攻を最大限警戒しなければならない。

4年前のザックジャパンは攻撃こそ見ていて面白いものがあったが、守備はお世辞にも固いとは言えなかった。オランダ代表、ベルギー代表、コンフェデレーションズ杯ではイタリア代表相手にも善戦したが、どの試合も複数失点している。これは当時グアルディオラが指揮したバルセロナでも言われていたことだが、ボールを保持することで相手の攻撃機会を潰す「攻撃は最大の防御」といった空気が当時のザックジャパンにはあった。しかし強豪チームの速攻のキレが増した今、ボールを持っている時が最も危険と言える。今回の欧州遠征でも日本はビルドアップの部分で不用意なパスミスからピンチを迎えたが、前回の欧州遠征でのベルギー戦でも山口蛍の不用意な横パスを拾われてカウンターを受けるシーンがあった。相手はそうしたパスミスを狙っており、今の日本の実力では不用意に自陣からボールを繋いでいこうとすることの方が怖い。

しかも日本の場合はセンターバックに実力者を揃えているわけではなく、カウンターアタックへの対処も優れているとは言い難いものがある。コロンビア、さらにはサディオ・マネなどスピードスターの揃うセネガルの速攻を受ければ一撃でやられてしまう可能性も考えられる。相手に先制点を与えれば、それこそ4年前のコロンビア戦のように堅守速攻の網にかかって大量失点する可能性が高くなる。日本ではまだまだポゼッションベースのスタイルが最も良いとする考えがあるが、コロンビアやセネガルの特徴を考えれば下手にボールを持つのは危険だ。

そこでポイントとなるのが、「どうボールを奪うか」だ。残念ながら日本はそこまで速攻を得意としていないが、今大会でコロンビア、セネガル、ポーランドから金星を奪っていくためにはボールをどこで奪い、そこからどのように速攻へ繋げていくのかというシナリオをしっかりと作らなければならない。そう考えると、やはり中盤にはコロンビアやフランスと同じように守備に強みのある選手を配したい。理想は高い位置でプレスを機能させてボールを奪うことだが、それが叶わなかった場合に自陣深くまで下がって守備をこなせる選手が必要だ。ハリルホジッチ政権最高のゲームとなったオーストラリア代表戦での長谷部、山口、井手口陽介のトライアングルのような構成が現実的なプランと言える。どこでボールを奪い、また自分たちがボールを持った際にどこでボールを失えば危険ではないのか。ボールの奪い方と失い方、失ったあとの対応を整備することがロシアで互角に戦うための条件となる。

ワイドな位置からネイマールがゲームメイクならびにチャンスメイクしていくブラジル代表もそうだが、現代ではボランチに司令塔型の選手を配さないチームも増えた。ブラジルはカゼミロやフェルナンジーニョが中盤の底に構えていて、ブロックを作られると崩すのは困難だ。それをポゼッションから強引に崩そうとするのではなく、速攻を受けるリスクを考慮してポゼッションを放棄したゲーム運びをする方が日本にとっては安全だ。ハリルホジッチはワールドカップの組み合わせ抽選会が終わってから何度もコロンビア、セネガル、ポーランドのビデオを見て分析していることをアピールしている。となれば、当然オーストラリア戦のように相手の長所を消すためのプレス網を整備してくれているのだ ろう。オーストラリア戦のゲームプランが偶然ではなかったことをグループステージ3試合で証明してほしいところで、日本がどうプレスをはめ込んでいくのかが勝利のカギとなりそうだ。

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