【特集/CLラウンド16プレビュー#7】 すべての面でユナイテッド断然優勢  セビージャは僅かな可能性にかける

監督交代後、不振に喘ぐセビージャ 不安定な守備は修正が急務

監督交代後、不振に喘ぐセビージャ 不安定な守備は修正が急務

モンテッラ新監督は時間がない中、どのような戦いを見せるのか photo/Getty Images

昨シーズン13節のバレンシア戦から今シーズン16節のレバンテ戦まで、本拠ラモン・サンチェス・ピスファンでは21戦無敗。ホルヘ・サンパオリ→エドゥアルド・ベリッソという監督交代も大きなダメージには至らず、セビージャは順調に見えた。しかし、先に述べたレバンテ戦を含め、昨年12月の不振(公式戦で2分2敗)が気に障ったのか、上層部はなんの躊躇もなくベリッソを解雇し、新監督にヴィンチェンツォ・ モンテッラを招聘している。

前立腺ガンと懸命に戦うベリッソのもと、セビージャはひとつにまとまっていた。病魔にも屈しなかった指揮官の姿勢は尊敬に値し、2分2敗程度のデータで解雇されるいわれはない。当然、選手のなかには反感を抱く者もいるだろう。モンテッラが好きとか嫌いとかの問題ではなく、上層部の決定に対する怒りがパフォーマンスに悪影響を及ぼしかねない状況だ。2018年1月6日のアンダルシアダービーも、ホームで3-5の屈辱を味わった。ラモン・サンチェス・ピスファンでは1年2か月ぶりの敗戦となり、続くアラベス戦(アウェイ)も0-1の完封負け。新監督の船出は最悪と表現して差し支えない。

また、チャンピオンズリーグのグループステージでも12失点。決勝ラウンドに進出した16チームのなかではワーストだ。スパルタ・モスクワとのアウェイで5失点、リヴァプール戦はホームで3失点を喫するなど、守備力に不安があることはデータが証明している。人をつかむ意識が強すぎるのか、ブラインドスペースがスカスカだったり、背後にいる相手選手を見落としたりするミスも非常に多い。ヘスス・ナバス、ノリートは相変わらず攻→守の切り替えが遅く、なぜマンチェスター・シティを戦力外となったのか、すっかり忘れてしまったようだ。

『天才』エベル・バネガのプレイは必見であり、高等技術と豊富なアイデアはフットボールの魅力満載だが、この男の才能だけで勝てるほど、チャンピオンズリーグは甘くない。

ベスト8へ盤石のユナイテッド 懸念されるのはハードスケジュール

ベスト8へ盤石のユナイテッド 懸念されるのはハードスケジュール

モウリーニョとその仲間たちは下馬評通りベスト8進出を決められるか? photo/Getty Images

戦略・戦術云々ではなく、今シーズンのユナイテッドは主力5選手の好不調が成績に直結している。ダビド・デ・ヘア、エリック・バイリー、 ネマニャ・マティッチ、ポール・ポグバ、ロメル・ルカクが揃って健康体の場合は、シーズン序盤で見せたような快進撃の再現も期待できる。しかし、足首を手術したバイリーは、セビージャ戦には起用できない。広範囲のエリアをカバーできる凄腕DFの戦線離脱によって、ユナイテッドの守りには一抹の不安が隠せない。近ごろはセットプレイに脆く、プレミアリーグでもばたつくケースが多くなってきた。バネガの正確なキックから、スティーブン・エンゾンジ、シモン・ケアーといったストロングヘッダーに苦しむことも覚悟する必要があるだろう。至近距離からフリーで撃たれると、デ・ヘアでも防ぎようがない。  

また、国内のスケジュールも気になるところだ。スペインやイタリアでは、ヨーロッパのコンペティションに参戦するチームをサポートするため、 国内リーグのスケジュールを変更するが、イングランドは徹底的にプレミアリーグ・ファーストだ。セビージャとのファーストレグから2日後にチェルシー戦が、セカンドレグの3日前にはリヴァプール戦が予定されている。ユナイテッドのプレイ強度が落ち、セビージャに付け入る隙を与えたとしても決して不思議ではない。それでも総合力で上まわり、ベンチワークでも一歩も二歩も上のユナイテッドが有利であることに疑いの余地はない。ジョゼ・モウリーニョとモンテッラでは修羅場の経験値が比較にならず、後者は監督就任後2か月足らずだ。組織をまとめる時間があまりにも少なすぎる。

そしてルカクのフィジカルが大きなポイントになるのではないだろうか。ラ・リーガにはルカクのようなスーパーパワー系のFWは存在しない。最初の接近遭遇で強めにブチかましてセビージャDF陣に恐怖心を与え、精神的なアドバンテージを握りさえすれば、前線で基準点を作る作業は極めて簡単になる。

さらに、ボール奪取のターゲットも絞るべきだ。ビルドアップする際、 セビージャはエンゾンジを経由するケースが多いが、厳しめのプレスを嫌がる傾向にある。ユナイテッドは基本的な重心が低く、前方からのプレスは多用しないが、相手の弱点をつけばチャンスは広がる。エンゾンジを徹底的に潰すプランも一考の余地はある。  

バイリーの欠場が決定的で、ポグバの古傷、ルカクとマティッチの疲労が気になるとはいえ、あらゆる面でユナイテッドに一日の長があることは誰もが認めるはずだ。準備を怠らず、集中力を研ぎ澄ましたパフォーマンスを持続すれば、ベスト8進出はほぼ間違いない。しかも、アーセナルのアレクシス・サンチェスの獲得が濃厚と伝えられている (※編注:1月22日に加入が正式決定)。今シーズンのチャンピオンズリーグには出場していないため、決勝ラウンドからの登録が可能だ。彼の加入が決定したとき、ユナイテッドがセビージャを撃破する確率はさらに上昇する。


文/粕谷秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD194号 2018年1月23日配信の記事より転載


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