【特集/CLラウンド16プレビュー#6】“堅守+α”が求められるチェルシー 闘将コンテにバルサ封じの秘策はあるのか

チェルシーは “普段通り”の戦い方がベスト

チェルシーは “普段通り”の戦い方がベスト

バルセロナの強力攻撃陣に挑むコンテ監督 photo/Getty Images

バルセロナと対戦するチームにとって、最大の問題は言うまでもなくメッシだ。リーガ・エスパニョーラ第17節でバルセロナと対戦したレアル・マドリードは、コバチッチをマンツーマンでメッシにつける作戦で前半は同選手を完封している。今季開幕前のスーペルコパでもこのやり方で上手くいっていた。単純にメッシをマンマークするというより、押し込んでいるときにはコバチッチがバルサの攻撃の起点であるブスケッツをマークし、自陣ではブスケッツをベンゼマに受け渡してメッ シに密着する、縦にマークを受け渡す方式だった。  

ところが、後半にバルセロナがポジションを整備してレアルのマンマークを拡散させ、メッシもここぞというところで仕事をして3-0でバルセロナが勝利している。終わってみればやはりメッシにやられていた。メッシに90分間何もさせないのは困難で、プランとして成り立たないと考えて良い。カンテやバカヨコにコバチッチの仕事をさせる手もあるとはいえ、たとえ90分間抑えられたとしても180分間(2試合分)が無事に済むとは思えない。

1stレグをホームで戦うチェルシーとしては、何としてもここで勝利を収めたい。カンプ・ノウで勝つのは過去の例からしても至難の業だからだ。メッシ対策は重要だが、 基本的には普段通りにプレイするほうが得策だろう。もともとチェルシーの守備は堅い。引いたときは5バックなのでスペースは完全に埋まっているし、5バックの手前もカンテとバカヨコがいるのでボール奪取能力は非常に高い。2シャドー(アザールとセスクまたはウィリアン)も引いてくる。バルセロナにボールを支配されれば[5-4-1]の布陣で守ることになる。コンパクトに守れば、バルセロナといえども簡単には崩せないだろう。メッシもパスを受けられるスペースを探すのに苦労するはずだ。

イニエスタへの守備が勝敗のポイントに

イニエスタへの守備が勝敗のポイントに

正確なパスでバルセロナの攻撃を司るイニエスタ photo/Getty Images

チェルシーにとって厄介なのはむしろイニエスタではないかと思う。今季のバルセロナは[4-4-2] の布陣を基本にしているが、押し込んだときの陣形は変則的だ。両サイドバックは高い位置へ進出する。後方に残るのは2人のセンターバックとブスケッツ、そして場合によってラキティッチ。右MFのパウリーニョは中央へ入っていく。L・ スアレスは最前線の中央から左側、メッシは主に右側にいるが例によって相手のDFとMFの隙間に立ってパスを待つ。チェルシーのカンテとバカヨコは、メッシとパウリーニョが気になる。そうすると、左のイニエスタのマークがどうしても浮いてくることが予想できる。直接マッチアップするのはチェルシーの右側のシャドー(たぶんセスク)なのだが、イニエスタへ寄りすぎればバルサの左サイドバック(J・アルバ)がフリーになりすぎてしまい、そこへ繋がれてしまえばイニエスタはどのみちフリーになる。イニエスタがフリーになれば玉突き的にパウリーニョやメッシへのマークも甘くなる。チェルシーは通常の守備組織でメッシはある程度抑えられる。しかし、イニエスタへの対策を怠ればそこから崩壊しかねない。

EURO2016の再現を果たしたいコンテ監督だが......

EURO2016の再現を果たしたいコンテ監督だが......

大一番でアザールは輝けるか photo/Getty Images

コンテ監督はEURO2016でイタリア代表を率い、スペイン代表を破っている。イタリア代表とチェ ルシーは戦術的にほぼ同じで、スペイン代表もバルセロナと似ている。バルセロナ戦の勝ち方は心得ているわけだ。EUROのときはスペースを消して守り、スペインのパスワークに渋滞を起こさせた。そして奪ったら縦へ素早くフィード、スペースがあるうちにMFがFWをサポートしてフィニッシュへ持っていった。2人のセンターバックの手前のスペースを守るブスケッツにはスピードがないので、広いスペースを走ってカバーできない。EUROのときのイタリア代表は2トップだった。スペイン代表のセンターバックとは2対2の関係になるので手前のスペースを埋めるのはブスケッツの役割になっていた。ハイプレスの出口封鎖には傑出した能力を持つブスケッツだが、そこを頭越しに飛ばされて背走したときにはスピードのなさが致命的になっていた。コンテ監督がEUROの再現を狙うなら、2トップの可能性はあるかもしれない。

ところが、バルセロナはスペイン代表と違っていて、カウンター・ケアを担当するのがブスケッツ1人ではない。もう1人、ラキティッチがいる。EUROのときのように、単純に縦へ蹴ってスペースでセカンドボールを拾う策にさほどの効果は期待できなさそうなのだ。ただ、カンテとバカヨコのコンビにMFをもう1枚加えてイニエスタをカバーし、2トップを残す形でカウンターという手は考えられる。センターバック2人とブスケッツ+ラキティッチの4人に対して、当面2トップで時間を作らないとカウンターにならないが、モラタやアザール、ウィリアン、 バチュアイ(※編注:1月にドルトムントへ移籍)なら何とかできるかもしれない。チェルシーはとりあえず「バスを置く」だろう。ただ、それだけでは勝てない。チャンスには勇気を持ってMFやDFが前に出ていくことがカギになるのではないか。


文/西部謙司
1995年から98年までパリに在住し、サッカー専門誌 『ストライカー』の編集記者を経て2002年からフリーランスとして活動。主にヨーロッパサッカーを中心に 取材する。『フットボリスタ』などにコラムを寄稿し、 「ゴールへのルート(Gakken)、『戦術リストランテ4』 (ソル・メディア)など著書多数。Twitterアカウント:@kenji_nishibe

theWORLD194号 2018年1月23日配信の記事より転載



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