ホームゲームだっただけに、バイエルンにとっては痛い敗戦だ。1stレグでは前半早々から押し込んではいたものの、38分にラウタロ・マルティネスにテクニカルなアウトサイドのシュートを叩き込まれ、先制を許してしまう。後半にさらに攻勢を強めるなか、85分に途中出場のトーマス・ミュラーがコンラッド・ライマーの浮き球のクロスに反応しようやく同点弾を沈めるが、直後にダビデ・フラッテージの決勝弾を浴びて、敗れてしまった。
ボールポゼッションとハイプレスから好機も作り出していたが、決定機を決められなかったことが悔やまれる。特にハリー・ケインは26分にマイケル・オリーセからの絶好のお膳立てを外してしまい、これを決めきれなかったことが結果的に大きく響いてしまった。
バイエルンは怪我人の多さに悩まされており、特に攻撃の局面ではジャマル・ムシアラを欠いたことも響いたかもしれない。代役をラファエル・ゲレイロが務め、チャンスにも絡んでいたが、やはりあの狭い局面をものともしないドリブルに頼れないのは痛い。
守備陣にも守護神のマヌエル・ノイアーをはじめ、ダヨ・ウパメカノ、アルフォンソ・デイビス、そして伊藤洋輝と離脱者が続出しているため、このチーム状況も2ndレグに大きく影を落としている。
ところで、インテル×バイエルンといえば09-10シーズンのCL決勝が思い出される。ジョゼ・モウリーニョ率いるインテルと、ルイ・ファン・ハール率いるバイエルンの対決は、前半にクリアボールを巧みにつないだインテルがディエゴ・ミリートのゴールによって先制。後半はアリエン・ロッベンを中心にバイエルンが懸命に攻めるも、カウンターから失点。インテルが2-0と制したゲームだった。1stレグでビハインドを負ったバイエルンは、この決勝戦の後半のようなゲームを強いられる可能性が考えられる。このときバイエルンはフランク・リベリを欠いていたが、それもムシアラがいない現在のバイエルンの状況とダブって見える。
バイエルンとしては、敵地ジュゼッペ・メアッツァで試合開始から前がかりにいかざるを得ない。しかし、それはインテルの土俵で戦うことを意味する。インテルはもともとハイプレスで追い回すようなチームではなく、どっしり構えてある程度相手を引き込んだところで、苛烈なミドルプレスでボールを回収しカウンターにつなげていく戦い方を得意とする。最終ラインも岩のように堅く、バイエルンは1stレグと同じようになかなかこじ開けられない時間を過ごすことになるだろう。なにせ今季、インテルはCLの舞台で8度のクリーンシートを記録しているチームだ。今大会での失点数はわずかに「3」。いくらバイエルンといえど、インテルを相手にビハインドをひっくり返すのは並大抵ではない。
それを実現する神通力をもった選手がいるとすれば、ミュラーかもしれない。今季限りで退団を表明しているこの大ベテランは1stレグでもゴールをこじ開けたように、チームに大きなものをもたらしてくれる。ピッチ上の監督ともいうべきミュラーがチームを引っ張ることができれば、インテルの堅守に穴を開ける可能性はある。
もちろんインテルも両ウイングバックが推進力をみせる、マルクス・テュラムがボールを収める、ラウタロが裏抜けを狙うなどでバイエルンの裏を常に突き続けなければならない。全力で攻撃にくるバイエルンを相手にただ受け続けているだけでは厳しい展開になる。しかし、やはりインテルがホームで2失点することは考えにくく、0-0あるいは1-1でインテル勝ち抜けというのが真っ当な予想だろうか。バイエルンがもしひっくり返すようなことがあれば、やはりCLはわからないという一例をまたも増やすことになり、そんな展開にも期待したいところだが。