[水沼貴史]整備されたケイン&ソンの連係 モウリーニョはトッテナムをどう変えたのか

水沼貴史の欧蹴爛漫049

水沼貴史の欧蹴爛漫049

トッテナムの攻撃を牽引しているソン・フンミンとハリー・ケイン photo/Getty Images 

トッテナム好調の要因は

水沼貴史です。エヴァートン、レスター、アストン・ヴィラ、サウサンプトンといったダークホースの序盤戦での健闘や、マンチェスター・シティの思わぬ躓き(現在リーグ13位)など、今季のプレミアリーグも見どころ満載ですね。紹介したいクラブは沢山あるのですが、今回は今季のプレミアリーグ9試合消化時点で6勝2分け1敗の首位と、好スタートを切ったトッテナムの現状についてお話しします。昨年11月にジョゼ・モウリーニョ監督が就任してから早1年。稀代の優勝請負人のもとで、トッテナムはどのような変化を遂げたのでしょうか。

マウリシオ・ポチェッティーノ前監督時代と比べると、エースのハリー・ケインが最前線に張るだけでなく、中盤に降りてチャンスメイクを担う場面が増えた印象があります。特にケインとソン・フンミンの連係が絶妙ですね。ケインが中盤に降りて相手のセンターバックやサイドバックを釣り出し、これによって生まれたスペースにソンが走るという約束事が、モウリーニョ監督によって徹底されているように見受けられます。

この攻撃パターンが威力を発揮したのが、今月21日に行われたマンチェスター・シティ戦(プレミア第9節)でのソンのゴールの場面です。ここでは中盤に降りたケインに相手のセンターバックであるアイメリック・ラポルテとルベン・ディアスが引きつけられたことで最終ラインの背後にスペースができ、そこに走り込んだソンがMFタンギー・エンドンベレからのパスを受けたことでゴールが生まれました。

話が遡りますが、10月4日のマンチェスター・ユナイテッド戦(プレミア第4節)でも、この攻撃パターンがゴールに繋がりましたね。前半7分のソンのゴールシーンをよく見て頂きたいのですが、ここでもケインが中盤に降りて、相手DFハリー・マグワイアを釣り出しています。マグワイアに倒されたことで得たフリーキックをケインが素早く始めたことも得点が生まれた要因のひとつですが、マグワイアが前に出たことで生まれたスペースをソンが抜かりなく狙っていたことも、見逃せない要素です。多少のコンタクトプレイではボールコントロールが乱れないケインと、いち早くスペースを見つけてそこへ走ることが得意なソン。この2人の特性を活かした攻め方をモウリーニョ監督が編み出したことでトッテナムの攻撃がスムーズになり、これが彼らのスタートダッシュの成功に繋がったのではないかと、私は感じています。

複数のビッグクラブを渡り歩き、数多のタイトルを手にしてきたモウリーニョ監督。トッテナムをプレミア優勝に導くことができるか photo/Getty Images 

“モウリーニョ好み”の選手が揃い、漂うタイトル獲得の予感

今季もレギュラーとして活躍しているソンは既にリーグ戦で9得点2アシストを叩き出していることもあり、攻撃面での貢献度がクローズアップされがちですが、守備面でもチームの助けになっていますね。相手チームが自陣後方からビルドアップしてくる際には、対面のサイドバックに欠かさずチェイシングを行っています。サイドハーフに献身的な守備を求める傾向が強いモウリーニョ監督にとって、ソンは恰好の逸材なのではないでしょうか。ガレス・ベイル、ステーフェン・ベルフワイン、ルーカス・モウラ、エリック・ラメラなど、サイドハーフの選手層が厚いなかでもソンが先発で起用され続けている事実から、彼に対するモウリーニョ監督の絶大な信頼が窺えます。

トッテナムの躍進の要因をもう一つ挙げるとすれば、球際で強さを発揮でき、守備意識の高い“モウリーニョ好みのMF”が多く揃っていることでしょう。直近のリーグ戦ではムサ・シソコとピエール・エミール・ホイビュルクの2ボランチ、エンドンベレのトップ下という布陣が固定されていますが、3人とも肉弾戦を厭いませんし、ボールを奪われた後の帰陣であったり、相手の攻撃を遅らせるためのボールホルダーへの寄せも速い。トッテナムが今季のプレミア9試合消化時点で、全20チーム中最も少ない失点数(9失点)に留まっているのも、この3人が中盤で献身的に守備をこなしているからこそだと思います。

今の本拠地(トッテナム・ホットスパー・スタジアム)を建設するために多額の資金を費やしたことで、近年は大型補強に動けなかったトッテナムですが、今年の夏にホイビュルクやベイル、マット・ドハーティやセルヒオ・レギロンと実力充分の両サイドバックを獲得したことからも、タイトル獲得への本気度が窺えます。選手補強の面でクラブ首脳から手厚いバックアップを受けたモウリーニョ監督が、今季トッテナムを頂点に導くのか。今月29日に行われるチェルシー戦(第10節)、そして来月6日のアーセナル戦(第11節)や16日のリヴァプール戦(第13節)は、モウリーニョ・スパーズにとって真価の問われる試合となるでしょう。この強豪との連戦でトッテナムが連勝するようであれば、今季のプレミアの主役は彼らになるかもしれませんね。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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