[ロシアW杯#18]ポルトガルが老獪な守備披露 “ロナウド砲”でモロッコ粉砕 

モロッコのゲームプランを崩したロナウドの一撃

モロッコのゲームプランを崩したロナウドの一撃

ロナウドは2戦連続ゴールで勝利に貢献 photo/Getty Images

実力差があると考えられるチームが対戦するときに、弱者がやってはならないことがある。強者に先制点を許し、相手を楽にしてしまうことだ。そういった意味で、この日のモロッコはあまりにも早い時間帯に得点を許してしまった。

開始4分、立て続けにあったCKの2本目、ショートコーナーでゴール前の守備が乱れ、ロナウドに会心のヘディングシュートを叩き込まれた。ロナウドは初戦でハットトリックを達成したのに続くゴールで、早くも大会4得点となった。

その後のポルトガルは強く守備を意識し、少ない人数で追加点を目指すリスクを冒さない戦いに終始した。対して1点を追いかけるモロッコは[4-1-4-1]の布陣を取り、中盤を厚くしてゴールを目指した。中盤両サイドのツィエク、N・アムラバトは突破力があり、ゴール前に何本もクロスを供給した。しかし、前線のブタイブが厳しいマークを受けており、なかなか決定的な場面を作れなかった。
それでも、各選手の運動量ではモロッコが勝っており、ルーズボールをインサイドハーフのベルアンダ、ブスファ、アンカーのエル・アフマディらが拾うことで勢いのある攻撃をみせていた。しかし、サイドを崩し、中盤でルーズボールを獲得することはできるが、肝心のゴール前ではブタイブが厳しいマークを受けており、クロスやラストパスがシュートに繋がるケースは少なかった。

ポルトガルの速攻が機能 モロッコは拙攻を改善できず

ポルトガルの速攻が機能 モロッコは拙攻を改善できず

ポルトガルは自陣ゴール前でブロックを形成し、何度もシュートを跳ね返した photo/Getty Images

後半になっても状況は変わらず、同点を目指すモロッコが懸命に攻撃を仕掛け、ポルトガルが跳ね返すという展開に。55分、57分にはベルアンダが右足、ヘディングでゴールを狙ったが、1本目はDFに当たり、2本目はGKルイ・パトリシオの好セーブにあった。さらに60分にはFKの流れからゴール前に攻撃参加していたベナティアが左足でフィニッシュしたが、ボールはクロスバーを越えた。ベナティアはアディショナルタイムにもゴール前でシュートしたが、これもクロスバーを越えて最後まで1点を奪うことができなかった。

一方、ポルトガルは勝負どころを心得ていた。シュート数、ポゼッションともに相手を下回ったが、なによりも大事なのは勝点3の獲得であり、中盤やサイドを支配されても最後の最後、ゴール前でやられないことを重視し、実際に得点を許さなかった。

また、失点しないことを最優先に考えたなか、相手が隙を見せたときにはしっかりと鋭いカウンターを仕掛けていた。51分にはジョアン・マリオ、ゴンサロ・グエデスでチャンスを作り、最後はロナウドがフリーでフィニッシュした。追加点にはならなかったが、精度の高いカウンターから作り出した決定的なチャンスだった。

1点をリードして受け身にまわったポルトガルから得点を奪うのは至難の業だ。懸命に自国を応援していたモロッコ・サポーターも時間の経過とともにストレスを感じ、後半なかばにはブーイングを浴びせていた。緩い部分もあったが、締めるところは締める──。ポルトガルの老獪さが出た一戦だった。

[スコア]
ポルトガル代表 1-0 モロッコ代表

[得点者]
ポルトガル代表:ロナウド(4)


文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD205号 2018年6月21日配信の記事より転載

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