日本代表が欧州遠征を行ない、ブラジルに1-3、ベルギーには0-1で敗れました。まずブラジル戦についてですが、端的に指摘すると守備に関してこれまではボールを奪えていたところで奪うことができず、プレッシャーをうまく外されていました。
試合序盤から積極的にプレッシャーをかけていましたが、ボールを奪えないことで全体的に中途半端になり、ビデオ判定で先制点を許したことでさらにバランスを崩してしまいました。ただ、私はPKによるあの失点がなかったとしても内容や結果は変わらなかったと考えています。ピッチの上では、普段見ているだけ、聞いているだけではわからない貴重な実体験ができます。これまではボールを取れていたところで取れない──。相手が一枚も二枚も上で、この違いは実際に戦った選手にしかわからない部分があります。そういった意味で、今回選手たちはいろいろな質の違いを体感できたと思います。
ブラジルの選手たちはポジジョン取りがうまく、嫌なところに各選手が顔を出し、正確にパスをつないできました。プレッシャーをかけても素早くいなされるため、ボールを奪いに行くのか、行かないのか意思統一が乱れてきて中途半端になっていきました。
後半にセットプレイから1点を返したことで「後半は1-0で勝っている」という評価も聞かれましたが、もし同点で折り返していたらもっとパワーアップしたブラジルが見られたはずです。GKを交代するなどして自分たちはあまり前に出ず、巧みに日本の背後を狙う。ブラジルはそういうサッカーに切り替えていました。
改めて感じたのですが、ブラジルは試合を通じてオフ・ザ・ボールも含めて動きにムダがなく、シンプルなところは本当にシンプルにプレイしていました。パススピードやパスの質にも大きな違いがあるので、こうした部分は必ず上げていかないといけないです。
センチメーターパスと言えばいいのか、少しでもパスがズレてトラップがルーズになると、すぐに相手DFに奪われます。また、何気ない横パスをカットされたり、ゴール前とのタイミングを合わせずに簡単に入れてしまうクロスも気になりました。こうしたパス1本の質にこだわってプレイしないと、世界では戦えません。
これはベルギー戦でも同じで、ブラジル戦の反省を生かして意思統一してプレッシャーをかけていましたが、ベルギーはいつもと少しメンバーが変わっていて、なおかつ試合序盤の日本の戦い方を見て(日本に)ボールを持たせている時間もありました。そして、ブラジル戦と同じく日本の攻撃には“怖さ”がありませんでした。ベルギーにとっては対戦相手との実力差や試合展開を考え、それにマッチしたゲームプランで戦い、しっかりと1点を奪って勝利した一戦でした。
惜敗でもなんでもなく、ベルギーが賢く戦った結果の1点差でした。彼らの戦い方にはメリハリがあり、どういう状況においてもしたたかに1点を奪って勝利できるのが強いチームです。私は98年フランスW杯で実際にプレイした経験から、強国の真の強さを肌で知っています。あのときもアルゼンチン戦、クロアチア戦ともに0-1でしたが、彼らはそういう勝ち方ができるのです。このままだと、約7か月後のロシアW杯でも同じ光景を目にすることになるかもしれません。
メディアが「惜敗」として報道したのも気になりました。実際は2戦とも実力差を感じさせられた惜しくもなんともない敗戦です。日本サッカー全体の成長を考えると、「惜敗」として伝えるのではなく、ありのままの事実を伝えるべきだと感じました。