[独占取材:北野颯太(セレッソ大阪)]C大阪から注目株がまたひとり 香川、乾の後を継ぐのはゴールに飢える18歳

 Jリーグには、10代のうちから存在感を示す選手もいる。セレッソ大阪FW・北野颯太はそんなひとりだ。高1ながらC大阪U-23の一員としてJ3のピッチに立ち、公式戦デビュー。そして昨シーズン、高3でプロ契約をかわし、ルヴァン杯ではゴールも奪った。北野は、柿谷曜一朗、香川真司、乾貴士などを輩出してきたC大阪が誇る次世代スター候補で、U-20アジア杯では10番を背負ってプレイした。

 ここまで順風満帆に見えるサッカーキャリアだが、U-20アジア杯では無事にU-20W杯の出場権を獲得した一方で、個人としてはゴールを奪うことができず、チームとしてもPK戦の末に準決勝敗退。悔しさも味わった。

 高校を卒業したばかりの18歳は、いまなにを考え、なにを見据えてプレイしているのか。U-20アジア杯の感覚が残っている帰国後間もない北野に胸の内を聞いた(2023年4月7日取材)。

期待に応えるためにもいまは結果を残さないと

期待に応えるためにもいまは結果を残さないと

優秀な若手を多く輩出するC大阪で注目される北野 photo/Getty Images

-プロサッカー選手になる。そう意識したのはいつ頃なのでしょうか?

「サッカーをはじめて、TVでJリーグや代表戦を見るようになり、軽い感じでなりたいなと思っていました。現実的に考えて本格的に取り組んだのは中学生ぐらいです。身体がそんなに大きくなかったので、まずは技術力を高めないといけないと思っていました」

-その後、C大阪U-18に所属しながらトップの試合に出ることもありました。プレイするカテゴリーが変わっていきましたが、どう感じていたのですか?
「U-18では技術であったりドリブルであったり、ゴール前のクオリティにしてもやれていたのですが、トップの練習に入るとぜんぜんでした。当時はU-23でJ3も戦っていましたが、上のレベルにいくと通用しないことが多かったです。一番感じたのは、スピードですね。普通に走るスピードもそうだし、判断のスピードもそうです。慣れるのに時間がかかったところで、壁にぶち当たったというか」

-しかし、高3でプロ契約しています。即決でしたか、不安はありましたか?

「プロになることしか考えていなかったので、話をもらったときはただ嬉しくて断る理由はなかったです。この世界のことをなにも知らず、期待しかなかったです。自分が楽しくサッカーをできればという感じだったんですが、だんだん変わっていきました。サポーターの思いなどいろいろ背負っているので、責任感を持ってプレイしないといけない。期待に応えるためにも、いまは結果を残さないといけない気持ちが強いです」

-小菊昭雄監督から求められていることと、自身のストロングポイントをどう認識していますか?

「監督からは常に『試合を決めて来いよ』と言われています。ストロングについては、ファーストタッチや相手の逆を突く動き、スピードのあるプレイ、キレのあるドリブル、それからシュートをみなさんに見てほしいですね。そうしたプレイにこだわりながら、結果を求められているので点を取らないといけないです」

-得点数に関して、具体的にイメージしている数字はありますか?

「取れるだけ取りたいです。アシストもできるだけしたい。具体的に目指している数字はないですが、去年のルヴァン杯で3得点だったので、それ以上は取りたい。リーグ戦でまだゴールがないので、去年からずっと狙っています」

-その目標を達成するためにより必要なものとは?

「 一番はもちろん、シュートテクニックをもっと高めないといけないです。メンタルに関しても、ゴール前でひとつ深呼吸するぐらいの落ち着きがあれば状況をもっと見ることができると思います。ビルドアップのところも大事ですが、結果を残すことを考えるとやはりゴール前の落ち着きが必要かなと思っています。どんなカタチでもいいので、まずは1点です。自分がノッてくるタイプかどうかわかりませんが、得点することで試合に使われるようになれば量産できる……そういうイメージはしています」

U-20アジア杯では自身の課題が明確に

U-20アジア杯では自身の課題が明確に

U-20日本代表では10番をつけてプレイ。無事にW杯の出場権を獲得し、最低限の目標は達成 photo/Getty Images

-U-20アジア杯でベスト4に入り、U-20W杯の出場権を獲得しました。アジア勢と戦い、どのような収穫を得て帰ってきましたか?

「チームとしてW杯の出場権を取れたので、最低限の目標は達成できました。個人としてはそんなに良くない大会でした。得点できるチャンスが多かったなか、取れなかった。ホントに悔しかったし、改めて自分の課題がはっきりしました。やっぱり、一番はゴール前のところですね」-冨樫剛一監督からはどのような言葉がありましたか?

「前線の選手なので、“ゴール”ということは言われています。もちろん、それ以外のところ、守備でハードワークする部分やビルドアップの方法。起点になりながら、しっかりとゴール前に入っていくというところは常に言われています」

-U-20W杯に向けては、どのようなイメージを持っていますか?

「開催地がどこになるのか決まっていませんが、選手としてはどこでやっても変わりません。U-20W杯で活躍すれば世界に行くチャンスが増えると思うのでそこは意識せざるを得ませんが、まずはセレッソでしっかり結果を残さないといけない。その延長線上にU-20W杯があると思っています」

-アンダー代表ではなく、日本代表はいまどういう位置づけで見ていますか?

「Jリーグで結果を残し、U-20W杯でも活躍すれば、という距離感でそう遠くはないです。もうすぐそこ、という感じです。掴めるかどうかは、自分次第です」

点をいっぱい取って日の丸を背負う選手に

点をいっぱい取って日の丸を背負う選手に

今季開幕戦では、2トップの一角としてスタメンに名を連ねた photo/Getty Images

-普段、よく見ている海外のリーグはありますか?

「フルというよりはハイライトのほうが多いのですが、プレミアリーグはよく見ます。いまはやっぱりアーセナルですね。前線に強烈な選手もいて、自分と同じポジションやプレイスタイルの選手に自然と目がいきます。サカはドリブルでいくタイプだし、ウーデゴーは他の選手が見ていないところを見ているし、足元の技術もあって自分でも持っていける。好きなタイプの選手で、自分もそっち系だと思うのでマネしたいですね」

-北野選手は長い距離をドリブルするときがありますが、どのようなことを意識してボールを運んでいるのでしょうか?

「ボールを持った状態でのスピードには、ある程度の自信があります。あとは感覚的なことですが、身体の使い方ですね。相手の力も利用しながら、前進していく。寄せてきた瞬間にスッと身体を入れたり、かわしたりは意識しています。これまでの経験から得たものとして、状況によってはムリに抵抗しないでちょっと力を抜いてあげる。逃げる感じでいくと、前に持っていける感覚があります」

-これまでの経験という部分で、苦労した時期、挫折した時期などはありましたか?

「挫折ではないですが、ユースのときにSBをやっている時期があって、そのときは『なんでや!』という感じでした。3カ月ぐらいやったかな。苦労した時期で、あのときはコーチや家族と相談しました。でも、僕だけではなかった。他の選手もSBをやったり、後ろの選手やったのにFWをやったりする選手もいました。いまになって考えてみれば、プレイの幅を広げるという意味でいい経験になりました。FWの動きとかも見れるようになったので、ムダではなかったです。FWがこういう動きをするとSBが助かるというのにも気づけたし、守備力もつきました」

-サッカーを続けてきたなか、大事にしてきたこと。揺らぐことのない根本、ベースなどがあれば教えてください。

「一番はやっぱり、サッカーを楽しむってことです。これは大事にしてて、正直ぜんぜん楽しめない時期もありましたが、そういうときは初心に戻る。行き詰まったときこそ、楽しむことが大事だと感じています」

-将来、こういう選手になっていたいという未来予想図は描いていますか?

「 海外のビッグクラブで中心選手となり、点をいっぱい取っていたいです。日の丸を背負う選手になりたいとも思っています」

-海外でプレイすることは、早い段階から思い描いていたのですか?

「アンダー代表で海外の選手と戦うと、力の差がありました。いろいろな方が、早いうちから海外でという話もしていますよね。早ければいいとは考えていませんが、同じ環境にいたほうが世界のレベルを知ることができるというのはあります。僕はセレッソでしっかりと結果を残して、自信を持って海外に行きたいと考えています」

 チームには過去に羨望の眼差しで見ていた香川真司がいる。憧れの選手であるとともに、いまは試合出場を争う「ライバル」だとも認識していると語ってくれた。プレイを盗みたいし、越えたいとも──。

 この環境に身を置いている北野颯太が、今後にどんな成長を遂げるのか。数年後、自身が思い描くとおりに海外のビッグクラブで得点を重ね、日の丸をつけてプレイしている姿を見たい。こうした若い選手一人一人の成長が、日本サッカーの未来を作っていくのだから。

インタビュー・文/飯塚 健司

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)280号、4月15日配信の記事より転載

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