シュツットガルトからバイエルンへ。ステップアップとなる移籍を果たした今季の伊藤洋輝は、バイエルンの最終ラインを安定させる貴重なピースとして活躍が期待されていた。しかし、不運にもシーズン前のトレーニングマッチで骨折し、一度目の手術を実施。リハビリを経て復帰に向けて準備を進めていた11月には二度目の手術を行い、前半戦に出場することができなかった。
伊藤がようやく今季の開幕を迎えたのは、2月12日に開催されたCLの16強進出をかけたセルティックとのプレイオフ第1戦で、2-0でリードする78分にラファエル・ゲレイロと交代でピッチに入り、バイエルンでデビューを飾った。そのまま左サイドバックを務めたが、最終ラインから冷静にビルドアップするなど落ち着いたプレイで試運転を終えた。
バイエルンぐらいのメガクラブになると、過密日程で多くの試合を戦っている。セルティック戦の3日後にブンデスリーガ22節のレヴァークーゼン(アウェイ)戦が行われたが、ヴァンサン・コンパニ監督は昨季王者との重要なこの一戦で伊藤を左サイドバックで先発起用した。
伊藤は左サイドバック、センターバックをこなせるし、ボランチでもいける。ラファエル・ゲレイロ、コンラッド・ライマーもサイドバックだけではなく、中盤でも稼働できる。無論、このチームにはジョシュア・キミッヒというポリバレントの代名詞のような選手がいる。ここに多様性がある伊藤が復帰したことで、コンパニ監督には選択肢が増えている。
続く23節フランクフルト戦にも左サイドバックで先発し、CKからルーズボールに素早く反応して日本人によるバイエルン初得点を記録している。24節シュツットガルト戦では交代出場で左サイドバック、25節ボーフム戦ではセンターバックで先発しており、コンパニ監督はすでに伊藤の特長を良くわかっている。今後も複数のポジションを任されると考えられる。シーズン終盤に向けて、いよいよ伊藤がフル稼働することになりそうだ。
板倉滉はボルシアMGで“不動のセンターバック”となり、ケガで欠場した19節ボーフム戦を除いて開幕から先発フル出場を続けている。予測能力に優れ、まずはポジショニングがいい。前に出て相手選手よりも先にボールへアプローチする守備ができて、体幹も強くて接触プレイでバランスを崩さない。足元の技術力も高く、正確なボールコントロール、精度の高いパスで攻撃の起点にもなれる。
今季は2節ボーフム戦、13節ドルトムント戦、15節ホッフェンハイム戦などで現地メディア選出のベストイレブンに選出されている。とくに、ドルトムント戦はニコ・エルベディとセンターバックコンビを組み、うまくラインをコントロール。この時点で公式戦10得点だったギニア代表のセール・ギラシを厳しくマークし、自由にプレイさせなかった。
板倉とボルシアMGの契約は26年6月まで。今年に入ってクラブは契約延長を打診したが、その後に期間が延長されたという情報はない。そうなると、今夏に移籍金を残して新天地へ移るのが濃厚で、オフシーズンの動向が注目される。もちろん、現在9位のボルシアMGがここから勝点を積み上げ、CL出場権を得るようなことがあれば残留という決断もあるだろう。
今冬にはPSVアイントホーフェンが獲得に動いているという話があった。過去にはドイツ国内の4つのクラブが狙っているというニュースが出たときもある。板倉はもはや可能性や将来性で獲得される選手ではなく、すでに実績十分で即戦力だと考えられている。現在、日本ナンバーワンのサムライ・センターバックだと言える。