【ロシアW杯展望/グループF】ドイツの牙城に揺るぎなし 韓国にはノーチャンスか

王者ドイツに死角なし メキシコは2位通過を狙う

王者ドイツに死角なし メキシコは2位通過を狙う

現在のドイツは本当に強い。順当ならグループリーグで敗退することはない photo/Getty Images

2014年ブラジルW杯に優勝し、EURO2016ではベスト4に進出。さらに、同年のリオ五輪でも決勝に進出し、開催国ブラジルにPK戦で敗れたが準優勝を飾った。そして、今年ロシアで開催されたコンフェデ杯にも優勝している。 現在、ドイツの強さ、安定感はずば抜けており、W杯欧州予選でも10戦全勝、43得点4失点という異次元の成績を残している。

14年に世界一になったチームから、フィリップ・ラーム、ミロスラ フ・クローゼ、バスティアン・シュバインシュタイガー、ルーカス・ポドルスキなどがいなくな った。これだけ選手が入れ替わるとチーム作りが頓挫しそうだが、組織化された育成システムをベースに次から次へと優秀な選手を生み出すことで“沈みの幅”を最小限にとどめ、むしろ以前より浮き上がっている。

ドイツの強化を振り返ると、EURO、リオ五輪、コンフェデ杯を通じて多くの若手が実戦経験を積み、選手層の底上げが図られてきた。EUROに出場したユリアン・ドラクスラー、ヨシュア・キミッヒ、レロイ・サネ、エムレ・チャンなどはリオ五輪に出場できる世代だったが、彼らはさまざまな事情でブラジルには行かなかった。リオで活躍したのはレオン・ゴレツカ、ニクラス・ジューレ、ユリアン・ブラントといったEUROを戦ったA代表にはいなかった若手たちで、それでも準優勝という好結果を残した。

欧州予選ではこれらの選手が徐々にピッチに立つようになり、さらにはブンデスリーガで得点を量産したティモ・ヴェルナーなどEURO、リオ 五輪には出場しなかった選手が台頭してきた。各国が羨む選手層の厚さは、今年開催されたコンフェデ杯で全世界に向けて示された。トーマス・ミュラー、メスト・エジル、マッツ・フンメルスといった経験豊富な選手たちに休養が与えられ、大会に出場したのはEUROやリオ五輪を経験した若手に、セバスティアン・ルディ、ラース・シュティンドルといったA代表の経験は少ないが、ブンデスリーガで活躍する選手たちだった。そして、“B代表”と言ってもいい編成だったにも関わらず、準決勝でメキシコを4-1で下し、決勝ではチリに1-0で競り勝って難なく優勝してしまった──。ドイツは無類の強さを誇る。今大会でも優勝候補であり、グループリー グで敗退することはまずない。

メキシコがラウンド16に進出するためには、エルナンデスのゴールが必要だ photo/Getty Images

初戦でこのドイツと対戦するメキシコには、コンフェデ杯の大敗が強く記憶に残っているはずだ。ボールをキープしてもドイツにプレッシャーをかけられ、なかなか前方へパスを出せずに危険なエリアで奪われ、素早いカウンターを受けて失点を重ねた。終了間際にFKから1点を返したが、大勢に影響はなく完敗だった。約1年を経ての再戦でメキシコがどんな戦いを見せるのか注目されるが、ドイツがよりパワーアップしていることを考えると実際は相当に厳しい。メキシコが照準を定めるのは、韓国戦、スウェーデン戦になる。

そして、この両国との対戦はメキシコにとってやりやすいかもしれない。どちらも高さ、強さがあるが、メキシコはこうした特長を持つチームのプレッシャーをかわすのがうまいし、選手個々の技術力ではメキシコがまさっている。おそらく、ボールをキープし、試合を支配することになる。あとは守備を固める相手から点を取れるかどうかだが、ドス・サントス兄弟、アンドレス・グアルダード、カルロス・ベラなどを擁する中盤はアイデアがあり、前線には決定力のあるハビエル・エルナンデスがいる。何事もなければ、2位でラウンド16に進出するか。

スウェーデン×韓国は熱い 敗者には先がない......

スウェーデン×韓国は熱い 敗者には先がない......

スウェーデンはプレイオフでイタリアと対戦。2試合を無失点で終えて出場権を得た photo/Getty Images

ドイツ、メキシコの牙城を崩すために、スウェーデン、韓国にはなにが必要か? 番狂わせを狙う両国にとって重要なのは、直接対決となる初戦だ。ここで勝点3を取れないと、その後の戦いがかなり難しくなる。逆に初戦で勝点3を取ることができれば、残り2試合は引分けを覚悟して戦うことができる。

その可能性を持つのは、やはりスウェーデンだ。欧州予選でヤン・ アンデション監督のもと統率の取れた戦いを続け、勝点で並んだオランダを得失点差で大きく上回ってプレイオフに進出。最終決戦となったイタリアとのホーム&アウェイでも組織的な守備を見せ、2試合トータル1-0で競り勝ってみせた。「プレイオフを通じてコレクティブなサッカーができた」と言葉を残したのはヤン・アンデション監督だ。ドイツ、メキシコと同組になったのは、強固な守備をベースに戦うスウェーデンにとって逆に良かったのかもしれない。

ただ、攻撃に目を向けるとズラタン・イブラヒモビッチが代表から引退したことで迫力がなく、爆発力に欠ける。オラ・トイヴォネン、マルクス・ベリといった前線でプレイする選手がいかにワンチャンスを決められるかがポイントで、まずは1点を取れるかどうかだ。そういった意味でも、韓国との初戦でしっかりとゴールを奪い、勝点3を得て勢いに乗りたいところだ。

ソン・フンミンを筆頭に、韓国の攻撃陣は豪華だ。彼らが活躍した先に、16強進出がある photo/Getty Images

当然、韓国にとってもスウェーデンとの初戦が重要になるが、厳しい戦いを強いられるのは間違いない。選手個々の力強さ、スピードなどを生かしてアジア最終予選を勝ち抜いたが、今年7月から指揮を執るシン・テヨン監督のもとチームを再構築中で、組織力や完成度ではドイツ、メキシコ、スウェーデンに大きく引き離されている。

本大会までの残り約6か月でどこまでチーム力を高められるかがポイントになるが、全員が揃ってプレイできる機会はもうわずかしかない。現実的には、個々の選手がコンディションを整えて「個」の力で勝負するしかない。幸い、韓国の中盤、前線には欧州でプレイする選手が多い。ソン・フンミン、キ・ソンヨン、ク・ジャチョル、ファン・ヒチャンといった“海外組”は普段から厳しい世界で戦っている。とにかく失点しないようにチーム全体で集中して守り、数少ないチャンスを彼らがモノにすることができれば、勝点を得られるかもしれない。

4か国とも国際大会の経験が豊富で、組合せが決定したときに“死 のグループ”とされた。ドイツ、メキシコ、韓国はリオ五輪でもグループリーグで一緒になり、このときは韓国、ドイツが決勝トーナメントに進み、メキシコが敗退している。なるほど、死のグループかもしれない。しかし、W杯ではこうした波乱は起きないだろう。現実的にみて、ドイツの力が飛び抜けていて、メキシコ、スウェーデンの順番に少し距離を置いて追いかけている状況だ。韓国はさらに離された位置、より遠くにいる。勝負の世界に絶対はなく“なにか”が起こるのがサッカーだが、それでもドイツがグループリーグで敗退 する姿は想像できない。ドイツはグループFだけでなく、ロシアW杯そのものの中心にいると考えていい。

文/飯塚 健司

サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。

theWORLD193号 2017年12月23日配信の記事より転載

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