日本はブラジルとの貴重な親善試合を活かせていない 2012年から変わらぬ展開の4連敗

実力の差を見せつけられた日本 photo/Getty Images

どれもW杯本番を想定したテストにはならず

ヴァイッド・ハリルホジッチ体制になってから初とも言える欧州遠征第1戦目は、ブラジル代表に実力の差を見せつけられる残念な結果となってしまった。この試合で採用されたビデオ判定によってPKを奪われるなどアンラッキーと思える部分もあったが、1-3で完敗したこの試合を評価するのは難しい。

何より残念なのは、強豪ブラジルと対戦できる貴重な場で何を得たのか分かりにくいということだ。今回は立ち上がりに積極的に前からプレスをかける姿勢を見せたものの、ブラジルのスピードある攻撃に日本の選手は圧倒されてしまった。そのプレイスピードについていくことができないままブラジルの猛攻を受け、前半17分の時点で2点差をつけられてしまった。ブラジルは前半36分にもガブリエウ・ジェズスの得点で3-0とリードを広げたため、事実上この時点で試合は終了したと言っていい。3点差もつけばブラジルの選手たちの戦い方も変わり、彼らの本気を引き出すのは難しくなってしまう。せっかくの強豪とのテストマッチが30分程度で終了してしまったのは非常にもったいない。

それは今回のブラジル戦に限ったことではない。近年のブラジルとの親善試合では同じような戦いを繰り返してしまっている。ザックジャパンとして臨んだ2012年10月の親善試合では前半12分にパウリーニョ、26分にネイマールに得点を許し、こちらも前半だけで試合が終わってしまった。
2013年はコンフェデレーションズカップの初戦でブラジルと対戦し、前半3分にいきなりネイマールにボレーシュートを決められて失点。ハビエル・アギーレの下で臨んだ2014年10月の親善試合では前半18分に同じくネイマールに先制を許している。先制したブラジルは日本にボールを持たせる時間帯を作り、そこから強烈なカウンターを見舞う形で得点を追加。2012年の親善試合、コンフェデと似たような展開で失点を重ねて0-4で敗れている。

親善試合はあくまでテストであり、結果にそれほどこだわる必要はない。コンフェデも公式戦だが、これも2014ブラジルワールドカップへ向けた準備という意識が強かった。問題はその試合から何を得たのかだ。例えば2012年に0-4で敗れた試合の後には、本田圭佑が「悔しかったけど楽しかった」と語っており、自分たちの理想とする攻撃の形がどこまでブラジルに通用するのかを試す場にはなった。0-4という結果は許されるものではないが、この時はまだブラジルワールドカップまで2年近くもある。自分たちの実力をテストする意味では収穫になった部分もある。

しかし今回のブラジル戦を含め、ワールドカップ本番に向けての収穫はあまりに少ない。このブラジルとの直近4試合に共通しているのは、腕試しばかりが強調されて本番に備えた戦いができなかったことにある。グループステージでブラジルのような世界トップレベルのチームと対戦した時、どう接戦に持ち込んで勝ち点を奪うのか。それをテストできたことは1度もない。4試合とも試合開始直後にブラジルの勢いやプレイスピードに圧倒され、当初のゲームプランが機能せず早い時間帯に失点。そこから立ち直れないまま失点を重ね、前半を終えてしまう。これはワールドカップ本番では許されないシナリオだ。例えばもっと本番を意識して守備的に戦い、前半を無失点で終えることを目標としたゲームプラ ンを立てても良い。仮に先制された場合でも、グループステージの得失点差を考えて最少失点のまま反撃の機をうかがう戦い方もテストできる。結局は4試合とも自分たちらしい戦いを意識して積極的な姿勢でゲームをスタートさせ、早い時間帯に先制されてからはとにかくゴールを目指そうと攻撃的に振舞った挙句カウンターアタックを喰らってしまうパターンだ。自分たちの理想とする戦い方を追い求めるのも良いが、果たしてそれがワールドカップ本番での正しい戦い方なのだろうか。

しかも今回は2012年、2014年の親善試合と違い、ロシアワールドカップまであと7か月のところまで迫っている。ブラジル級の相手と対戦できる機会は今回の欧州遠征くらいのもので、余計にショックは大きい。今回もビデオ判定という不運がありながらも前半だけで3失点。後半にブラジルがややリラックスしてしまったことを考えると、前半だけでテストマッチが終了してしまったのは非常に残念だ。仮に0-0のまま前半だけでも終えることができたならば、後半の交代策を含めもう少し本番に近いムードを感じることはできただろう。まだ14日のベルギー代表戦が残っているが、欧州遠征第1戦目は非常にもったいない内容で終えてしまった。

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