長友以上の左サイドバックがどれだけいる? ライバルを潰し続けてきた6年間

インテルでプレイする長友 photo/Getty Images

もはや長友を超えられるのはワールドクラスのみ

今夏には間違いなく放出されると言われていたインテル所属の日本 代表DF長友佑都の評価が急上昇している。 長友は今季から指揮を執るルチアーノ・ スパレッティの下で左サイドバックのポジションを確保しており、 3- 2で勝利した24日のサンプドリア戦でもイタリアのメディアから 非常に高い評価を得ていた。近年はメディアから厳しく評価されることも多く、 これほど称賛されたのは久しぶりではないだろうか。まさか今季長友がインテルでこれほど評価されると予想していた者は多くなかったはずだ。

2011年1月よりインテルでプレイする長友はチームの弱点の1 つと指摘され、右のダニーロ・ ダンブロージオと合わせサイドバックは今夏の重要な補強ポイント となっていた。クラブも当初の予定通りバレンシアからジョアン・ カンセロ、ニースからダウベルト・エンリケを獲得。 これでサイドバックの穴は埋まったはずだったのだが、左のダウベ ルトはここまで出場するたびにサポーターを失望させるパフォーマ ンスに終始している。 攻撃面でも目立った違いを作るわけでもなく、 守備面では1対1であっさり抜かれてしまうケースも目立つ。 初挑戦のセリエAの環境にまだ適応できていないのだろうが、 開幕前の予想に反して長友とダウベルトの評価は全く逆のものとな っている。

「今季こそは長友がスタメンから落ちる」、「 今回の市場では確実に長友が不要な選手になる」 など長友にはイタリアでもネガティブな意見が多かったが、 インテルが新しいサイドバックを連れてくるたびに長友は評価を逆 転させてきた。近年のインテルは目立った成功を収めていないが、 それでも世界を代表する名門クラブであることに変わりはない。 選手は次々と入れ替わり、競争は激しい。長友の前にもアルバロ・ ペレイラ、ドドー、アレックス・テレス、クリスティアン・ アンサルディ、ジャネル・エルキン、そして今回のダウベルトとラ イバルが立ちはだかってきたが、 最後に指揮官の信用を掴むのは常に長友だ。 このことからも分かるように、 長友からレギュラーポジションを奪い取るほどの選手が欲しいのならばワールドクラスのサイドバックに多額の資金を投じるしかないのだ。
長友にも小柄ゆえに空中戦のターゲットにされたり、 守備時のポジショニングに難があったりと欠点はある。 しかしそれ以上に圧倒的なスピード、瞬発力、 豊富な運動量と長所が多く、 現在指揮を執るスパレッティのような攻撃的スタイルでは対戦相手 にとってかなり厄介な選手となる。守備時の1対1にも滅法強く、 それは昨季もローマFWモハメド・ サラー対策を任されたことが証明している。 小柄な日本人らしく横への動きに強く、 スピードもある長友を完璧にかわすことのできるドリブラーはそれ ほど多くない。 加えてイタリアに行ってからは攻撃面も確実に伸びており、 1対1でも相手DFを1人は外すだけのパターンを持っている。 クロスの質もどんどん高くなっ ており、 今年8月のオーストラリア代表戦では右足のクロスボールから浅野 拓磨のゴールを見事にアシスト。 日本代表においても長友のクロスが重要な武器であることを示している。 今回のサンプドリア戦でもサイドで相棒となっているイヴァン・ ペリシッチに長い縦パスを通した点などが非常に高く評価されてお り、プレイの引き出しは確実に増えた。

これまでインテルが獲得してきたアルバロ・ペレイラ、 アレックス・テレス、クリスティアン・ アンサルディらにこれと同様のことができるだろうか。 答えはNoだ。誰も長友クラスのスピードはなく、 攻守両面の1対1にも強くない。 クロスボールの質でも長友が圧倒的に劣っているわけではなく、 これらの要素から見ても最終的に長友がスタメンに落ち着くのは自然な流れと言える。このままダウベルトが挽回しなければ長友がス タメンを守り続けるはずで、 また1人長友に敗れたサイドバックが増えることになる。

今のサッカー界で長友以上に攻撃力のある左サイドバックを探すとなれば、 候補者はかなりのビッグネームに限られるのではないだろうか。 高い評価を得ている選手でいえばレアル・マドリードのマルセロ、 バイエルンのダビド・アラバ、バルセロナのジョルディ・アルバ、 ドルトムントのラファエル・ゲレイロも興味深く、 攻撃力で見るとトッテナムのダニー・ローズなども面白い。 同じセリエAではユヴェントスのアレックス・サンドロ、 質の高いボールを蹴るミランのリカルド・ ロドリゲスといったところか。 どの選手を獲得するにも多額の資金がかかり、 これまでインテルが獲得してきた選手たちのレベルでは長友を引き摺り下ろすには不十分だ。長友の場合は 安定感にやや問題があり、 昨季のナポリ戦で痛恨のクリアミスから失点を許してしまうなど時折不用意なプレイも目につく。 今後こうしたミスをしてしまえばイタリアのメディアは総攻撃をか けてくるだろう。 安定感の部分では長友を上回るサイドバックも多いが、 攻撃参加のスピードや質、 運動量などで長友を圧倒的に上回る選手はそれほど多くはないはずだ。スパレッティがダウベルト以上に評価をしても不思議はない。

気付けば長友はインテルで200試合出場を達成し、クラブは長友以上のサイドバックを探せないまま2017年も終わろうとしてい る。次の移籍市場では必ず放出されると言われ続けてきたが、 インテルのサポーターや伊メディアは長友を過小評価していたことを認めざるを得ないだろう。

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