【ハリルジャパンの此れまで・此れから #3】本田、香川、岡崎不在の大一番は世代交代の余波か

国際舞台での経験、実力 3人を完全に追い越す選手は未だなし

国際舞台での経験、実力 3人を完全に追い越す選手は未だなし

日本を背負ってきた男たち photo/Getty Images

ロシアW杯への出場を決める最 も重要な試合であるオーストラリア戦から、これまで主役を演じていた本田圭佑(31歳)、 香川真司(28歳)、 岡崎慎司(31歳 )たちの名前が消えた。彼らに代わって出場した浅野拓磨(22歳) 、 井手口陽介 (21歳)ら 若手が活躍し 、 過去W杯最終予選で一度も勝てなかったオーストラリアを破ってW杯出場権を獲得しただけに「世代交代」が実現され、本田たちの時代は終わりという声が大きくなった 。 しかし、果たして本当にそうだろうか。

本田、香川、岡崎の評価が以前ほど高くないのは確かだが、オーストラリア戦に出場しなかったからといって即「世代交代」とはならないだろう。年齢で切るなら同世代の長友佑都(31歳 )、 さらに年上の川島 永 嗣( 3 4 歳 ) 、 長谷部誠( 3 3 歳)はスタメンとして出場し、活躍している。 本田でいうなら今年はミランで半年間、ほとんどプレイしておらず、夏 に移籍したメキシコでも怪我のため にリハビリが続き、オ-ストラリア戦 前に試合に出たのは2試合のみで 後 半 か ら の 途 中 出 場 だ っ た 。 ハリルホジ ッチ監督は コンディションが整わず、試合勘がない状態を承知で日本代表に招集。合宿時にプレ イを確認したが試合を任せられる状態ではなかった。それゆえ出場を 断念したという。

香川は最近、使用頻度が高い[ 4 - 3 - 3 ] で は使いにくくなって い る。ボックスに近いところで怖さを見 せる選手なので外に開いた左サイ ドMFは香川よりも原口元気、乾貴 士の方 が 機能している 。 だ が 、[ 4 - 2 - 3 - 1 ] の ト ッ プ 下 で は 必 要 な 選 手。それにオ-ストラリア戦に限っていえば脱臼した左肩の調子が思 わしくなく、サウジアラビア戦前に チームから離脱している。ほとんどま と も に プ レ イ で き る 状 態 で は な か っ たということだ。 岡崎はコンディション的に問題は なかったがチーム戦術から溢れてし ま っ た 。 ポストプレイに長けて いる大迫勇也がチ - ム戦術にフィットしており、そういう状況ではなかなかスタメンに返り咲くのは難しい。それでも FWとしての経験や実績は十分で あるし、大迫とは異なる良さを持つ。岡崎を含め、彼らがすぐに代表を外 れることはないだろう。その理由は、 簡単だ。 まだ彼らを完全に追い越す選手が 出てきていないからだ。彼らのベストコ ンディション時でのパフォ-マンス、国 際舞台での経験値など、彼らを越えられる選手は国内外を見てもいない。 特に本田は万能型であらゆるポ ジションに対応できるし、コンディ ションさえ整えばレギュラ-復帰の 目も十分にある。また、選手の面倒 見がよく、アドバイスも積極的にし ている。オ-ストラリア戦でも井手 口のゴ-ルが決まった後、昌子源 を呼んで守備についてアドバイスを していた。仮に本来のプレイが十分 に で き な く て も 2 0 0 2 年日韓W杯での中山雅史、秋田豊、2 0 1 0 年南アフリカW杯での川口能活、 稲本潤一のようにチ-ムをまとめる 存在としても力を発揮してくれるだ ろう 。

急速な世代交代は現状ない 可能性のある若手の野心に期待

急速な世代交代は現状ない 可能性のある若手の野心に期待

評価を急上昇させる新鋭たち photo/Getty Images

本当の意味での世代交代とは 若手の選手がレギュラ-の選手との 競 争 に 打 ち 勝 っ て ポ ジ シ ョン を 確 立した時に起こる。あるいは監督の 判断によって選手を入れ替える時 に副産物的に起こるものだ。 監督の判断によって選手が大きく 変 わ っ た の は 、 2 0 0 3 年 親 善 試 合のアルゼンチン戦後と南アフリ カW杯直前の2回例がある。アル ゼンチン戦で大敗した後、ジ-コは 秋田豊、服部年宏、名良橋晃らベ テラン中心の最終ラインを宮本恒 靖、坪井慶介、山田暢久ら中堅 の選手に一気に替えた。のちに宮 本は代表の主将となるが、ドイツW 杯で戦うチ-ムのベ-スがこの時 に生まれた。 南アフリカW杯時は直前に戦術を大幅に変更したため、選手を入 れ替えた。それまでレギュラ-だっ た中村俊輔や岡崎慎司、楢崎正 剛らが抜け、フレッシュな本田、阿 部勇樹、川島永嗣らがレギュラ-となって活躍し、岡田監督はチ-ムを ベスト1 6に導いた。この交代劇が 世代交代のキッカケとなり、ここか ら本田や長友らが台頭し、翌年に は吉田麻也が出てきたのである。 一方、ザッケロ-ニ監督の時は ロンドン五輪世代組が8名ブラジル W杯メンバ-に入ったが、結局活 躍できたのは山口蛍だけ。世代交 代を推し進めることができなかった。 今、リオ五輪組で代表のレギュラ-になっている選手は、まだいな い。久保は右MFのファ-ストチョイ スだが確固たるレギュラ-ではないし、井手口、浅野にしても活躍した のはオ-ストラリア戦からだ。

ちなみに過去、若い選手がポジ ションを力で獲得し、活躍したのはフ ランスW杯時の中田英寿(当時21 歳)、日韓W杯時の稲本潤一(当時 2 2 歳 )、 小 野 伸 二( 当 時 2 2 歳 )、 中田浩二(当時22歳)、最近ではブラジルW杯でプレイした山口蛍 (当時23歳)ぐらいである。世界に 目を向ければブラジルW杯で活躍したネイマ-ルやハメス・ロドリゲスは、 21歳だった。井手口が今まさにそ の年齢だが、彼らほどの存在感はま だない。堂安律(19歳)、小川航基(20歳)ら可能性がある選手たちが いるが、彼らもハリルホジッチ監督 の 視 界 に は 入 っ て き て い な い 。 そうした事情から世代交代が今、 急速に進むとは思えない。井手口 らの登場でそのうねりは起きている が、ハリルホジッチ監督が指揮を 執っている間は、これまで通り長谷 部、川島、長友に加え、本田や岡 崎らおそらく最後のW杯になるだろ うベテランの力を借りて手堅いチ-ム編成をしていくことになる。

だが、ロシアW杯以降はドイツW 杯後と同じように大きく選手が入れ 替わるはずだ。そのためにもロシア W杯のメンバ-に今後主力となる 若い選手がどのくらい食い込める か。今、求められるのはベテランの 奮起以上に若い選手たちの貪欲 な野心の発露である。

theWORLD190号 2017年9月23日配信の記事より転載

文/佐藤 俊

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